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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

The crew β PC版 感想 広大なマップと偏狭なゲーム性

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The Crew - E3 2013 - Announcement Trailer [UK ..

  • キーワード:ポストモダン/ドライブシム/オープンワールド型マップ/アメリカ/UBIsoft/TDU/アトモスフィア/PC/PS4
  • 発売日:2014/11/24(NA)

 

 

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『The Crew』のコンセプト

『The Crew』はUbi softから発売される、オープンワールドタイプのレースゲームだ。

類似した作品として、『Test Drive Unlimited』、『Euro Simulator Track』などが挙げられる。

本作品のコンセプトを端的に表すなら、「ドライブにフォーカスしたGTA」と表現するのが最もシンプルだろう。

基本的にプレイヤーは、アメリカ全土をデフォルメした箱庭を駆け巡り、その地のレースやミッションを楽しむ。

それで得た報酬から新たな車やパーツを購入し、そのハイスペックなマシンで、また新たなレースに赴く…といった流れを繰り返す。

また本作の特徴として、オンラインとつなげば、シームレスに他のプレイヤーと作品内で出会う。彼らと協力するも、対戦するも、スルーするもプレイヤーの自由だ。

勿論、彼らとフレンドになれば、自由なタイミングで合流してツーリングが出来る。



『The Crew』の特徴として、上記の作風の上に、「MMO」要素がプッシュされたのが印象的だ。

レースをクリアする度にマシンが徐々に強化されるし、

マシンと別にプレイヤーもレベルアップすることで、新たなレースに参加出来るようになっている。

広大なマップに合わせて、ゲームそのものの寿命も長くしようと試みたのだろう。

しかし、後述するが、実はこの「MMO」要素が個人的に『The Crew』をつまらなくしていると感じた。

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TDUへの反省

『The Crew』は新規で開発したタイトルながらも、コンセプトはそのまんま、『Test Drive Unlimited』である。開発者にTDUのEden Gamesのスタッフがいることからも、それは伺える。

もはや『TDU3』と名前を変えて販売していいほどで、新規IPの割に新鮮味は期待できない。

代わりに「TDU」の弱点を克服し、上質な「模範」に徹してるのは好印象だ。


例えば、『TDU』の細かな欠点として、マシンの雑な挙動や、面倒なだけのライセンス、退屈な道中などがあったが、

これらは、NFSライクな挙動、ライセンスの撤廃、大量のサブクエストによって改善されている。

特に、挙動の改善はかなり嬉しい。

そもそも、オープンワールドのレースゲームなのだから、他のレースゲーム以上に車に乗り続けるわけで、車の挙動は最低限確保されているべきだ。

本作品の挙動が優れているとも言わないが、あまりに複雑にしたところで、逆に長い道中の移動が困難になるので、多少カジュアルなぐらいで丁度いいと思う。

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最大の魅力はマップ

本作最大の魅力は、やはりマップだ。

これまでの「オープンワールド+レース」ジャンルの欠点として、マップが広大な割には、どこも似たような景色で飽きやすいという欠点があった。



一方『The Crew』は、あえてリアルさを放棄した、観光地が目白押しの「ファンタジー」なマップを用意する方向へ舵を切った。

アメリカから思い浮かべるような、力強いグランドキャニオンや静かな太平洋、華やかマンハッタンを、わずか数時間で一周出来るのは新鮮で、

その合間には、雪景色や広大な砂漠が広がり、実に「走破しがいのある」道が続く。

観光を楽しみながら、穏やかなドライブを楽しむといった具合で、ランドマーク間の距離感も絶妙だ。



総じて、アメリカの持つ、自然ないし文化的な観光地を、これでもかと詰め込み、それでいてゲームとして違和感の少ない設計で素晴らしかった。

いずれにせよ、実に緻密で、それでいながら大胆なマップであり、このマップを楽しむだけでも値段分の価値はあるだろう。

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「ドライブシム」と「MMO」の拒否反応

ただし、本作は『TDU』の抱える、「オープンワールドのジレンマ」を解消することは出来なかった。

要するに、『TDU』の面白さは「オープンワールドの広大なマップを自由に走ること」なのに、肝心のゲーム部分ではあまりオープンワールドが活用されないという、ジレンマである。

もしレースゲームとして遊ぶなら、オープンワールドを細かく区切っただけのマップで、出来の悪いレースを遊ぶハメになり、

もしドライブゲームとして遊ぶなら、どれだけ走ってもストーリーが進まなければマシンも購入出来ない。という具合である。

これが『GTA』なら、エリア毎にキャラクターやミニゲームを設けて、オープンワールドとゲーム性を結びつけているのだが、

(例えば、ストーリーが進展すると、スラム街から富裕層の地区に隠れ家を移し、ライバルや仲間も富裕層が相手になる…と、世界観とマップを結びつけている)



『The Crew』はその点において驚くほど保守的だった。

ミッションを進めるにはレースを遊ぶしかないが、マップはどこも妙に入り組んだ市街地か、単調な一本道の山道で、2~3ミッションも遊べば飽きるような単調さ。

その上、CPUの出来も酷く、最初はチート性能でプレイヤーをぶっ飛ばしながら、2周目からは舐めプかと思う程減速する、実に白けるバランスだ。

つまり、『The Crew』はオープンワールド部分は頑張っても、レース部分は何ら努力していなかったのである。



それどころか、本作の目玉「MMO」要素が、単調さに拍車をかけている。

というのも、ミッションを受けるにはレベルを上げる必要があるのだが、エリア毎にそのレベルが決まっていて、同じエリアのミッションを連続で受けなければならないからだ。

どういう事かというと、最初のデトロイト地区に点在するミッションを受注できるレベルは10付近、ニューヨークはレベル50付近、グランドキャニオンはレベル100付近といったように、

ミッションを受けるためのレベルは、ミッション毎でなく、エリア毎に決まっているのである。(一部例外はあるが)

少なくとも序盤は、東海岸のごく限られたエリアで、元々出来の悪いレースを、似たようなエリアで何度も遊ばなければならない。

この「MMO」要素が、根本的に「オープンワールドの自由さ」を殺し、「次はこのエリアで遊んでくださいね」とばかりに命令してくるのには、呆れる他ない。

開発側も「レース部分」のクオリティの低さを自覚するなら、せめてレース部分を「遊ばずに済む」ように削り、代わりにオープンワールド部分を拡張すべきではないか。



やはり、「オープンワールドのジレンマ」への一つの解決策としては、『Euro Track Simulator』を挙げたい。

あの作品の中核にある「運送」というゲーム性は、「広大な世界を思う存分走りたい」という、オープンワールドの舞台に絶妙に則したもので、

自由に世界を走りながらも、ゲーム性も楽しむ事ができるという、実に合理的なゲームデザインだった。

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