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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『シャドウバース/Shadowverse』の感想やレビュー 国産故に実現した対人ツール

 

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オンラインTCGの可能性

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これまで数十本の批評を投稿してきた私だが、実はスマートフォン向けアプリを批評するのはこれが二度目だ。

特段、こうしたゲーム、特にソシャゲ等に対する嫌悪感はない。それでも批評しなかった理由は簡単で、批評する程ハマった作品がなかったからだ。

 

『シャドウバース』(以下『SV』)は、『グランブルーファンタジー』等のソーシャルゲームで一躍知名度を上げたCygamesによるオンラインのカードゲームだ。

プレイヤーは、インゲームマネーとリアルマネーで、1パック8枚入りのパックを購入してカードを集める。7人のテーマを選んで40枚のカードでデッキを構築し、対人戦に明け暮れる。

言うまでもなく、本作の叩き台となったのはBlizzard社『Hearth Stone』(以下『HS』)だ。

私は2015年に「ベストゲーム」と評した『HS』だが、ではこうしたTCGには一体どのような魅力があるのか。リアルで遊ぶTCGと何が違うのか考えてみよう。

 

私がこれらの作品に最も注目したのは、「スマートフォン上で起動する競技ゲーム」として最も磨き上げられた作品だと感じた点である。

つまり、PCや据え置き機で起動するゲームでもなく、スマートフォンで一人コツコツと遊ぶゲームでもない、スマホならではの携帯性で、競技ゲームを遊びたいコアゲーマーの欲求を叶えるゲーム性に感動したのだ。

例えば、スマホでも苦にならない簡易な操作性、シンプルなUI、TCGではない自動処理ランダム効果、ランダムマッチと高速なゲーム展開、カード蒐集の「ガチャ要素」と既存のスマホアプリとの相性等。

こうした条件を以て、TCGという既存の文化を引用しつつも、いつでもどこでも気軽に競技ゲームが遊べる環境を、まともに実現できた『HS』というゲームの功績は大きく、

良くも悪くもその『HS』そっくり引用した『SV』もまた、それに近いポテンシャルがあると言える。

 

『神々の騒乱』により環境は大きく改善

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私自身、こうした考えもあって『シャドウバース』自体には、βテスト当初からプレイしていた。

だが、『ハースストーン』をパクった割に、余りに貧弱と言わざるをえないゲームだった。何といってもカードプールは狭く、新システムは機能せず、バランスに関しても「冥府」と「超越」という駆け引きもへったくれもないカードが幅を効かせていたのだから。

もはや、『HS』のパチもんと呼ぶにも値しない、正真正銘のクソゲーという印象が強かったのだが…

 

あれから1年以上経過した現在、『SV』の人気は伸び、動画や配信、大会といった様々なメディアで、露出も増えつつある。

そうした最中で再びプレイした『SV』は、3つのエキスパンション『ダークネス・エボルブ』『バハムート降臨』『神々の騒乱』を経て、初期の惨状から大きく回復し、ようやく独自の面白さを見出し始めた。

 

まずカードプールを増やすのは当然だが、その中でいかにテーマに多様性をもたせ、また対人ゲームとして駆け引きの幅を広げるかといった課題に、それなりに向き合ったことが伺える。

『神々の騒乱』におけるトップメタ(環境を支配するような強力なテーマ)は、主に「ドラゴン」と「ネクロマンサー」、次いで「エルフ」「ヴァンパイア」が勝率を伸ばしている。(4月現在)*1

テーマ毎のバランスはネクロへの偏りを考慮しても、マシになりつつある。少なくとも、これまでの「エルフ一強」「ウィッチ一強」の環境に比べれば、ネクロ・ドラゴンの「二強」の環境に近づいた。

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悪名高いドロシー。実質5ドロー&5スペルブーストに加え、コイツ自身も軽量化可能。問題なのは、ドロシーの展開前後で明らかに運が絡みやすかったことだ。(特にアグロ構築で運用されたため)

 

もっと言えば、現環境の強力なテーマ「ネクロ」「ドラゴン」に関しても、従来のテーマ以上にメリハリが強い点が特徴で、敵の除去と自分の展開を読む「ネクロ」、PP維持のリスクを考慮する「ドラゴン」と、従来に比べれば一応駆け引きの余地も産まれた。

例えば、二番目の「ダークネスエボルブ期」ではテーマ毎の勝率こそバラけたが、ビショエルフヴァンプの「アグロ系」(序盤から仕掛けて一方的に勝つデッキ)がメインであり、先攻でリードを取られると何もできず轢き殺されるケースが多かった。

また初期の「スタンダード」は一方的にアドを稼いで何ターンも引き伸ばした上での「冥府エルフ」、三番目の「バハムート降臨」ではドロシーの大量展開&アドによって敵を圧殺する「ドロシー」など、駆け引きも何もない、ソリティアと揶揄されるような一方的なゴリ押しに終止した。

現環境では、まずアグロ寄りのネクロ、コントロール寄りのドラゴンという前提がありつつ、アグロ側にもネクロマンスとフォロワーの管理、ドラゴン側にも守護フォロワーと疾走フォロワーの兼ね合いという、相反する対抗手段を持ち合わせながら、

かつそれ以外のテーマに関しても、既存の強烈なカードと新規カードが組み合わさり、やはり構築やプレイングに幅をもたせ、それなりに習熟する余地が産まれたと言える。*2

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打たれ弱いネクロに全体除去耐性を与えた「貴公子」、中継ぎの少ないドラゴンにコントロール手段を与えた「ウロボロス」。

特に前者は強すぎるとも思えるが、これまで微妙だったテーマを押し上げ、かつ彼らの個性を活かす発想はグッド。

 

本来TCGにおいて、どんなテーマ・カードが強いというメタが生まれるのは当然である。

『SV』はそうした前提がありながらも、同じテーマの強みを活かしつつ、敵のテーマに対抗するメタカードや*3、好みで追加できる個性的なカードが加わったことで、ようやくTCGらしいゲームプレイが実現した。

初期でうんざりしたというプレイヤーも、今あらためてプレイする価値はあると断言できる。

 

日本における巨大コミュニティによって完成した『シャドウバース』

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とは言え、気になるのが師とも言うべき『ハースストーン』の存在である。

具体的に比較すると、以下のように感じる。

・ライフは『SV』の方が少なく、テンポは早いが運も絡みやすい。

・『SV』側はレジェンドが無制限に入るため、インフレが激しい。これ以上必須カードが増えると初心者に厳しく、課金ゲーの色が強くなる。

・課金要素の強い分、『SV』は演出面が強い。世界観の好みは別れるが、『SV』側のイラストは描き込みも細かく、声優を起用した演出は素直に評価でき、単調になりがちなTCGを支える。

・『SV』は進化という独自システムがあり、この点は明確に『HS』より優れたシステム。

・『HS』は新エキスパンションでもある程度は確定でカードが入手でき、財布に優しい。

 

以上を考慮すると、純粋なゲーム部分は「強いて言うなら『HS』」というのが本音だ。

それでも尚、私があえて『SV』を遊び続けるのは、『HS』にない必殺の武器「日本における手厚いサービスとコミュニティ」に魅了されたからだ。

 

世界的に人気を博した『ハースストーン』に対し、日本が主要ターゲットの『シャドウバース』は、日本に特化したサービスや、日本人主導のコミュニティが明らかに優れている。

公式大会については、「JCG」「RAGE」「ファミ通」と相応の規模で複数開かれ、競技ゲームならではの観戦には苦労せず、著名な日本人プレイヤーも多数活躍している。

そして、日本人による配信、動画、攻略サイト、大会に関しても、圧倒的に『SV』が多い。伊達に地上波でCMを流したわけではないのだろう。

こうしたコミュニティを通した交流、そしてメタの研究、著名なプレイヤーの観戦は、『HS』では実現し切れなかった大きな魅力であり、国内で既に大きなコネを持つCygamesと、国産ゲームへの信頼が実現した切り札なのである。

この差は極めて大きい。国外に比べて日本では対戦ゲームが昔ほど流行らないと言われる中、これほど多くのプレイヤーが日夜メタを研究し、情報を交換し、対戦動画を鑑賞し、オフライン大会で切磋琢磨できる環境は極めて稀だと言えるだろう。

 

 

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シャドウバース公式大会の様子。シャドウバース公式サイトより。*4

 

これこそ、今私が『SV』を遊ぶ最大の理由だ。個人的な話だが、私がこのゲームに復帰した理由は、本作の大会に出場した、ある男性の試合を観戦したことがキッカケだった。

彼はかつて名の馳せたゲーム実況者だったが、ここのところ活動は少なく、その試合自体も期待されていなかった。だが、彼は当時強烈なパワーを持つ「ドロシー」に対し、「陽光ビショップ」という過去の遺物と、彼自身のメタ目線とプレイング、そして運によって勝利したのだ。

これが大変胸の熱くなる展開だったというのは余談だが、ともかく、競技ゲームにおいてコミュニティの充実は極めて重大であり、あくまで「ゲーム」と「プレイヤー」の双方向的な交流があって、始めて面白さが増すのだと実感した。

そういう点で、今流行する『シャドウバース』をプレイすることは、ここからどう転ぶか不安があるものの、決してミーハー的な批判を受ける謂れはなく、むしろ競技ゲームとして十分評価に値すると私は考える。

 

後本当に余談だけど、『HS』より『SV』の方が民度が低い(エモ煽りとか遅延とか切断とか)という声があるけど、それは否定したい。

そりゃどっちも民度が良いとは言えないが、アジア全域でマッチングしちゃう『HS』の方が、まぁ特亜系の人が多いのが関係するのかどうか知らんが、煽って当然みたいなプレイヤーは体感では多いし、そりゃ日本人の方がそういう人は「少ない」(それでも多いが)。

 

*1:シャドウバースログの勝率統計を参照

*2:ただし「ライブラ」、テメーはダメだ

*3:対ネクロのライブラ、対ドラゴンの破魂やスーサイドカードのように

*4:

カードショップでもShadowverse!!「シャドウバース大会 in ホビーステーション池袋本店」レポート | Columun | Shadowverse【シャドウバース | シャドバ】公式サイト | Cygames