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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

『Middle Earth Shadow of Mordor』感想レビュー オープンワールドの「ゲーム性」

ゲームレビュー

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以前日本語化も記載した『Shadow of Mordor』をプレイ。

これはすごい。こんな理想的なオープンワールドゲームは久しぶりだ。

GTA』や『Skyrim』で退屈したゲーマーにこそ遊んで欲しい、「ゲーム性」と「オープンワールド」を見事に融合した、実に「遊びごたえ」のある名作である。

 

 


ゲームの内側「骨格」、ゲームの外側「肉体」

 

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本作が何より魅力なのは、「オープンワールド」というジャンルにおいて、「ゲーム性」を拡張した点に尽きる。

 

というのも、今まで「オープンワールド」というジャンルは、雰囲気や世界観において著しい発展を遂げたものの、純粋なゲームとしての面白さは停滞したままだったからだ。


さて、ここでゲームの魅力を、ゲームを支える「骨格」と、ゲームを包み込む「肉体」に例えて考えてみよう。

 



まず、「骨格」とは、ゲームとしてのタクティクス、論理性を追求するアスペクトを指す。

例えば、1993年に発売した『DOOM』が評価されたのは、プレイヤーの論理と戦略と操作を活かせる、高度かつ多様なゲームプレイを可能にする奥深さ、ひいては「ゲーム性」に他ならない。

この場合、肝心となるのは、慎重なレベルデザイン、豊富なアイテムは当然として、何よりも「システム」が重要となる。

先ほどの『DOOM』においても、「ショットガンの弾が豊富&強力」→「ショットガンを活用するには短い距離で戦わねばならない」→「様々なルート、予備の武器、攻撃の回避で距離を詰める」

という一連の誘導を「システム」として自然にゲーム内に組み込むことで、初めて名作FPSとしての評価を得たのである。



そして「肉体」とは、ゲームを取り囲む様々なメッセージ性、デザインを追求するアスペクトを指す。

例えば、2012年に発売した『風ノ旅ビト』が評価されたのは、プレイヤーの能動的な感情移入を積極的に誘導しつつ、本作の技術とアイディアを活かした、独自の魅力的な体験を導き出していたからだ。

この場合、肝心となるのは、独特のビジュアル、最新鋭のテクノロジーは当然として、何よりも底知れぬ完璧な「世界観」が重要だ。

先ほどの『風ノ旅ビト』においても、「最新のグラフィック、独自のビジュアル、好奇心を誘う設定」→「更に、プレイヤーを誘導して感情移入を助長」→「未曾有の体験」

という一連の誘導を「世界観」として「ゲーム性」を包み込むように組み込むことで充実したナラティブを形成し、初めて傑作インディーズゲームとしての評価を得たのである。

また、この「肉体」を追求した作品の例として、拙評『Destiny 感想・レビュー』を参考に読んで頂けると嬉しい。


 

 


「肉体」は充実したが「骨格」は衰えていった「オープンワールド」系

 

 

 

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さて、先ほどゲームを、「システム」的側面を「骨格」に、「世界観」的側面を「肉体」と例え、二元的に説明した。

そこで『Shadow of Mordor』のジャンルである「オープンワールド」を、この二元論で照らしてみよう。

まず「オープンワールド」として有名な作品は、『Grand Theft Auto』シリーズ、『The Elder Scroll』シリーズ、そして『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズが挙げられる。

もはや、現代ゲームのトレンドとも言える「オープンワールド」だが、先ほどの「骨格」「肉体」の二つのアスペクトから、一つの傾向を見出す事ができる。



まず、「オープンワールド」が注目されるに連れ、「肉体」は充実したが「骨格」が衰えた点は否めない。

『GTA5』を例に挙げると、最新鋭のゲームエンジンで作りこまれたマップに、3人の主人公を登用するザッピング式のストーリーなど、

ゲームの「肉体」を司る世界観は、驚くべき進化を遂げたのは間違いない。

すべての要素が組み合わさることで成立する、一切の疑いなき合理的世界としての箱庭は、『GTA3』のそれとは比較にならないクオリティだ。

しかし、ゲームの「骨格」となると話は別である。

『GTA5』の銃撃やレース、弾薬調整といった戦術的な駆け引きは、『GTA3』のそれと何も変わらない。

アバウトなレベルデザイン、似たような武器、常に一本道の攻略手段。とにかく平凡で、「肉体」を楽しむデモ的なものでしかない。

先ほどの『TESV』といい、多少の努力や工夫は垣間見るものの、新作が出るに連れて、優れた「肉体」と平凡な「骨格」で乖離が生じてる点を否定できないのである。


 

 

 


「肉体」にメスを入れた『Shadow of Mordor』

 

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さて、多くの「オープンワールド」は、作りこまれた世界観から「肉体」としての側面は素晴らしいのだが、ゲーム性としての「骨格」は平凡なものが多いというのは、先述した通り。

そこで、『Shadow of Mordor』の何がすごいのかというと、この今まで不足していた「骨格」として優れたゲーム性を備えているからである。

それも、単にシューターやRPGとしての「骨格」でなく、オープンワールド独自のゲーム性」を追求した点が素晴らしい。



まず、「ネメシスシステム」等の、「オープンワールド」とリンクした「ゲーム性」は実にユニークかつ魅力的だ。

「ネメシスシステム」とは何かというと、自分が何らかのファクションに組織することで、敵がプレイヤーの行動により様々な反応を見せるシステムだ。

例えば、プレイヤーが特定の敵に倒されれば、そのキャラクターが敵ファクションの士官に昇格したりするのである。

これぞ『S.T.A.L.K.E.R.』が夢にまで見た「A-Life」システムそのもの。2007年には到底不可能とされたギミックも、2014年になってようやく具体化されつつあるのだ。

 

 

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つまり、このシステムによって世界を敵に回すような選択を取っても、プレイヤーの実力次第で克服出来るだろうし、

プレイヤーが剣戟やステルスといったゲームプレイに自身がないなら、極力穏便な選択を選べばいい。

更に、プレイヤーのプレイスタイル、つまりステルスやアサルトを好むプレイヤーに合わせて、「ステルス殺し」「アサルト殺し」のキャタクターも存在する。

この「ネメシスシステム」によって、プレイヤーの戦略や技術によって、それぞれの冒険が展開することで、「骨格」と「オープンワールド」を上手くリンクしている。

一方で、『Skyrim』は豊富な要素からなるロールプレイが魅力だが、どの選択肢を取ってもプレイヤーの戦闘は大抵同じだったし、それによって生じる冒険も同じだった。(強いていうならステルス+弓だけ面白かった)



このように、「オープンワールド」の持つ膨大なリソース、つまり、広大なマップ、大量のNPC、といった要素を、

「エリア毎の強敵」「NPC毎のアイテム」というよう変換することで、「ゲーム性」とリンクさせている点が素晴らしい。

例えば、『Skyrim』ではエリアもMPCも、大抵は字面で語る「文学的」な面白さであって、「ゲーム性」として見た場合はボタン連打で倒すだけで同じだった。

しかし、本作では全て「ゲーム性」、つまりプレイヤーの戦略、技術、RPG的ステータス、アイテムリソースに直結することで、

我々は剣戟、ステルス、資源管理、ステータスといった「ゲーム性」、プレイヤーの頭脳が放つ肉と肉のぶつかり合いを通じて、NPC達と会話することが可能になったのだ。

 

 

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勿論、それを叶えるように、剣戟・ステルスは一定のクオリティを保っている。

あの「最も戦略的なAI」とのタクティカルな撃ち合いが評価された、『F.E.A.R.』シリーズを作った『Monolith Productions』が本作を開発したことを鑑みれば、

本作の「ゲーム性」が保証されるのは、もはや当然のことと言えよう。



総評




オープンワールド」をゲームを包み込む「肉体」だけでなく、ゲーム性の中核を担う「骨格」にまで落とし込んだ素晴らしい作品。

技術力やマップの広さだけをウリにする「オープンワールド」に飽きてきたゲーマーなら、これを遊ばない手はない。

勿論、個々も奥深いゲーム性や、『指輪物語』を浸透させたストーリー、次世代機に相応しいグラフィックなど、基本的な部分も抜かりはない。

ただし、序盤は出し惜しみするように退屈な点や、見慣れたといっていい世界観、暇つぶしでしかないサイドクエストなど、『Monolith』らしい仕上がりの悪さではあるが、

とにかく定価で遊んで損しないことは確かな、全盛期の『Monolith』を思わせる印象的な作品。

日本語化もあるので、是非プレイして欲しい。