ゲーマー日日新聞

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【評価】『ムジュラの仮面 3D』の感想やレビュー やっぱ神ゲーなピカレスク

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ゲーム概要

任天堂から2000年に発売された『ムジュラの仮面』を、3DSに対応した上でリメイクしたもの。

広大な世界観の『時のオカリナ』とは対照的に、ホラーテイストな雰囲気が好評を博し、特に海外で高い評価を得た。

 

 

ハックルベリィとなったリンク

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『ゼルダの伝説』と言えば、それはもう日本では知らぬ者はいない名作シリーズで、現代でも任天堂の主力を担う、アクションゲームの王道でもある。

私がこのシリーズで好んでいるのは、作品が様々な個性を見出している点である。

例えば、『時のオカリナ』は初の3D対応ということもあり、高度なグラフィックで美しいハイラルの冒険譚を描いたかと思えば、続編の『ムジュラの仮面』では、閉鎖的なパラレルワールドでホラーを味わう。また、『トワイライトプリンセス』では一転して大人向けの硬派な物語が展開される。

このように、ただ似たような続編を出すのではなく、むしろ作品毎に思い出が残るような個性的な続編を生み出せる柔軟性こそ、『ゼルダの伝説』の最大の魅力といってよいだろう。

 

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では、この『ムジュラの仮面』の持つ性質とは何だろうか。とりあえず、世紀の傑作として名高い、前作『時のオカリナ』について考えてみよう。

私の印象として、前作『時のオカリナ』は、マークトウェインの『トム・ソーヤーの冒険』に近い。

これは実に心躍る冒険小説で、トムやハック、ベッキーといった子供たちがアメリカを舞台に、様々な思いをめぐらせて、洞窟や町並みを冒険し、自分らを支配しようとする大人たちを欺く内容である。

この小説は、文学的な思慮深さがありながらも、子供も難なく読めるほどに読みやすい。というのも、主人公のトムソーヤーは、大人よりはるかに賢く、行動力に優れ、しかも人望まであるので、まるで負ける気がしない、正義のヒーローなのだ。

これは『時のオカリナ』でも同じことが言えると思う。主人公のリンクは、さすがに演説して大人を騙す力はないけど、ゼルダ姫やマスターソード、トライフォースといった「権威」によって承認された、自他共に認める勇者であり、プレイヤーもある程度は安心して冒険を進められるわけである。

 

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一方、『ムジュラの仮面』はどうだろう。むしろ、同じ作家でも『ハックルベリー・フィンの冒険』に近い作品だと思う。

『ハックルベリー』も華やかな冒険小説ではあるが、主人公は「宿無しハック」と呼ばれた貧乏少年で、トムのような奇才や勇気に優れるわけでもない。仲間も逃亡奴隷のジムだけで、彼によってむしろ世間から追われる身となっている。

故に、その最中で見る19世紀のアメリカの大人たちの姿は、彼にとってはただ脅威であって、見知らぬ世界への冒険とは、相応の恐怖と危機との隣り合わせであることが、根底のメッセージとして主張している。

『ムジュラの仮面』もまた、冒険への危機と恐怖を強く表した作品となっている。『時のオカリナ』で勇者となったリンクは、道中に悪漢スタルキッドに襲われ、マスターソードのような権威によって保護された世界から追放されると共に、ハイラルとは何もかも異なる、暗雲漂う「クロックタウン」なのだ。

 

ピカレスクとしての外伝

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子供は本来、守られて然るべきである。

幼いリンクが主人公の『風のタクト』では、コミカルな画風と頼もしい仲間が存在していて、『時のオカリナ』では正当な権威、マスターソードやトライフォースの加護が強調された。

「子供は本質的に正義」

そういうミームが、うっすらとだが、任天堂の作品には共通して見られる。

 

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だが、『ムジュラの仮面』には真っ向からそのタブーを打ち破り、「子供」に残酷なまでの試練を課す。クロックタウンは『サイレントヒル』程に残酷な世界ではないが、「子供」の目線を通して冒険することで、そこらのホラーなど比べ物にならない恐怖を感じることが出来る。

その代表なシステムが「仮面」システムである。

例えば、リンクは今まで「道具」を使いこなし、文明的に世界を攻略することが出来た。しかし、本作は「仮面」によって自分の肉体そのものを変化させなければならない。

それも、ゴロンやゾーラといった、人間以外の「自然」の姿へ変化してまで、貪欲に世界へ挑戦し続ける。

本作は、前作以上にリンクが自分自身の力で戦い、独立することを要求するのだ。

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また、本作はサブクエストが豊富なのが魅力だが、そこでもリンクに様々な挑戦が突き付けられる。

中でも特徴的なのは、チンクルやパメルといった、奇妙な住人たち。必ずしも善意で生きているわけではない住人たちだ。

そこに、トライフォースの権威を離れ、異邦人として現地の住人にも歓迎されず、ただ一人孤立するリンクが出会い、濃厚なヒューマンドラマが描かれる。

現代では色んなゲームでサブクエストが搭載されているものの、本作の「異邦人の少年」と「怯える住人」の交流程に充実した内容のものは、そうそうないだろう。

 

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作家のマークトウェインは、『ハックルベリィ・フィンの冒険』を指して、「大人のための冒険小説」と呼んだそうだが、まさに本作は大人が改めてプレイすることで、見出すことが多い作品でもある。

リメイクされ、グラフィックや操作性も一新された傑作。昔遊んだ大人の方にも、是非もう一度遊んで欲しい。

ちなみに、リメイク版で新しく追加された「ヒント機能」は、PCとか攻略本で情報を参考にできない屋外で遊ぶ携帯機ならではの機能として、とても秀逸なアイディアだと思う。他のゲームにも搭載して欲しい。