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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【第一回】私の尊敬するゲーマー -KeNNy 最強アサルターの流儀

私の尊敬するゲーマー

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 私の尊敬するゲーマー

 

ゲーマー日日新聞の連載企画、『私の尊敬する「ゲーマー」』では、ゲームという文化を愛した、ゲーマーたちに迫ります。

彼らはゲームに何を見出し、またゲームに貢献したのか。

私が個人的に尊敬する「ゲーマー」たちの視座を通して、ゲームが秘めた魅力とは何か考察します。

 

KeNNy 最強アサルターの流儀

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私はゲーマーだが、すこし新作に手が伸びなかったり、ゲームに対するモチベーションが無いとき、必ずと言っていいほど何らかのFPSをプレイしている。

比喩でもなんでもなく、私にとってFPSは一種の癒しなのだと思う。

マップを駆け、レティクルを敵に合わせ、撃ち合いを制する。この驚くほど根源的なゲームプレイは、何時間と繰り返しても飽きることはない。

そんな私が、過去に最も遊んだFPSは、紛れも無く『Countr Strike』と、そのシンパのタイトルだった。

ただ撃ちあうだけでなく、仲間同士で連携しなければ勝てない。むしろチームの総合的な戦力さえ上回れば、個人技をも覆す。『CS』にはそういうロマンがあった。

そして同時に、その『CS』に眠る無限の可能性と面白さを引き出した、伝説的なゲーマーがいる。それが、今回紹介するKeNNy氏と、4dementioNのプレイヤーたちだ。

 


国内初のプロチーム

 

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かつて日本のFPS界で知らぬものはいない伝説的なクランがあった。

彼らは、国内初のプロチーム『Four Dimension』(通称:4dN)。そして彼らの中核を担ったアサルターこそ、KeNNy氏だ。

「日本でSK(スウェーデンの強豪クラン)をぶっ潰せるチーム作るか」

*1

paranoiac氏の掛け声から、当時の日本にいたプレイヤーの粋を集めて4dNが生まれたのは、今から11年前の2004年のことだった。(最初期は「2nd-age」)

発足当時のメンバーは、マネージャーのkei氏、選手のKeNNy氏、Enza氏、paranoiac氏、SpiNner氏、XrayN氏、更にiceberg氏が加わった7人体制で、

言わずもがな彼らは全員「勝つ」ために集った、あるいはヘッドハントされた、精鋭中の精鋭プレイヤーたちである。

彼らは可能な限り、ワンフロアを貸しきった部屋に集まってLANを介した試合を重ね、誰がどう動くべきか、お互いの欠点はどう補強するか、様々な角度で研究したという。

当然、ほんの一瞬のラグさえ許さないために、「LAN」によるplayは当たり前で、各個人の経済状況を考慮しつつ、共同生活のスケジュールを管理したことだけでも、既に驚くべき手腕と団結力を感じさせる。

そして参加した、世界からの屈指の強豪の集まる最高峰の大会。CPLSummer 2004では既に頭角を現し、

合間に解散や、再結成、そしてスポンサーの獲得などあったものの、ほぼ同じメンバーで出場したCPL Summer 2005。

今まで日本のチームなど見向きもされなかった、アメリカ本土において、彼らはベスト12という結果を残し、世界中からの賞賛を浴びることとなったのだ。*2



アサルターの業

 

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日本中の最強プレイヤーを集めた4dNにおいても、KeNNy氏のプレイスキルは飛び抜けていると、海外のプロプレイヤーも評価する。

それは、彼らのムービーを観ていただければ一目瞭然だろう。

彼はアサルターだ。リアル系FPSの華といえばスナイパー(AWPer)だが、KeNNy氏はCK47を握りしめ、活路を拓くことを選んだ。(勿論、AWPを持たせても一流のプレイヤーである)

一方、アサルターの「魅せる」プレイとは何だろうか。

私が思うに、アサルターのプレイにおける醍醐味は、万能にして連続する「抜き」である。彼らは巧みなコントロールとエイムでプレイヤーを次々に倒し、壁さえも抜いてしまう。そういう、「抜き」に次ぐ「抜き」の連続。

この流れるような作業は、スナイパーには不可能だ。『CS』のフラグムービーでは「やられ役」の相手も、同じ大会に出場するプロ級のプレイヤーであるから、コッキングの隙を一瞬晒せば、すぐ自分のヘッドが飛ぶ。

例えるなら、アサルターの戦いは格闘戦である。

まずジャブで敵の陣形に切り込み、スナイパーにはアッパーを入れて、時には逃げ場のない孤立無援の状態でインファイトに挑む時すらあるのだ。

殴り、掴んで、また殴る。むせかえるような格闘言語が、ここにある。

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特にKeNNy氏の特徴として、超人的な高速タップがある。目にも留まらぬ早さで銃弾を放ち、それでいて精度は完璧。ゴゴゴゴゴという銃声が聞こえた瞬間、眼前の敵のヘッドが飛んだものだ。

「CV47」(AK47)といえば、今やどのFPSでも「扱いにくいが、高威力」という設定であるが、その起源を辿ればこの『CS』であり、またどんな熟練者さえも扱いきれないジャジャ馬だった。

だが、KeNNy氏が会得したAKは、異常なまでに集弾する、正に飼いならされた名馬だった。

いくらタップと言っても、ただ連打するだけでは弾は明後日の方向に飛ぶ。だから、高度なコントロールと絶妙な連打が、勝負を分かつ。

理屈は単純だが、実際はそうではない。少しでも油断すればレティクルはガバガバに開くし、まごつけばこちらのヘッドが飛ぶ。慎重なエイムも求められるが、ヘッドよりボディに撃ち込んだ方がよほど早く倒せる時もある。

だから、多くの初心者はプロのサイトで「撃ち方」を習いにいくが、それでも満足した解答は得られないだろう。プロのプレイヤーにさえ、それぞれ自分の答えがあって、最適解の撃ち方など存在しないのだから。

だからこそ、観戦者はKeNNy氏のプレイングが優れていることを一目に判断できても、何故優れているのかまではほとんど推測できない。

誰もが真似できそうなほどシンプルなのに、いくら練習しても届かない、研ぎ澄まされた者だけの剣舞。ここに、FPSe-Sportsたる所以があるのだ。

 

ゲーマーの記憶に刻まれたゲーマーとして

 

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(※クランNabDでSACTL2010-2011優勝。上段左から Vader氏、KeNNy氏 下段左から 抹茶氏、Aktime氏、Flame氏)


KeNNy氏はその卓越したゲームプレイと戦績で、多くのFPSゲーマーを魅了しただけでなく、その後の活躍もまた「プロ」としての威厳を思わせるものだった。

彼は『Counter Strike』に一区切りつけると、次は当時日本で最もプレイヤーを魅了した『サドンアタック』へと戦いの場を移す。

そこで、これまた現地の熟練者と共に「Rusty Egg」を結成し、SACTL2007の優勝など、再び目覚ましい成績を残すこととなる。

当時のプレイヤーの間は、”あの”KeNNy氏がCSからサドンへ移ると聞いて、一時は騒然となった。もちろん、サドンアタックの有力なプレイヤーたちが、彼ら4dNの活躍を知らないはずはなかった。

CS時代からのファンは彼の復帰に歓喜し、また現地プレイヤーは黒船来航の如く恐れ、とにかく反応は千差万別だったものの、彼が「ゲーマー」として一本のゲームに拘らず柔軟に挑戦する姿勢は、e-Sportsをプレイする者なら憧れないはずはなかった。



そもそも、プレイヤーネームをそのままに、ゲームタイトルを替えることは、相当な勇気がいるはずである。

少なからず、4dNはFPSをする者なら誰もが知る強豪クラン。ましてここはネットであるから、他のゲームであっても彼にのしかかる期待やプレッシャーは、尋常ではなかっただろう。

しかも、同じFPSでも『CS』と『サドン』では大きくゲーム性は異なる。『CS』時代の期待をそのままに、別のゲームで同じ勝率を応えることなど不可能にも思える。

実際、『CS1.6』時代で活躍した海外のプロプレイヤーは、『CS:GO』に移行する事さえ難渋を示したものだ。それは彼らが臆病とか下手だからでなく、根本的にゲーム性が異なる作品にチャレンジする必要性が薄かったためである。

それでも、KeNNy氏は特に何かを仄めかすわけでもなく、あくまで一人のゲーマーとして、この新たなフロンティアに挑戦し、再び強者としての勝利を確立してしまった。

彼が特にこのギャップを意識したわけではないだろう。それでも、これほど果敢に様々な未開地へ挑戦し、それでいて常に謙虚に試合と勝利のみ追求したプレイヤーは、私の知る限り少ない。

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更に、彼は第一線での戦いから身を引いたものの、『サドンアタック』の「公認インストラクター」として、『AVA』の「公認アドバイザー」として、また新たな一面を見せてくれた。

時には、ニコニコ生放送で自分のゲームプレイを配信したり、ブログでは自分の戦術やデバイスについての情報を積極的に公開し、ゲーマーを楽しませる一方で、後続の育成や教育にも率先して取り組んでいる。

彼が特にゲームへの献身を訴えたことや、また独自の武勇伝を率先して語ったことはない。

だが、彼は「Gameplay」によって、驚くほど多くの日本のFPSプレイヤーを、いや世界のゲーマーを熱狂させ、ゲームの面白さと可能性を伝え続けていたと言っていい。

私自身、彼のdemoを観てそのゲームプレイに感動し、DM鯖に篭ってAKのタップを練習したことを、今でも覚えている。

このブログで少なからず至高の「ゲーム」を取り上げてきたが、私にとっての至高の「ゲーマー」はKeNNy氏だったのだ。

 

また、この記事を執筆するに至って、快く私の申し出を受け入れて許可をくださった、KeNNy氏に厚く感謝致します。本当にありがとうございました。

 

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KeNNy氏が活躍するムービーは無数に存在するが、個人的に思い入れのある作品は、同じチームのXrayN氏によって制作されたこちら。


I AM2 -beyond the dimension- - YouTube

 

参考文献

XrayN「4dNの軌跡と裏話 -4dN結成編-」http://samuraisdead.blog2.fc2.com/blog-entry-128.html

XrayN「I AM2 -beyond the dimension- 」https://www.youtube.com/watch?v=0xtCswGnlzA

Negitaku.org「4dN.psyminインタビュー」http://www.negitaku.org/news/4467/

Negitaku.org「CPL Summer2005 CS優勝はSK.swe」http://www.negitaku.org/news/4957/

KeNNy「当blogについて」http://kennymc.blog103.fc2.com/blog-entry-53.html

KeNNy「KeNNyちゃんねる」http://com.nicovideo.jp/community/co1238096

 

KeNNy氏の大会経歴

『サドンアタック』
SACTL2007 優勝
SAOTL Season3 準優勝
SAOMT Season1 準優勝
SAOMT Season3 優勝
SAOMT Season4 優勝
SACTL 2009 優勝
SACTL 2010-2011 優勝
e-stars Seoul 2009 SuddenAttack Asia Championship 本戦 @ Korea

Counter-Strike
WCG2002 日本予選優勝
WCG2002 本戦 @ Korea
WCG2004 日本予選優勝
WCG2004 本戦 @ USA
WCG2005 日本予選優勝
WCG2005 本戦 @ Singapore
WCG2006 日本予選優勝
WCG2006 本戦 @ Italy
CPLSummer 2003 日本予選優勝
CPLSummer 2003 本戦 @ Dallas
CPLSummer 2004 日本予選優勝
CPLSummer 2004 本戦 @ Dallas
CPLSummer 2005 日本予選優勝
CPLSummer 2005 本戦 @ Dallas
CPLWinter 2005 日本予選優勝
CPLWinter 2005 本戦 @ Dallas
LANMADNESS PRECPL2004 @ Dallas
ACON5 2005 日本予選優勝
ACON5 2005 本戦 @ China

O2JAM
e-Sports Festival 2005 日本予選優勝
e-Sports Festival 2005 本戦 @ Korea