ゲーマー日日新聞

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【評価】PS4・PC版『Grand Theft Auto V』の感想とかレビュー 目線とグラフィック

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PS4で新たに生まれ変わった『GTAV』をプレイ。

元々、PS3版では海外版を購入してまで楽しみにしてた作品だけど、やっぱりこのゲームは面白い。

だが、ゲーム性は「新生GTAV」になったからといって、大して変わったように思えない。ストーリーは一緒だし、追加エピソードもない。

では、既にPS3などで『GTAV』をPS3やXbox360でプレイされた方は、新たに次世代機版を買う必要はないと思う方も多いだろう。

だがちょっとまって欲しい。実はこのゲーム、「グラフィック」が異常なまでに強化され、更にとある要素が、このゲームの可能性を大きく引き出しているのだ。

 


ゲームの概要

 

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Grand Theft Auto Vは、Rockstar Gamesから開発された、オープンワールド形式のクライムアクションゲームだ。

アメリカの西海岸を舞台としており、再開発の進むアメリカならではの社会事情、美しいグラフィックで描かれる自然と都市など、リアルな描写が評価された。

結果的に、PS3版の『GTAV』は「24時間で最も売れたビデオゲーム」というギネスまで受賞し、そこから、更にグラフィックや追加要素を増やしたのが、今回紹介する『PS4版のGTAV』である。



何故「視点切り替え」か? -身長170cmの男の目線

 

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さて、ではPS4版で新たに発売された『GTAV』は、一体どのようなフィーチャーを得たのだろうか。

まず、表立って追加された要素は実際少ない。

先述したように、シングルプレイに限れば、追加されたストーリーや、新たに解放されるマップもなく、以前プレイした人なら既視感を否定できないだろう。

だが、これはあくまで「TPSモード」で遊んだ時の話。そう、本作には大きな追加要素として、「FPSとTPSに切り替えられるオプション」が実装されているのだ。

一方、FPSとTPSを切り替えられるのは、少なくともPC版のGTAでは珍しい話ではないと思う人もいるだろう。『GTA:SA』や『GTA4』のPC版では、視点の切り替えを追加するMODは、定番中の定番だったからだ。

しかし、『GTAV』における「FPSモード」は、単にカメラの位置をズラしただけではない。

むしろ、視点そのものはおまけと言っていい。

真の魅力は、「FPSモード」だからこそ注目するような、身近なオブジェクトや等身大の世界を、徹底して描きこまれている点なのだから。

 

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例えば、本作では「銃」が異常なまでに作りこまれている。

前世代版ではお世辞にもリアルと言えなかったピストルやライフルが、今回はFPSに対応することで、バレルの長さからスコープの刻印までハッキリと読み取れる。

また、NPCの服装やアクセサリー、表情といった「市民の姿」、ピザ屋の広告やナンバープレートといった「文字」など、

これらは実に細やかなオブジェクトであるが、FPSモードなら必ず目に入るであろうオブジェクトである。

そして、Rockestarはその「FPSの視線」を明確に意識した。TPSの「神の目線」ではなく、FPSならではの「身長170cmの人間の目線」に、何が映るのか。彼らは徹底的に研究したのである。

その結果、世界に生きる人間の生き生きとした姿、現実の文明を思わせる広告に踊る文字、メーターまで動く車のコックピット画面など、TPSでは注目しないであろう部分を徹底的に作り込み、

我々が本当にSan Andreasに存在しているような没入感と、自らの四肢と五感を通じてGTAの世界観を読み取る手法を、確立したのである。

 


Rockstarの「グラフィック」への熱意と慧眼

 

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これらを通じた体験に、私はすっかり次世代のオープンワールドに夢中になり、これ以上なくリアルな世界に取り込まれていった。

彼らはただ巨大な資産を投じてグラフィックにぶつかるのでなく、「磨くべき部分はどこか?」を徹底的に考えたのだ。Rockstarの慧眼を感じずにはいられない。

先述したとおり、「次世代機」は我々の期待ほどに目覚ましい発展を遂げず、また各ゲーム業界も消極的な作品を作らざるを得なかった。

だが、これは何もゲーム業界が衰退したからではない。むしろ、既にPS3やXbox360で実現したグラフィックは素人目には十分に「リアル」であって、もはやそれ以上の表現はあまり期待されてなかったのだろう。

だからこそ、多くのクリエイターたちは、「これ以上どう磨けば、リアルだと感動してくれるんだ?」と頭を抱えたに違いない。

PS3版の『GTAV』であっても、銃や表情はまだカクカクしていたが、山脈の広がる遠景や、地平線に登る太陽の光は、紛れも無く「リアル」だったのだ。(だから、PS4版でも遠景や光はそこまで変化を感じさせない)

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そこで、Rockstarは我々の死角を突いた。

つまり、遠景や太陽に見惚れる視界の隅にあった、時計やピストルや愛犬の様子といった、ミニマムだが、確実に世界観の骨格を担うオブジェクトを、徹底的にブラッシュアップしたのである。

ゲームショーでいつも大々的に見せるのは、車の爆発する表現や、立ち並ぶ摩天楼、ダイナミックな光の表現だ。これは言うならば、「マキシマムなオブジェクト」というべきだろう。

一方、『GTAV』はあえて、宣伝用PVでは役に立たないが、実際に遊ぶと確実に理解出来るような、文字や日用品といった「ミニマムなオブジェクト」を描き尽くすことで、既存のオープンワールドにある新たな側面を照らした。

ちょうど、PS3版の『GTAV』が、「最初は感動するが、遊ぶに連れてボロが出るグラフィック」とすれば、PS4版は、「最初は代わり映えのなさにガッカリするが、遊ぶほどに味が出るグラフィック」なのだ。

いずれにせよ、誰もが「ゲームにおける”リアル”は、もう頭打ちだな」と諦めた頃に、「FPS視点+ミニマムオブジェクト」という、こんな斬新かつスマートな手段で、革新的な世界を描いた、Rockstarに敬意を評したい。