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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Dying Light/ダイイングライト』の感想とかレビュー 隠し味としてのパルクール

ゲームレビュー

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ゲーム概要

※ネタバレのないよう心掛けています。


『Dead Island』などで有名なTechlandの開発した、オープンワールドを舞台とするサバイバルホラーゲーム。

ゲーム性としては、屋根や柱を自在に移動できる「パルクール」がフィーチャーされてるのが特徴。coopあり。日本では2015年4月にps4とXboxOne、PCで発売が予定されている。(現状steam版はおま国状態)

 

パルクールをどうゲームに落としこむか?

 

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「パルクール」という言葉がゲーマーの間に浸透したキッカケは、恐らくDICEの『Mirror's Edge』だろう。

FPSで定番の戦場から離れ、平和な摩天楼を舞台に、銃や超能力の代わりに己の脚を武器に駆け抜ける爽快感は、多くのゲーマーを虜にした。

最も、DICEの新作にしては売れ行きは芳しくなく、『Mirror's Edge』の続編も、「パルクール」を主軸とした作品も、しばらく表舞台から消えてしまった。

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パルクールがそこまで盛り上がらなかった原因の一つに、そもそも開発側にとって「パルクール」の調理が難しいという苦難があっただろう。

例えば、FPSの場合、まず遮蔽物に隠れ、銃で敵を狙い、倒した敵から弾薬を奪うなど、シューティングゲームとして様々なプロセスを盛り込むことが出来る。

だが、パルクールはどこまで行っても、飛んで跳ねるシンプルなゲームプレイに徹する必要がある。

しかも、パルクールを重視する以上は、バランス調整のために、銃が弱いとか弾薬が少ないとか、プレイヤーに制限を与える必要もある。

なので、プレイヤーがパルクールの面白さを理解できなかったり、或いはパルクール自体の詰めが甘かった場合、プレイヤーは一方的にフラストレーションを貯めることとなるだろう。

例えば、『Mirror's Edge』の場合も、パルクールアクションは実に洗練されていたものの、ただスピードと走り方を追い求める、「レースゲーム」的な渋い作品であったので、中々大衆に受け入れられることはなかった。

 


パルクール×ステルス×オープンワールド

 

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このように、パルクールは「レースゲーム」として運用されるのが精一杯だった頃、この『Dying Light』は実にユニークな手法を用いた。

それが、この「パルクール」と「ステルスゲーム」、そして「オープンワールド」が鼎立した組み合わせである。

まず、本作は『Dead Island』のようなオープンワールドを舞台にしているが、まともな武器やアイテムは手に入りづらく、基本的に戦闘を避ける「ステルスゲーム」として遊ぶことになる。

これは新鮮だ。考えてみれば、「ステルスゲーム」と「オープンワールド」を組み合わせた作品は、意外と少なかった。

何故なら、「ステルスゲーム」は、見つかっただけでペナルティが与えられる以上、本質的に高難度の作品が多く、そこに広大なマップの「オープンワールド」が組み合わされば、常にペナルティの緊張に怯えるプレイが続き、プレイヤーに大きな負担がかかってしまう。

(故に、『MGSV』は良い意味で楽しみだ)

だが、『Dying Light』は配置されたエネミーを「ゾンビ」に置き換えるというアイディアを産んだ。

これにより、本来のステルスゲームが「発見→射殺」という即死コースを辿ったのに対し、本作では「発見→追跡→撲殺」という、少なからず余裕あるコースが生まれた。

勿論、発見すれば仲間を呼ぶ哨戒ゾンビや、逆にゾンビを一箇所に集められる爆竹といったアイテムにより、ステルスゲームとして「隠れる」「誘導する」など基本的な理念はしっかり残されている。

いずれにせよ、「オープンワールド」を舞台にした「ステルスゲーム」という、いかにもストレスが貯まりそうなコンセプトに対し、ゾンビを配置して難易度を下げ、広大な世界をステルスで息を潜めて進むゾクゾク感が上手く実現されている。

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その「ステルス×オープンワールド」に加えて実装されたのが、「パルクール」だ。

いくら、オープンワールドにおけるステルスの難易度を緩衝したところで、マップの端から端まで息を潜めて匍匐前進していれば、確実にプレイヤーのモチベーションは削がれる。

だが、本作にはゾンビの登ってこれないような壁や屋根が多数放置されており、「パルクール」でこれらを活用してゾンビを回避することがメインになる。

この「ステルス×パルクール」は実に秀逸なアイディアで、本来は歩いたり匍匐してジンワリと進む「ステルスゲーム」でありながら、むしろ積極的に走って、飛んで、逃げることで敵を回避出来る。

これによって、「敵を殺すのでなく、回避する」ステルスゲームのコンセプトが失われることなく、独特の走破感を実現しているのだ。

また、ここでも、敵が「ゾンビ」であることが生きる。

ゾンビは軍人やゲリラと異なり、銃撃戦が出来ないので、パルクールで走っている際に蜂の巣にされてやる気が削がれるということもないし、(一方、『Assasin's creed』は旧式の銃を使ってバランスをとっている)

戦闘するか、逃亡するかなど、プレイヤー側が自由に戦略を考える余裕も与えている。

 

既存のアイディアを複数組み合わせた時

 

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このゲームを遊ぶほど、どうしても前作『Dead Island』のことが頭に浮かぶ。

特殊ゾンビ、ハクスラ要素、癖になるヒット感…。もはや本作は『Dead Island: Harran』といって過言ではないのではないか。

だが、そこに「使い回しじゃねーか!」と萎えるような嫌悪感はない。

見事に、『Dead Island』で評価された要素を吸い上げ、そこに「ステルス」「パルクール」を落としこんでいるためである。

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さて、近年では、めっきりAAA級タイトルの完全新作が発売される機会は減ったと思う。

前々から、開発費の高騰やアイディアの枯渇による、「DLCのような続編」は多かった気がするが、それもPS4時代になると多数が続編である。

だが、私は開発側が手を抜いていると思わない。開発費はまだしも、実際アイディアは枯渇しているのは事実で、新たに「ゲーム性」を見出すのは数年前に比べて遥かにハードルが上がったためだ。

しかし、Techlandは既存のアイディアを、それも自社のノウハウと他者のそれを組み合わせることで、意外なまでに新規性あるメカニズムを生み出した。

元々癖のあるTechlandだったが、その柔軟性のある思考は、勢力的に厳しいポーランドにおいてこそ輝くものだっただろう。

確かに、パルクールが目玉な割に挙動が甘い(加速という概念がない)、オープンワールドにランドマークが少なくて観光が寂しいなど、少し気になる点は多いものの、

本作は十分に意外性と面白さを含んだ、佳作と評価されるだろう。

また、本作を起点に、「パルクール」を応用した作品が増えると嬉しい。「レースゲーム」「ステルスゲーム」ときて、次は何と組み合わさるのだろうか。

余談だが、パルクールの舞台に南米のスラム街(のような)世界を活用するのは中々上手かった。スラム街×パルクール… 『スラムドッグ・ミリオネア』みたいで楽しい。