ゲーマー日日新聞

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【評価】『This War of Mine』の感想とかレビュー【リアルすぎ】

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既存の終末的ステルスアクションに対して革新的なメカニズムを備えた佳作





話題のインディーズゲーム、『This War of Mine』(以下『TWoM』と表記)をプレイしたので、軽く触った印象を書き残していこうと思う。

このゲームは、『Anomaly: Warzone』等で知られる11bit studiosが、「戦時中に生きる市民」を描いたゲームだ。

プレイヤーは、同じ生き残りの市民と共に廃屋に立てこもり、夜になれば餓えをしのいだり、暴漢から身を守るために、他の廃屋から様々な物資を調達しなければならない。

宣伝によると「In This War Of Mine you do not play as an elite soldier, rather a group of civilians trying to survive in a besieged city」

つまり、「このゲームでは、あなたはエリート兵士ではなく、ただ生き残るだけの市民としてプレイする」と説明され、他の戦争ゲームとの違いを強調している



他の「ポストアポカリプス」と一線を画するゲーム性

 

 

 

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本作の何よりの魅力は、そのゲーム性にある。そこで、昨今の「ポストアポカリプス」系のゲームと比較して解説しよう。

まず、このゲームのスクリーンショットを見た方の多くが、『I AM Alive』や『Deadlight』、変わり種では『絶体絶命都市』を思い浮かべるだろう。

つまり、限られた装備から、何とか敵の目を掻い潜り、生き残るための弾薬や食料を略奪するゲームである。

では、本作とそれら「ポストアポカリプス系」と何が異なるのかと言うと、「いかに限られたリソースを効率よく管理するかについての戦略性」をより徹底している点だろう。



まず、プレイヤーの最終目的は、本当に「生き残る」だけで、他は何をしても良いという自由度が素晴らしい。

近年に増えたこの類のゲームは、ポストアポカリプスという背景があっても、目的地に向かって前進するという点では、むしろ「スーパーマリオ」に通ずる、古典的なアクションゲームと言える。

例えば、『Deadlight』『I AM alive』では、消息不明となった妻や娘を探すという目的があり、『Dead island』『Half life』にも脱出という目的がある。それ故、攻略法は一本道なのだ。

しかし、本作ではそのような目的に縛られる必要はない。もし食料が確保できるなら、一生拠点に引きこもっていいし、持て余した武力で、市民を次々に制圧してもいい。

その点で、本作はむしろ『Stronghold』に似たゲームとさえ言えるだろう。本作の目的は「拠点の維持」のみであり、そのための手段や選択は、全てプレイヤーに委ねられている。

これにより、他の「ポストアポカリプス系」のゲームと比べて、遥かに自由度が高く、また戦略も様々に生まれるのだ。

更に、この手段の多様性によって、プレイヤーはこの緊迫した世界で必死に生きる市民に、徐々に感情移入できる事だろう。

 

 

 

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また、プレイヤーは一人ではなく、一つの廃屋を拠点に、複数の主人公となる市民が同居することになる。

まず、食料や武器を手に入れるには、他の廃屋に侵入して略奪することになるため、その殴り込み部隊となる「調達係」が一人必要だ。

しかし、その間を狙って、他の盗賊が自分たちの拠点を襲う場合もあり、その敵襲に対応できるように、防衛させる「防衛係」も一人必要となる。

これによって、基本的に「調達係」と「防衛係」がゲームの進行には要求され、更に彼らには休息が必要なので、彼らの「予備兵」も用意しなければならない。

一方で、同居する市民が増えるほど、彼らに必要な食料や薬も増えていくので、プレイヤーは増え続ける人員と消耗するリソースのバランスで、常に四苦八苦することになる。

更に、武器はもっと限られた数しかないので、「防衛係」を武装させた場合、「調達係」まで武器が回らないこともある。

そこまで切り詰めた場合、「調達係」はなんと素手で他人の住処に上がり込み、息を殺しながら他人のタンスを漁るという、まるで『Thief』のような「窃盗ステルス」を強制させられるのだ。

これは面白い。名作『Theif』以来、敵を倒すステルスでなく、敵の物を奪いまくるステルスというのは、中々無かった。

いずれにせよ、誰にどんな目的を与え、兵員の数と必要経費のバランスを考えつつ、自分好みの拠点を築き上げていくのは、純粋なシミュレーションとしてかなり面白い。

それに加えて、同居する仲間が落ち込んでいる仲間を慰めたり、数少ない食料を共有したりするシチュエーションも、最高に感情移入することが出来る。(これは『Terraria』のマルチプレイみたいだ)


 

総論

 

期待していた以上に「War」の本質に迫らないとか、面白いイベントも数本を使いまわすだけなので早々に作業ゲー化するとか、「エリート兵士ではなく市民として」と大見得切った割に消極的なストーリーだとか、雰囲気重視のためかUIは見辛く操作感も劣悪とか、安易なテキストでコンテクストをなぞる手法はさすがに古すぎとか、いくらか残念な点もあったものの、

一本のゲームとしてはかなり面白く、特に世紀末的世界観に「集団生活」を落としこむメカニズムは、かなり斬新だった。

また、状態異常としての「鬱」、敵味方が混同した会話の豊富さなど、既存の「サバイバル」を描くゲームで築かれた要素を取り出し、更に強調した要素も面白く、本作の印象を形成するのに一役買っている。

何にせよ、スクリーンショットでピンと来た方なら、買って損はないだろう。

 

 


This War of Mine - Reveal Trailer - YouTube