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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

UplayとOriginの『正義論』 -Originは本当に悪か?

 

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なかなか興味深い記事を発見した。

そこでは、UBIの全体像を説明し、更に、UBIのゲームを正の面、UBIのUplayを負の面に分けた上で、

「UBIの作る新作は確かに魅力的だ。しかし、それはUBIのブランドを強め、ゲームの多様性を奪うとともに、悪名高いDRM”Uplay”を助長することとなるだろう」

といった具合に締めくくられていた。

 

目次:

  1. ”Steam”の罪
  2. ”Steam”に騙されるユーザーたち
  3. ”Steam”の独占
  4. ”Origin”や”Uplay”のタイトル独占は悪徳か?
  5. 総論

 

 





なるほど、これは盲点だった。

確かに、「UBIが魅力的なゲームを作るほど、Uplayという負の側面もまた肥大化してしまう。」というのは、鋭い読みだ。

そもそも、かの悪名高い”Origin”とて、『Battlefield』『MassEffect』『Simcity』という、PCゲーム界のビッグタイトルを”Steam”から奪い取って独立したのだから、

”Uplay”もまた、『Assasin's creed』ほど強いタイトルを多数作れば、"Steam"から名作を引き抜いて独立するのは容易に想像がつく。

それは勘弁願いたい。純粋にユーザー側の視点で立った場合、”Uplay”や”Origin”など、重いし、使いづらいし、とにかく迷惑千万な存在だから勘弁して欲しい。



”Steam”の拭いがたい罪

 

 

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…と思っていたのだが、冷静に考えると"Origin"や"Uplay"を、ここまで悪として糾弾するのは、何だか奇妙だ。

確かに、短期的に見れば”Origin”や”Uplay”に良い印象はない。

機能的にも規模的にも、”Steam”に勝っているところがないからだ。

しかし、長期的に見れば、むしろ”Steam”そのものが悪になりうることを、考えるべきではないだろうか。



さて、今では『steam』というと、「ダウンロード販売によって、ゲームソフトを安価に安全に手に入れる事のできる、優良なサービス」というイメージがすっかり定着している。

それについて否定するつもりはない。実際、私も”steam”には相当貢いできたし、それは単なるソフト代に留まらず、”steam”に対する信頼と感謝でもある。

だが最初から評価されていたのかというと、そんなことはない。初期の”steam”といえば、それはもうファンからの非難轟々で、多くのゲーマーから憎まれたものだ。



そもそも、”Steam”は導入方法が酷かった。今でこそ、”Origin”や”Uplay”が「ゲーム起動に必要なDRM」という形で浸潤させたことは非難されているが、

”Steam”においても全く同じように、『Half Life 2』や『Counter Strike: Source』を発売する際に、起動に必要なDRMとしてプレイヤーに強制したのである。

にも関わらず、”Origin””Uplay”が金の権化のように非難され、”Steam”はまるでゲーマーの友であるかのように、非難されずにいるのか。

私には彼らの「ユーザーを軽視する浅薄な道徳心」という点では、ValveもEAも同じく腐った企業にしか思えない。

強いていうなら、『Steam』はたまたま先に進出して、今となってはDRMなど必要ない程に拡大した。というだけ。



”Steam”に騙されるユーザーたち

 

 

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さて、現代では確かに、”Origin”や”Uplay”に比べて、”Steam”のサービスの方が魅力的なのは事実かもしれない。

しかし、その根底にあるユーザー軽視の精神は変わらず、”Steam”が他企業を圧倒する資本を持つ、その格差が「優良なSteam」という虚像を生んでいるだけ、というのは先述した通り。

故に、私は最近のゲームコミュニティにおいて、「”Steam”の傍若無人な態度を語らず、”Origin””Uplay”ばかり糾弾するゲーマーの姿勢」は何だか奇妙に感じた。

Twitterでも、Steamにセールが来れば盛り上がるし、Steamに新作が発表されれば、当然のようにその新作について談義しているのだ。



一方で、UBIやEAで新作が発表され、それがDRM必須と聞くが早いか、激怒する人は多い。

これは矛盾だ。そもそも、”Uplay”や”Origin”以前に、”Steam”というDRMを強制されていることに対して、ゲーマーは憤らないからだ。

こう言うと、「OriginよりもSteamの方が使いやすい」という人もいるかもしれない。

しかし、Steamだって起動するだけでメモリを食う大変重いソフトだし、そもそもDRMという形でユーザー行動を妨害すること自体が問題なのではないのか。



さて、ここまでの矛盾を鑑みた上での、「OriginとSteamの決定的な違い」とは、ゲーマーが抱く”Steam”と”Origin”の対照的な偏見にすぎないと思う。

痩せたサーヴィス、ユーザー軽視の姿勢、セールの頻度、そして何よりDRMという枷… 何をとっても”Steam”と”Origin”の間に大差はない。

ただゲーマーが”Steam”を信仰し、一方で”Origin”を異端視するだけで、両社の認識は現状に反して全く異なるものになっているのだ。



”Steam”の独占

 

 

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私は何も、「DRMは邪悪だから滅ぼせ!」といってるのではない。

むしろ、我々がPCゲームというニッチな趣味を楽しもうと思えば、このようなDRMやダウンロード販売は必須のものだろう。

だから、「PCゲーマーにとってダウンロード販売は必須」「悪質なDRMは許されるべきでない」という二点を鑑みた場合、

出されるべき答えは「Steam、Uplay、Origin、全てを警戒し、同時にダウンロード販売として総合的に未来を考える」だと思う。

少なくとも「Steamのセールには便乗するが、UplayやOriginをボコボコに叩く」ではない。

ゲーマーとの間に「Steamオヤジ」とも言える奇妙な距離感と馴れ合いがありながら、それによってSteamが増長することが恐ろしい。



むしろ、私は「UplayやOriginは素晴らしい」とすら思う。

それは単純で、経済学における競争原理と独占を鑑みた場合、

Steamの競争相手として、UplayやOriginの圧力を受けることで、相対的にSteamはサービスを向上させる必要に駆られるからだ。



本稿で経済のウンチクを垂れ流すのは不毛なので詳細は避けるが、

少なくともPCゲーム業界はかなりニッチな産業であり、こういう狭い市場は割合あっさり寡占状態に置かれる。

この場合、市場を独占するのは”Steam”となるだろうが、競争相手を全て倒した”Steam”はプライスメイカーとなり、自社の利益を最大限産出するような価格設定を行えるようになる。

こうなれば正に地獄だ。”Steam”は自社にとって最も利益が出るよう、あらゆるユーザーを引き止めるための努力を放棄し、企業とサービスは腐敗するだろう。

逆に、現状の競争市場においては、”Steam”は”Origin”や”Uplay”から自社の利益を維持するために、様々な努力を強いられる。

顧客にとって、むしろ現代の方が理想的な状況といえよう。(勿論、他にも様々な原理が存在するので一概に説明できない。ただ、市場の原則はこの通りである)



とにかく、顧客にとっては、企業同士で各々の強みを武器に戦争している状態が望ましく、そもそも経済とは様々な大手企業が利益を奪い合うことが前提なのだ。

いくらPCゲーム産業が狭い産業といっても、決して特定の企業による独占は許すべきでない。

Steamと馴れ合うより、むしろ「Originもいいところがある」「Uplayは魅力的だ」と言って、浮気をする素振りを見せる方が、かえって”Steam”には丁度いいインセンティブになるのである。


「どの個人も、できるだけ自分の資本を国内の労働を支えることに用いるよう務め、その生産物が最大の価値を持つように労働を方向付けるように務めるのだから、必然的に社会の年間の収入をできるだけ大きくしようと務めることになる。」

-『国富論』アダム・スミス

 

 

 


「Origin」や「Uplay」の特定タイトル独占は悪徳なのか?

 

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一方で、「競争相手はたしかに必要かもしれないが、「Origin」や「Uplay」は特定タイトルの独占という手段で、消費者を困らせているではないか。」と言う人もいる。

しかし、それは根本からしておかしい。

まず、「Steam」が全てのタイトルを扱っていた時代そのものが、異常といえよう。

例えば、あなたが「セブン&アイ 味噌ラーメン」が好きだったとして、そのラーメンを大丸デパートやローソンにも置くように、「セブン&アイ」に抗議するだろうか?

勿論あり得ない。なぜなら、「味噌ラーメン」は「セブン&アイグループ」の独占商品、つまり「セブン&アイ」に呼びこむための客寄せパンダとして開発されるからこそ、安価で上質な味を維持できているからだ。

もしこれが、「セブン&アイ」以外の小売でも販売されるようになるなら、商品の質は間違いなく落とされた状態で販売されるだろう。



これはPCゲーム業界においても同じこと。

要は、「EA(Origin)」や「UBI(Uplay)」が多額を投じて開発したタイトルを、何食わぬ顔で「steam」が販売していたこと自体、「Valve(steam)」の暴利ではないだろうか。

そもそも、「Valve」とて開発会社のはず。にも関わらず、「Valve」は自社タイトルの「half-life」や「Left 4 dead」は自分の「Steam」を通した独占販売だったのである。

つまり、「独占販売」でけしかけたのは、一部ゲーマーに親父の如く慕われている「Valve」が最初である。

(更に言えば「DRM」で囲い込んだのも、Valveが最初である)

どうして後手ながらに「独占販売」で対抗を試みる「EA」「UBI」を責めれようか。

少なくとも、現状では「EA」「UBI」がPC部門でゲームを販売しようにも、「steam」を通す限り利益の大部分はライバル企業の「Valve」に奪われるわけで、まるで江戸時代の関所のようだ。

UBIが「PCゲームを優先できない」と答えたのは、ただ割れ厨に警告した以上に、この前時代的な「Valve幕府」に嫌悪したからではないか。

更に言えば、「Origin」や「Uplay」は独自のサーヴィスや破格のセールを積極的に行うように成長している点も、見逃すべきではない。






※念の為に言っておくと、私は「originが素晴らしい」だけでなく、「originの存在は自然なもの」という意図も持っている。

ここまで聞いてもらえればわかるだろうが、そもそも一つの企業が市場を独占すること自体、不自然かつ不健康な状態である。

経済学の常として、需要の拡大と共に新たな参入者が現れ、そこで競争が生まれることで技術やサーヴィスが向上してきたのであり、

現状の「steam親父の独占」は、PCゲーム業界の若さ、或いはニッチさに依存しているもの、「異常気象」に過ぎない。

特定の企業が独占するのが許されるのは、せいぜいソヴィエト・ロシアか、マニア向け市場ぐらいだ。


総論




別に懐古ではないが、多少なり古いゲーマーなら、今の「Steamが当たり前となっているゲーム界隈」に違和感を持っているだろう。

少し話は逸脱するが、2007年ごろに「Orange Box」を巡って、Steam内で一騒動あった。

要約すると、「続編の『Half Life 2 Episode 2』は単体で発売されず、同梱版でのみ、それも既存のHL2、HL2EP1とセットになったOrange Box(お値段$49.99)でのみ限定で発売した」という事件。

なんと、Episode1は単体で購入することさえ出来たにも関わらず、Episode2だけ旧作とのセットでしか入手できず、ユーザーに5000円近くも払わせたのである。(もちろん説明など無かった)

半年後にようやく単品販売されたものの、これはユーザーに対する明らかな裏切りであって、Valveが信頼を回復するのに相当の努力と費用を費やしたのは言うまでもない。



The Orange Box - Wikipedia


(Wikipediaにも「パックで無く単品販売での予約は不可能であった」とある)

 

 

http://ff2400.jp/review/PC/HL2EP2/HL2EP2.html

 「ただし言えることはユーザーは余計な金を払わされたということ、それだけである。
確かにみかん箱はお買い得なパッケージだが、最終的にユーザーを混乱させて無駄金を払わせただけである。」

-『Half-Life 2 Episode 2』FF2400氏より引用

 

 

 

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結局、私が言いたいのは、今ではすっかり馴染んだ”Steam”は、生まれて間もない頃は平気で非道な商売を行った企業であり、それを放置して他社の間もないサービスを責めるのは筋が通らないということと、

同時に、”Steam”が優良企業としての信頼を得たのは、”Origin””Uplay”という屈強なライバル企業との競争おかげということだ。

歴史を見ても、消費者と企業は常に対立する運命にある。同時に、両者の融和こそが文化の発達には欠かせないのも事実だ。

ならば、適度な距離感と、公平な審美眼を維持することが、我々消費者に求められるスキルなのだと思う。