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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Neverending Nightmares』の感想とかレビュー

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日本語化されて一躍話題の作品となった『Neverending Nightmares』をプレイ。

一応ひと通りのエンディングは確認したので、感想を書いていく。

(※本稿はネタバレを含んだものとなっております!)

 

追加で考察を書きました!

 

 


ゲーム概要

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本作は2Dアクションをベースにしたホラーゲームで、ゴーリーの作品を、そのままゲームにしたような独特なグラフィックが特徴。

ウリとして、作者が実際に精神疾患に苦しまされた時の経験を、ゲームとして反映させたという点が挙げられている。

アクションは平易で難易度も易しい。総プレイ時間も短く、分岐があるものの途中から再開できるので、全ルートを5時間程度で攻略可能。

 

この作品は、極めて個人的なプロジェクトです。
私自身が精神の病に苦しんでいた感覚をそのままゲームに反映しています。
強迫性障害と鬱に苦しんでいた思いを、誰かに上手く伝えることがなかなかできませんでしたが、このゲームの雰囲気から、私が感じていたものを知ってもらえればと思います。

 

-Plyaismより「クリエイターズボイス」


初見時のインパクトは抜群!しかし…

 

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本作はホラーゲームというだけあって、様々な点がホラーに特化して作られている。

モノクロを基調としたグラフィックはそれだけ恐怖感も煽るし、何度も訪れる即死イベントと、その都度目覚めるループが、「悪夢」の体験を上手く再現させている。

特にサウンドのクオリティは高く、単体ではさして怖くないグラフィックも、このサウンドと合わさることで、アンビバレントな雰囲気を演出し、プレイヤーは焦点の合わない悪夢を体験出来るだろう。

一方、プレイアビリティは高く、触れるべきオブジェクトは全て色が点灯するという親切さ。

これにより、ゲームの難所に詰まって、肝心のホラーが台無しになるということもなく、常に緊張感あるゲームプレイを楽しめるだろう。

その点、最近発売された『The Evil Within』に至っては即死トラップが多すぎて、「とりあえず特攻→死亡→リスタートして回避」を繰り返すゲームデザインから、恐怖感が吹っ飛んでしまうという批判も多かった。

元々、インディーズは手早く楽しめるミニマムさがウリなので、この「ADV部分」をあえて削り、「ホラー」に特化した造りは成功しているといえる。

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しかし、ホラゲは「簡単」でも良いとはいえど、「手抜き」していいとはならない。

まず恐怖を演出する即死トラップは、基本的にレベルの間、つまりゲームクリア時に起きるので、それを理解してしまうとむしろ達成感すら感じてしまう。

残るトラップは、捕まると即死の「天敵」ぐらいだが、これもグラフィックだけ切り替えられるが、基本的な行動は同じで、プレイヤーも逃げるか隠れるか通り過ぎるだけで、あまりに単調。

せっかく人形が動いたり、窓の向こうに獣らしき影が浮かんだりと、それらしい表現は色々出てくるのに、それらは大概がオブジェクトに過ぎず、敵は実質一種類のみ。

結局、本作を遊ぶ上でプレイヤーが工夫する部分はほとんどなく、ゲームとして見ると中々厳しい作品と言える。(これが悪夢なんですと言われてしまえばそれまでだが)



精神疾患」はどうした

 

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個人的に本作で一番気に入らないのは、発売前から散々「作者のMatt Gilgenbachが実際に経験した精神疾患を参考にしたよ」と触込んだ点が、ほとんど達成できてない部分である。

まず、本作の「悪夢」が象徴するのは、女性関係で崩壊した主人公の人生だった。

精神病院、赤子の姿をした敵、妹の死体… これらは、結局主人公の「罪」の象徴であり、自分が犯した罪の数々が、悪夢となって襲いかかるのが、本作の筋書きとなる。

だが、冷静に考えるとこの悪夢は「主人公の個人的な経験」に過ぎないのではないだろうか。

 

つまり、これは「作者が実際に体験した~」と言う宣伝から推測される「精神疾患という普遍的な経験」では全くない。

それどころか、作者は本作の主人公のように、禁断の愛という「罪」を犯したわけでもないはず。(作者はゲームが売れなくて鬱病になったと本人が説明している。)

要するに、本作はの悪夢はまるっきり創作なのだ。

これの何が問題かというと、本作をプレイしても、一から十まで「赤の他人の悪夢」「無関係な鬱病体験」を観てるに過ぎないのだから、我々は全く怖くないのである。

道中の「妹の死体」「己の姿」といったオブジェクトは全て、リア充極める「作中の主人公」だからこそ恐怖するわけで、そこに我々が良心の呵責を感じることも、「いつか鬱病になったら、こんな悪夢を見るかも…」というシンパシーもない。

そもそも、ホラー作品はゾンビモノなり怪奇現象ものなり、読者が主人公に感情移入することで恐怖を味わえるわけで、本作における主人公の人生に依存しきった、独り善がりなホラー要素は、ホラーとしも全く機能していない。

よって、触れ込み通りの「精神疾患」のインタラクティブな体験どころか、もはやホラーとしても失格と言える。

結局、本作は「Matt Gilgenbach」でなくてもホラー作家なら誰でも作れるし、むしろ主人公に感情移入出来ないお陰で、ホラーから遠ざかってしまう。

これなら、まだ『バイオハザード』で、ゾンビに襲われる特殊部隊を操作している方が、よほど「インタラクティブな恐怖」を体感出来ると言える。

(ぶっちゃけ、女の死体や奇形児といったオブジェの代わりに、作者が実際に苦しまされただろう掲示板の悪評や、ゲームが売れずに貧乏な生活を送った経験を元にオブジェを作り、それとなく示唆した方が、よっぽどリアルで怖かったろうに)

 

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一方、「本作のホラーは感情移入出来ない点で失格だが、その分ユニークなストーリーは楽しめる」と言う人もいるかもしれない。

だが、私は本作のストーリーも微妙だと思う。

まず、本作の「悪夢」の拠り所となっている主人公の人生だが、さすがにありきたりすぎる。

要約すると「近親相姦したら人生狂っちゃいました」だけ。

これは古代ギリシャから韓国の『オールド・ボーイ』でも描かれた、あまりに普遍的なテーマでありながら、本作ならではのエピソードや人物の苦衷は一切描かれない。

別にホラーにストーリーは求めないが、最初に期待されそうな「精神疾患インタラクティブ体験」を振り落としてまで描いたストーリーがこれでは、あまりに報われない。

ついでに、本作のホラー描写は何でもかんでも肉体的な「グロ」で解決しすぎている。作中のあちこちで主人公の肉を裂けて血が吹き出す。痛ましいゴア表現も連発されれば嫌でも慣れるし、かえって「狂気」をすり減らしてしまう。

例えば、先述した『Amnesia』では、あえて肉片や血痕を残さないことで、「狂気」をプレイヤーの頭脳で補わせている。恐怖をプレイヤーの脳で育てさせることで、より深みが増すものだ。



総じて、雰囲気やアート部分は作りこまれていて、特にサウンドはBGMから効果音までよく練られている。

だが1~2時間遊ぶと、いろいろな意味で馬脚を現してしまうゲーム。特に、濃厚なストーリーとホラー体験の間で彷徨って難産した本作の体験は、まさに作中の奇形児のような奇妙なものだった。

もはやホラーというジャンルは開拓され尽くされており、そこで新たな「精神疾患の体験」を期待しただけに、次回作を期待したい。