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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【第一回】To the Narrative -もこう ゲーム実況者の省察

 

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To the Narrative


今日まで我々を愛するゲームは、いかに成立したのか。その背景には常に、幾多のゲーマーによる献身がありました。

ゲーマー日日新聞の連載企画、『To the Narrative』では、ゲームへ貢献した功労者たちの素顔へ迫ります。


実況動画者としてデビュー

 

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私はそれまで、「実況動画」にも、『ポケモン』にも、そこまで興味はなく、ゲーム仲間の友人に薦められるまで、むしろ退屈なものだという偏見を抱いていたことを否定できない。

だが、今回紹介する人物、もこう氏の動画を観た私は確信した。「これが、実況動画という文化なのか!」と。

実際、彼の作品は今までの実況動画と呼ばれる動画に当てはまるタイプではなかった。

上級者の指南かと思って観れば、動画の半分くらいの試合では敗北しているし、

ネタプレイや縛りプレイかと思って観れば、自分もたまに「厨ポケ」を使って相手をボコボコにしてるし、

トークがメインかと思えば、話す内容はポケモンのことばかりで、いつも反感を買いそうなことばかり話している。

だがそんな奇妙な動画こそ、私が大のファンになる『厨ポケ狩り講座!』だったのだ。

 


快哉とユーモアの二重奏

 

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彼の動画の美点はいくらかあるが、常に笑いを忘れない点は、他の動画と比べてもずば抜けている。

例えば、こんなやりとりがある。

 

二回連続で急所にヒット→ 「これでキレない奴いんの?」→ 結果的に辛勝→ 「急所ってね… 実を言うと、そんなに試合を左右しないんですよー(くどくど説教が続く)」

→(続く2試合目、自分が優勢なのに悦に入って解説)→ 「まず相手に印象を植え付けてぇ~」→ (相手の急所でまさかの即死)→ 「急所っていらねえわな! クッソォー↑↑(#⌒,_ゝ⌒)」

(参照:『【バトレボ実況】第二十四回 厨ポケ狩り講座!-印象操作-』)



私はこのやりとりで何度笑ったかわからないが、それにしてもよく出来た動画だと感心する。

一見、もこう氏が調子に乗って痛い目を見た、という流れだが、普通に考えてこんなレアな試合が連続するはずはない。

そう、この動画は編集されているのである。恐らく、もこう氏には最初から「急所を食らっても辛勝する試合」と「急所で即死する試合」を組み合わせる構想があったに違いない。

そのため、彼は何度か試合に赴いて、最高に笑える選りすぐりの「試合」を集め、それを編集した作品を公開しているのだ。

勿論、彼のトーク力も素晴らしい。訛りの強い口調と、妙に悪い滑舌、視聴者によるコメントを意識した軽快な「ボケ」、豊富なネタの引き出し。実況部分だけみても、十分すぎるほどだ。

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(「アルセウス」3匹に勝負を挑む『二十九回』は白眉)

一方で、彼は勝利する試合では、我々も驚くようなファインプレーを決めている。

先ほどの動画なら、満身創痍の中で生き残った「ペルシアン」を、相手の間隙をついて「わるだくみ」で一気に強化し、「スピードスター」で反撃を始めるシーンは、なるほどと感心する。

というのも、ペルシアンは平凡すぎるために、逆に相手もどんな型か予測し辛い相手なので、相手が躊躇したターンを見越して「わるだくみ」を展開しているのだ。

また、彼はシリアスな話題におけるトーク力もあり、「荒らし対策」「視聴者のマナー」「乱数の是非」など、タブーと思しき話題に積極的に切り込み、説得力のあるアドバイスも与えている。普段面白い人が、唐突に核心をついたことを言うものだから、思わず頷いてしまう。

このように、彼の動画には、常に小さな「愉快」と「感心」が交互に詰められており、絶妙な塩梅で我々を楽しませてくれるのだ。



ゲームを極限まで引き出す省察 ー「実況動画」という作品を目指して

 

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では、もこう氏の作品は、彼のユニークなパーソナリティとエンタメへの才能から、ここまで評価されたのだろうか。

いや、彼の作品の醍醐味は、エンターテイナーとして研ぎ澄まされた彼自身の才能に加え、『ポケットモンスター』というゲームへの深い理解と省察にあると思う。

さて、動画のあちこちで飛び出した、もこう氏の「名言」は、今でもファンに好んで引用されているが、その数々はほとんどが『ポケモン』を理解した上で初めて笑えるものだ。

例えば、「お前らメモとっとけ!マンダのりゅうせいぐんはつよい」という名言の場合、ただその発音の軽快さや、メモを取れというフリの割に余りに単純な内容というだけでも面白いが、

「ボーマンダ」が飛び抜けて高性能なポケモンである点と、「ボーマンダ」は物理攻撃に特化していて「りゅうせいぐん」という特殊攻撃では本領を発揮できない点など、ゲームの駆け引きを理解すると、更に「なるほど」と笑えるのだ。

(要するに、「ボーマンダ」の不得意な技だろうと容赦なくぶっ放せる「厨性能」っぷりを嘆く先生に、「あるあるw」という同情と、「それ言っちゃおしまいだろw」という笑いが同時にこみ上げてくる。)

また、この動画の企画、『厨ポケ狩り講座!』というコンセプト自体が、作品に対する強い理解があって実現するものであり、いつもハラハラした展開を楽しめる。

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一方、この面白さは、もこう氏の人格と理解に加え、『ポケモン』というゲーム自体の、ハイレベルな「アクセシビリティ(接近可能性)」も含まれていると思う。

正直に告白すると、私はほとんど『ポケモン』を知らない。せいぜい、シリーズの『サファイア』と『ダイアモンド』をプレイしたぐらいで、対戦もズブの初心者だった。

それでも、何故もこう氏のポケモンが「マイナー」と呼ばれ、対戦相手のポケモンが「厨ポケ」なのかは、動画を観た者なら誰もが理解し得るだろう。

何故なら、もこう氏の相棒はどれも頼りない矮躯なポケモンで(失礼)、「サメハダー」や「ペラップ」で、相手のポケモンは、鋼のロボットの「メタグロス」や、巨大なドラゴン「ガブリアス」と、一目に強さが理解できるポケモンだからだ。

そして、小さな「ペラップ」と、威圧感のある「ガブリアス」が同じコロシアムに並ぶことで、未プレイの人間にさえ、もこう氏の「強者を弱者で狩る!」というカタルシスをひと目で把握できるのだ。

 

f:id:arcadia11:20150202013746j:plain(ペラップ)

f:id:arcadia11:20150202013755j:plain(ガブリアス)


これはもこう氏の企画力もさながら、『ポケットモンスター』というゲームに秘められた、誰でも即座に作品の醍醐味が理解できる、秀逸なデザインが本作の面白さを一層引き立てていると言えよう。

また、16分の1という絶妙な確立で発動する「きゅうしょ」、居合の如き「ふいうち」、形成を一気に逆転させる「トリックルーム」など、『ポケモン』の対戦には駆け引きの面白さを引き出す要素が多数盛り込まれている。

そもそも、「実況動画」を観られるyoutubeやニコニコ動画では、全員が全員ゲーマーではない。上級者から、未プレイ者までいるだろう。

『ポケモン』という作品は、「子供から大人まで、日本人から外国人まで愛される作品」として任天堂の中核を担ってきた。その作品の真価が、この公共の場で発露することは、さして意外なことではないのだ。

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(何とピッケルを作ってしまった天才もこうくん)

私自身、こうしてblogでレビューや解説といった形式で、様々な作品にアクセスし、省察を試みた。

だが、もこう氏の『厨ポケ狩り講座!』に代表されるような、「ゲーム実況・プレイ動画」と呼ばれる媒体もまた、「省察」として、とても魅力的だと思う。

彼もまた、「イテリノイマ杯」における騒動や、彼自身が特定される事件など、実況者として、一人の作家として活躍する上で、様々な困難や反省にぶつかったかもしれない。

だからこそ、彼が苦労して作った「作品」には大きな価値がある。ゲームという文化に即して、省察し再生産された文化、それが「実況動画」という文化ではないか。

もこう氏は今もなお『Minecraft』など新たなゲームへチャレンジを続けており、『厨ポケ狩り講座!』と異なる作風、魅力をを見出している。今後の活躍にも期待したい。

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参考文献


KAI-YOU 「“厨ポケ”狩り実況者・もこうインタビュー 「ポケモンバトルは、俺の人生」  http://kai-you.net/article/4504

もこう 「もこうとは」 http://mokou1.blogspot.jp/p/blog-page.html


もこう氏の実績


2009年5月よりニコニコ動画にて活動開始。
実況動画、「厨ポケ狩り講座」シリーズを開講。

2010年9月までに約55本もの講座動画をリリースし、一躍名をはせる。

その後は実況動画にこだわらず、多ジャンルに手を出す。
歌ってみた、料理、エンターテイメント、自然カテゴリ等。

2014年現在、
Web上に投稿した動画の総再生回数は3500万回以上。
ブログPV月間50万。