ゲーマー日日新聞

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新たなBFやCODはどこへ向かうのか。FPS史への招待 part1

 

 

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総論:

Quakeに見られるFPSにおける競技性のエッセンスは高度な「射撃」と「移動」である。

しかし、技術のみのガチンコ勝負により、プレイヤー間のスコアに大きな格差を生じたので、CounterStrikeではプレイヤーの動きや技術が大きく規制された。

代わりに、プレイヤーの制限された動きを、チームプレイで補うよう誘導することで、CSは「移動」と「射撃」の面白さを引き継ぎつつ、新たなゲームプレイを見出した。

 

現代において、ハードはPS3からPS4へ移り、PCにおいても日々グラフィック等の技術が磨かれているのに、 特にFPSにおいてはゲーム性の変革がほとんどない。つまるところ、誰もが飽き始めているのだ。

一体何処で、FPS開発は袋小路にはまったのか、これから何を見い出せば良いのか。

それにはまず、バラバラにアイディアを出すのではなく、FPSの骨格を一から分析し、研究することで、 効率よく新たなFPSのヴィジョン、といったものが見えてくると思う。

ここはE・H・カーの言葉「歴史は現在と過去との対話である」という教訓から、 まず過去と現在を繋ぐ「Multiplayer-FPS史」を、今回ではQuakeCounterStrikeの両作からみていきたい。

 

FPSの基本は「動く、撃つ」 ーQuakeからCSが引き継いだ要素と、削いだ要素

FPSFirst Person Shooterという名にある通り、FPSとは射撃によって敵チームの行動を阻害し、味方チームの目標を達成することにある。 ところが、根本的にFPSで求められることは、「撃つ」だけでなく「動く」ことにもある。

例えばFPSの起源の一つ、Quakeでは敵を一人倒すだけでも至難の業だ。 ロケランやレールガン等の主力武器は射撃から着弾までのタイムラグがある上、 プレイヤーはストレイフジャンプ等のテクニックで、目にも留まらぬ早さでかつ、空中を走り回る事ができる。

「相手の攻撃を回避する移動」と、「自分のタイムラグある射撃」、 二つの対極的な要素を軸に、いかに相手に弾を着弾させるかが、Quake、ひいてはFPSの軸となっているためである。

もちろんこれは、初心者に優しくない仕様だった。 この二つの複雑な作業をこなすのは、片方の作業さえ困難な初心者には、途方もなく険しい道だった。

そこで、FPSが大衆に浸透するにつれ、ピラミッド形に初心者が増え、それに伴ってQuakeのようなハードコアなFPSは過疎の一途を辿った。

 

 

 

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高度を維持しつつ、敵にカーソルを合わせつつ、ロケットの弾道を読みつつ、アイテムの位置を把握する。僕はこのうち1つもできません(マジギレ)

 

 

しかし歴史上、アメリカで廃れた自然主義文学が、南米に渡り、リョサマルケスらによって再び蘇ったように、 往々にして何かの文化が廃れることは、同時に誰かが受け継いでいるものである。

 

ここでは我々が普段遊ぶFPSの起源、CounterStrikeを例にあげて紹介したい。

 

CounterStrikeQuakeやUTといったスポーツ系FPSが全盛だった2000年に生まれた、チーム対戦型のFPSである。

まず、QuakeからCSへの大きな変更点は、プレイヤーの動きや技術への制限である。

まずはプレイヤーの「移動技術」に対する制限について。

まず第一に、CSでは空を飛べない。ロケットランチャーが廃止されたためだ。 第二に、CSでは高速移動ができない。ストレイフジャンプが廃止されたためだ。 更にマップそのものも、大幅に縮小され、細長い通路が連続する狭めのMAPが主流となった。

このCSがもたらした規制は「移動」のみならず「射撃」にも及ぶ。

今まで対戦の要だったロケットランチャー、レールガンのような、タイムラグが生じる代わりに強力な武器は軒並み廃止され、 Quakeでいうマシンガンのような、ほぼタイムラグなく当てられる、扱いやすい武器のみが残った。

こう考えると、Quake時代に比べて、CounterStrikeはずいぶんと平凡なゲームに置き換わってしまった様に思える。

確かに、途方もない技術を必要としないCSは、多くのミドルゲーマーや初心者でも楽しめるだろう。

しかし、もはやCSには、度重なる制限によって、立方体を駆け巡る「移動」のスリル、間隙を縫ってロケランを当てる「射撃」の爽快感、どれもが失われてしまった。

事実、CounterStrikeが遊ばれ始めて間もない頃、多くのQuakeプレイヤー達が彼らをNoobと蔑んだという。

 

初心者のための「制限」を、どう昇華させるか?

だがCSは、ただ切り落としただけに終わらせなかった。

そう、CounterStrikeは削り落とした数々のQuakeの要素を、新たな形で適合させたのだ。

例えば「移動」の技術は、1つのポイントに複数の通路の出口を結ぶことで、「どの通路から敵が現れるかわからない」ことによって敵を錯乱させたり、 障害物や高低差で一方的に狙える「有利なポジション」を2~3個ほどMAPに作り、敵味方に奪わせたりすることで、 高度なジャンプテクなど、純粋な技術による「移動」から、頭脳と戦略による、立ち回りによる「移動」へと昇華させた。

また「射撃」の技術は、銃に反動の概念を導入することで、積極的に敵プレイヤーを攻撃するのにリスクと技術を要求し、 ヘッドショットの概念を導入することで、平凡な射撃とは別に、リスクある精密射撃への報酬を与えた。 更に「射撃」「移動」を合わせた技術に、「ストッピング」が導入されたのだが、昨今のFPSではほぼ見ない要素なので割愛する。

そして何より、これらの「制限」複数のプレイヤーによるチーム同士が対戦することで、加速度的に複雑さが増すルールだ。 なぜならプレイヤーに与えられた、複数の出口や銃の反動といった概念は、チーム内でガバーすることで補填できるためである。

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敵の侵入口は少なくとも3箇所。このスクショの場合、チェスや将棋でいう詰みにハマったのだ!

更にこれらの「プレイヤーへの制限」をゲーム性を統合するように、「爆破ルール」という新たなゲームモードを開発した。

未だに「サーチアンドデストロイ」や「爆破」等の名で遊ばれ続けるこのルールは、当時チーム対戦で最も主流だったCaputure The Flagとは全く異なる遊びを加えた。 爆破ルールとは、テロリストが攻撃、カウンターテロリストが防衛に分かれ、2つの防衛ポジションのうち、1つのポジションを爆破すれば攻撃側の勝利。というもの。

互いのチームが全く異なる目標を有し、各チームに非対称性を加え、同じマップでも二つの異なる戦略を編み出せるようにしただけでなく、 攻撃側なら爆弾を運ぶものと、彼を護るものの役割分担。防御側なら長い通路を護る者と、短い通路を複数護る者の役割分担があり、 決して一人の力だけでは勝利できない、勝敗をチームに依存したルールとして、爆破ルールは革新的だった。(CTFは実力次第でワンマンプレーも可能、というのが魅力だ)

そしてこの「チームへの依存」には、QuakeからCSへの過渡の中で、大幅に制限したキャラクターの能力と、実に相性が良かった。

単純にキャラクターの能力を制限すれば、多くの古株FPSプレイヤーはフラストレーションが貯まるだろうし、プレイヤーの伸ばす技術の幅も狭まってしまう。

しかし、代わりに「チームへの依存」ありきのルール、マップ、武器を一から用意したり、 高度なアクションの技術の代わりに、味方同士の信頼や頭脳による戦略を要求とすることで、 CounterStrikeは敷居の低さや、新鮮なゲームプレイを提供しながらも、同時に高度なゲーム性を維持し続けた。

 

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だだっ広くて、障害物なくて、とにかく自由自在。上のCSのスクショと比較すると…

 

 

CounterStrikeから後輩たちは何を受け継いだのか

 

 

Quakeから引き継いだシューターの面白さを、CounterStrikeなりに解釈した制限と昇華によって、CounterStrikeは名実ともに最も遊ばれるFPSとしての立場を強固なものにした。

そして驚くことに、CounterStrikeによる改革は、現代に至るまでほとんど変えられたことはない。

誰もが銃の反動に四苦八苦し、一本道の通路に陣取るスナイパーに苦しめられる。 この駆け引きは、FPSの主な市場がPCからコンシューマ機に移り、BattlefieldシリーズやCall of Dutyシリーズが主戦場となった今でも、未だ変わらず続いている。

 

 

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このマップ、QuakeとCSどっちに似てる?

 

そこで、現代において袋小路に陥ったFPSの開発と、その圧力から辛うじて新たなプレイを見出したCounterStrikeの後輩たちを紹介し、 現代のFPSに求められるものを、FPS史を振り返ることで見出す意義を論じていく。

 

Kenny mix