ゲーマー日日新聞

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【評価】『Black Mesa』の感想やレビュー 蘇る「絆」【Half Life】

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Half-Life』は私にとっても、世間的にも、伝説的なFPSだ。

オリジナル版だけで最高難易度をクリアし、更に2周遊ぶ程にやり込んだし、『Half-Life: Source』もクリアした。

あれから数年経って、色んなFPSを経験してきたが、久々に故郷へとんぼ返りしたくなった。

 


ゲーム概要

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本作『Black Mesa』は1999年に発売されたFPSHalf-Life』を、有志の手でリメイクした作品。無料で公開されている。

 

Half-Life』は迫り来るエイリアンや海兵隊との無情の戦いがメインとなっており、FPSで初めて本格的にストーリー(ナラティヴ)とゲーム性を融合させたことが評価された。

 


描かれる絆

 

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本作『Black Mesa』の面白い点は、よりプレイヤーとNPCの「絆」にフォーカスされている点だ。

もともと、『BM』の元となった『HL』はただゲームが面白いだけでなく、「エイリアンに襲撃された研究所からの脱出」という具体的な目的と共に、ダイナミックに描かれるサバイバル風のストーリーも魅力的だった。

その中で、「脱出」というメッセージを一層強調するのは、物語の合間に出会うNPC達である。

彼らは同僚の研究者であったり、研究所の警備員であったりするのだが、彼らはこの絶望的な状況で唯一主人公と境遇を同じくする存在だ。

研究所はエイリアンによって半崩壊しており、更には暗殺命令を受けた米軍が研究所に送り込まれ、主人公を含めた研究者たちは彼らの間で板挟み状態となっている。

あまりに心細い状況だが、そこで主人公と共に銃を取り、主人公と同じく脱出を志す彼らは、とても頼もしい存在としてプレイヤーの印象に残るだろう。


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まず、NPCのバリエーションが増えた。

前作『Half Life』では、前時代のテクスチャを使用しているのもあって、およそ人間離れした能面のようなNPCが多かったために、彼らに感情移入するのはなかなか難しかった。

一方、本作ではテクスチャの改良によって人間らしい風貌になった上、様々な肌の色、性別の研究者が用意されているのが興味深い。

黒人や白人、女性と協力しながら脱出を志すというのは、なんだか『LOST』みたいでドラマチックなのだが、

それに加え、この巨大な研究所が、人種を問わずに優秀な人材を取り入れていたことから、「真のエリート組織」だったことを裏付ける意味合いも感じられる。

つまり、主人公の所属していた研究所は、NSAとかCIAみたいな国家の最重要機関のような位置付けであり、そんな巨大組織がエイリアンを前にあっけなく崩壊するというギャップが、

今回の脱出劇を一層ダイナミックに見せているのである。



画期的な戦闘

 

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相変わらず、戦闘が面白い。

Half Life』はよくストーリー重視の作品だと言われるが、個人的に一番気に入ってるのは、このハードな戦闘だ。

スポーツ系を思わせる特殊武器やバニーホップのような移動テクに、リアル系を思わせる現実的な敵配置とカツカツの弾薬。

驚くべきことに、Source Engineでリメイクした本作でも、『Half Life』のヌルヌルした挙動が再現されており、高速で移動しつつ敵を撹乱する、ハイテンポな戦闘を楽しめる。

更に、敵AIの賢さも見事に蘇らせていた。敵はスクリプトと自己判断を混ぜながら突入し、グレネードとマシンガンを組み合わせる。更に敵は常に味方と合流する知性を持ち、プレイヤーは俊敏なエイムで確実に敵を仕留めなければならない…。

 

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もちろん、漠然と配置するだけでなく、絶妙にストーリーと噛み合った描写も見事で、ゲーム終盤では追い詰められた海兵隊たちがラジオで助けを呼び合う様や、エイリアンたちが研究所を巣食う様といった、ドラマチックなシーンをそのまま敵の配置や難易度といったレベルデザインへ適用させているのは見事。



煩雑な仕掛け

 

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ほとんど完全再現されたリメイクであるが、ところどころ手が加えられている。正直、その中には明らかに「改悪」と思しきものもあり、それがこの「煩雑な仕掛け」だ。

今までボタンひとつ押せばクリアできた部分や、果ては自動で開いた扉が、より複雑で分かりづらい仕掛けへと差し替えられている。

本作の「サバイバル要素」を強調しての判断なのだろうが、正直これは失敗と言わざるを得ない。明らかにテンポが落ち、あれこれ試すうちに逆に「ゲームだ」と白けてしまう。

追加された仕掛けはどれも悪くないし、前作より確かに現実的なものも多くなっているが、それならせめてプレイヤーのプレイアビリティを向上させる努力をすべきだっただろう。NPCからヒントが聞けるとか)

皮肉にも、全く同じ話が『Half life 2』にも言える。あれは事ある毎にNPCが出現し、その度スキップできない会話だけのシーケンスが繰り広げられる。没入感が一瞬で吹っ飛んでしまう。


総論




全体としても、ダントツで高クオリティなMOD。

一応完成部分まで(XEN突入まで)しかプレイ出来ないが、それでも10時間程のボリュームはある。

前作未プレイの方から、既プレイの方、果てはFPSに興味のない方まで、是非色んなゲーマーにプレイして欲しい傑作MOD。