ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

「プロゲーマーを目指す専門学校」を見て考えたこと

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先日、東京アニメ・声優専門学校が、「プロゲーマーを目指すための専門学校」と銘打って、e-Sportsで活躍する人材の育成を目的としたコースを設立したことが、大きな話題となった。

それに対する反応は千差万別で、「よくやった」と褒める者もいれば、「たかがゲームで」と冷静に考える者もいる。

だが、褒めるにしろ貶すにしろ、多くの意見はゲームならではのルサンチマンに終始しすぎじゃないかと思う。

 

 

例えば、個人的にびっくりしたのが、この4gamerの記事。

前代未聞,「プロゲーマーになるための専門学校」が開校 - 4Gamer.net

 

なんというか,学生が教室で一斉に「1秒間に5回以上右クリックできるようになる方法」とか「きっちり視点を180度回転させるためのマウス操作」とかを練習しているのであれば,ぜひとも見てみたい気持ちでいっぱいである。付け加えると,プレイヤーとしてではなく,就職や起業,イベント運営のノウハウを学びたいのであれば,対象をe-Sportsに限定することなく,大学なりほかの学校なりでしかるべき学部に進むべきではないのかと思えてならない。
 ただ,こういった技術を教わりたい,体系立てて学びたいという高校生や中学生の数が,専門学校のビジネスとして成り立つ可能性がある(かもしれない)レベルにまで増えてきたこと,それ自体は注目に値するのではないかと思う。

 

注目すべきは「対象をe-Sportsに限定することなく,大学なりほかの学校なりでしかるべき学部に進むべきではないのかと思えてならない。」という部分。

最初から4gamerにマスメディアとしての権威を期待しているわけではないが、それにしたって、比較的中立なサイトがここまで言い切るのだから、少し驚きだ。

元々、ゲームをメインに扱うサイトの4gamerであり、ゲームの作品のレビューも扱っている。そちらを読んだことのある方なら、こちらのサイトが普段どれほど中立かつ消極的な内容に収めているかはご存知なはず。だからこそ、この記事でここまで断言してしまうのは、私にとっては衝撃だった。

別に「ゲーム雑誌なんだからゲーム応援しろ!」と言いたいわけじゃないし、そもそも4gamerが個性的なオピニオンを持つこともむしろ良いと思う。私が言いたいのは、「比較的中立な商業用サイトですら、プロゲーマー専門学校には容赦なく意見が言える」という、業界に蔓延する世論である。

 

e-Sportsという言葉のインパクト

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間違いなく、ここ数年でゲームの立場は向上したと思う。

スマホでソシャゲが流行ったのもそうだし、単純にゲームを遊んで育った子供が社会に進出したという時間の経過もあるだろう。

ところが、それだけ「ゲームだからって馬鹿にしてんじゃねえ」的な、コンプレックスをこじらせてe-Sportsという言葉を使う人もいると思う。

 

例えば、この件に関する声を見ても、「たかがゲームが職になるのか」という古典的な批判もさながら、肯定する面を取ってみても、「たかがゲームと侮るな」という、既存の価値観に基づいたものが多数見受けられる。

特に、この学校の宣伝動画「What is e-sports?」においても、「他の人気スポーツと同様、プロプレイヤーが存在する」と告知され、あくまで「ゲームはスポーツと同じ領域にまで展開された」として、現状のsportsを引き合いに出す。

勿論、スポーツがゲーム以上に長い歴史と試行錯誤を積み重ね、ゲームがその後を追随することは素晴らしいが、それにしても「ゲームだって、オタクだって、スポーツ同様に高度な競技なんだぞ!」という、少し卑屈な動機を感じずにいられない。

実際のところ、「e-Sports」という単語が、「スポーツ>ゲーム、リア充>オタク」という従来の偏見の元で、スポーツの権威にあやかろうとしたり、逆にスポーツと一方的に比較して卑下する言葉に成り下がってることは、ある程度否定できないんじゃないだろうか。

 

専門学校は「学ばせる」場所じゃない

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一方、このコースに対する否定的な意見に関してだが、これはゲームへの偏見もさることながら、根本的に教育に対する認識が違うと思う。

まず第一に、高等教育は「日本が子供に社会で生きる能力を与える」場所ではない。それは小中学校の義務教育であって、高等教育は「自分で能力を見出す」場所である。

だからこそ、我々が客観的に「大学ではこういうことを学ぶべき」というツッコミ自体、矛盾した意見な気がする。

 

この4gamerの記事なんて最たるもので、単に「e-Sportsのコース」としか宣伝してないのに、記事は「対象をe-Sportsに限定することなく」とまで先走らせ、挙句に大学教育まで引き合いにだして否定する。

第一、彼がプロゲーマーコースの代わりとして挙げている「しかるべき学部」というアイディア自体が学問ではナンセンスすぎる。学問に王道なしとは言うが、何かを成功させるのに最も効率の良い学問などない。既存の「王道」に対して、「こういう学問もある」と選択肢を増やすならいざ知れず。

というか、法学部に入った人が必ずしも法曹になるわけでもないし、元々絵がすごい上手くて美大に行ったけど、結局普通の小売店に就職した人も知ってる。

大学だって、学部を選んだ後も、授業を選び、ゼミを選ぶ。大学というのは、結局自分で何をやりたいか決めて、それから自分で学んで、初めて得られることが多いわけで、場末で煽ってる人ほどそういう経験少ないんじゃないかなぁ。

 

 

要するに、「e-Sports」という言葉に対して、過度に身構えたり、或いは上から「こうあるべき」として教育を押し付ける必要もない。

「ゲームだってスポーツだ、現代に通用するんだ!」と力んで世間に媚びる必要もないし、大学教育を引き合いに出す必要もない。学費を出すのが生徒であり、彼らが学ぶのが学校である以上、そもそも世間と折り合いをつける必要はないのだ。

余談だけど、専門学校に行ったからといって、その職業に就く義務はない。