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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『The Order: 1886』の感想やレビュー TPSに見出すSFの描写法

ゲームレビュー

 

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ゲーム概要

Ready at Dawnによって開発された、過去の大英帝国で活躍する騎士団「オーダー」を描いた、PS4専用のTPS。

「半獣」と呼ばれるモンスターが跋扈するスチームパンクの世界観と、PS4の性能をフルに活かした表現が特徴。

 

FPSの意外な欠点

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唐突だが、あなたはFPSとTPS、どちらが好みだろうか?

もちろん、FPSにもTPSにも、様々な素晴らしい作品が存在するのだが、現行ではどちらかというとFPSの方が人気、というのが個人的な印象である。恐らくそれは、FPSの根源的な魅力、「高い没入感」が多くのゲーマーを惹きつけているからだろう。

代表的なものに、『Half Life』がある。

この作品では、ゲームがプレイヤーに直接、「あなたはこのゲームの主人公だ」と言って聞かせ、平凡な研究者ゴードン・フリーマンとして、崩壊寸前の研究所から脱出するサバイバル的体験を楽しませるのである。

だが、この手法には一つ欠点がある。それが、ゲームの世界観の中に、「主人公」を登場させられないことだ。

 

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どういうことかというと、FPSでは等身大の主人公として描く以上、主人公の姿をプレイヤーに見せることはない。

仮に、ゴードンがどのように危険な綱渡りをしようと、エイリアンとの銃撃戦がどれほど凄惨なものであれ、当然FPSの視点では主人公を客観的に知ることは出来ないので、実際主人公がどれほどすごくて、どれほど強いのか理解できないのである。(『DOOM』は例外かもしれんけど)

大抵の場合、この欠点はFPSの高度な没入感で相殺されるものの、例えば、「SF」や「歴史モノ」のような、世界観が非現実的なものである場合、本来プレイヤーが知りたいはずの情報がFPSでは入ってこないのである。

例えば、この『Half Life』をとっても、ゴードンは「HEVスーツ」と呼ばれるSFチックなスーツにより、格段に身体能力が向上しているのだが、実際にゲームプレイをする中で、このスーツが見えるのは腕くらいで、何故自分がうさぎのように跳ね回れるのか実感できない。

同じようなものに、『Call of Duty: Advanced Warfare』があり、こちらは強化外骨格で10M近くジャンプできる主人公というのが魅力だが、こちらも「今、私は強化外骨格を着て戦っている!」という感覚は希薄だ。(ただ、歩行音がガチャガチャ言うのは上手い演出だと思う)

要するに、「SF的な非日常」が舞台となるFPSの場合、一人称視点だと主人公への描写がどうしても弱く、せっかくの独特な世界観を活かすことが難しいのだ。

 

TPSのメリット 「SF」を余すことなく描く

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このように、FPSはファンタジーのような非日常における体験を強調する上で、少し描写が難しい。更に言うと、せっかく主人公を凡人と設定しても、超常現象の起きる世界における「凡人」の定義がぼやけてしまい、感情移入も薄れてしまうのだ。

一方、TPSの場合、この「SF的な非日常」の中に、主人公の姿を落とし込んで描くことにより、世界観を余すことなく描ける。

例えば、本作の主人公は、ゴシック風の万能ロングコートが制服だが、これが主人公が動くたびに本物の生地のように激しく翻る様子を描くことにより、プレイヤーは「自分は”ヨーロッパの兵士として”戦っているのだ!」と実感できる。これはFPSでは確実に味わえない没入感だ。

 

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それから、「銃」の描き方が興味深い。本作には、電流を発射する「アークガン」や、粉塵と照明弾を同時に活用できる「サーマイトライフル」など、スチームパンク調のユニークな銃が登場するが、

アークガンは電撃をチャージすると銃全体ががたがた震え、三つバレルがついたショットガンは、主人公が全身を使って弾を込めるアニメーションが描かれるなど、実に個性豊か。

開発者によると、「主人公にも危険を及ぼしそうな試作品」を登場させることを試みたそうだが、実際これらがどれほど「危険」かは、画面内で主人公と対に描かれてこそ理解できるものだろう。

FPSにおいても銃は美しく描かれるが、SFならではの「こんな銃、どうやって動かしてるんだ?」と思うような非現実的な銃では、銃の全身が描かれるTPSの方が、メカニズムから把握できるのだ。

 

かなり「惜しい」QTE

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一方、やはり問題点としてQTEの言及は避けられない。

ただ、私はQTEの存在そのものを否定するつもりはない。実際、本作のQTEは、要求される操作数がやけに多く、操作法も非直感的という、「QTEの内容」自体は確かに酷い。

それでも、本作のQTEのカットやアクション自体はかなりかっこよく、ちゃんと本来の「TPS」としての表現を拡張するよう考えられ、あくまでムービーとゲームをシームレスにつなぐ潤滑油として、「客観的」に見るSF世界の緊密さを描いている点で、QTEをある程度活用するのは悪くないと思う。

せっかくだから、QTEの操作にもう少し工夫が欲しかったところだ。

 

あと『サイコブレイク』でもあったけど、画面の端をレターボックスみたいに黒く塗りつぶすのは辞めて欲しい。描写面積を減らして画質を上げるためらしいが、根本的なプレイアビリティが削がれてしまっては元も子もない。

表現やゲーム性に個性を見出すのは自由だが、プレイそのものの快適性は必ず維持すべきだ。

 

 

なんだか「PS4の限定タイトル」ということで少し煽りを食ってしまった感のある『The order: 1886』。

さすがに『アンチャーテッド』や『Bloodborne』ほど期待するとガッカリするかもしれないが、手堅く「TPS」ならではの表現を追及した作品として、十分プレイする価値のある作品だと思う。