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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Plug and Play』の感想やレビュー ゲームへの挑戦

 

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ゲーム概要

Michael Freiが描いたアニメーションをMario von Rickenbachがゲーム化したもの。

ゲーム性は『メイドインワリオシリーズ』に近い。プレイ時間は20分未満。一応この批評内で考察とネタバレを含むので注意。

 

刹那のアニメーション

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本作は、「ゲーム」と分類するに、あまりに奇妙なゲームだ。

見ての通り、ただプラグをコンセントに突っ込んだり、スイッチをポチッと押したりすることを繰り返すだけ。

シーンは次々に移動するが、それぞれ繋がった話のように思えない。そんなシュールなゲームプレイを、15分もプレイすればゲームクリア。『The Graveyard』顔負けにシンプルすぎるさk品だ。

 

だが、これらのアニメーションは実に巧妙に作られている。

脚本もなく、セリフもない、純粋な「動く絵」のみに支配された世界でありながら、キャラクターたちの動きや、絵の体裁を崩さずに動く一貫性から、ほとんど退屈せずに過ごすことが出来るだろう。

全体的にコミカルで、またシニカルな雰囲気に包まれており、子供の頃にテレビに貼り付いてアニメを楽しんだ経験を思い出すに違いない。

また、プレイヤーの動きにインタラクティブに反応する細やかさも見事だ。プラグを引っ張れば、それに繋がるコードは踊るようにしなるなど、プレイヤーの意志がアニメの世界に反映されていることを実感できる。

 

アニメによる、ゲームへの挑戦状

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では、この作品は、昨今流行となっている「雰囲気ゲー」と呼ばれるような、少しインテリ風なゲームの一派なのだろうか?

私はそうは思わない。

むしろ、この作品は既存の雰囲気ゲーに対する、本物のアートからの挑戦状ではないかとすら思えてくるのだ。

 

実はこの作品、App版と同時に、アニメーション版が開発されていたのである。

アニメーション版とは、そのままゲームの内容を、一本のアニメとして復元したもの。

こちらでは、実売されているゲームとほぼ同じ内容を、「プレイヤーが介入できない」という条件付きで、無料で楽しむ事ができるのである。

(参照:https://vimeo.com/118453180

 

つまり、このゲームは最初からアニメという基盤があって、その合間合間に操作できる要素を付け加えただけのもの、とも捉えられるのである。

このゲーム、実は「アニメをゲーム化」したものとさえ、言えるのではないだろうか?

(作者自身、「直接プレイして欲しい」と言ってるくらいだし、アニメを優先したわけではないと思う。アニメとゲーム、両方の可能性を同時に追求したのだろう。

 

「雰囲気ゲー」の曖昧さ

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「雰囲気ゲー」「インタラクティブメディア」「アートゲーム」・・・

主に『Braid』(2008年)や『Machinarium』(2009年)、国産の『ICO』(2001年)等に端を発する、これらの作品は、現代のインディーズ市場の拡大と共に爆発的に普及し、

プレイヤーを血まみれの火星から、アーティスティックな世界や、文学的な脚本へと誘い続けてきた。

 

だが、それでもゲーム製作者は、究極的にはゲームとしての面白さを追求し続けてきたように思う。

いかにアートなグラフィックで彩っていても、その骨格は結局のところ『スーパーマリオ』であり、『ゼルダの伝説』である。ダッシュしてジャンプして、たまにパズルを解く日常に、変わりはない。

勿論、それは決して悪いことではない。どんなゲームであれ、ゲームの面白さを追求することは、全く素晴らしいことである。

だが、数ある雰囲気ゲーの中で、完全に芸術のエッセンスを中枢に据えた作品が稀有だったのも事実。そう簡単にノウハウを捨てることは出来ないだろう。

 

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(上画像 引用:『Braid』  画像下 引用:『スーパーマリオブラザーズ』)

 

だが、『Plug & Play』はその曖昧な「雰囲気ゲー」に、洗練された技巧を中心に据えて切り込んだ作品の一つだ。

彼はアニメをゲームにするだけで、これほどにも面白く、愉快で美しいと訴える。

そう、このゲームは「雰囲気ゲー」ではなく、「インタラクティブアニメ」なのだ。

 

これは個人的な話だが、数ある「雰囲気ゲー」の中で、文字通り雰囲気に流されたままの作品は数多いと思う。

ゲームとして遊べば平凡なマリオ、だがアートとして観ても巨匠のトレース。

「インタラクティブメディア」という曖昧な定義がもたらす、この緩やかな潮流に身を任せる中途半端な作品は、正直少なくない。

そんな中、この秀逸なアーティストの描く世界が、インタラクティブなギミックと組み合わさることで、「雰囲気」などとは言わせない完成度は、さながら異星の侵略者のように見えた。

 

予め断っておくが、私は何も「アニメ>ゲーム」と言いたいわけではない。要するに「すごい!」と思わせるなら、何でもいいと思う。つまり、面白さのベクトルをジャンルで定義するのはいいと思うが、面白さにカテゴライズが勝ることはないのは事実である。

勿論、ゲーム側にも、『Journey』『ICO』『Demon's souls』『Battlefield 3』、先述の『Braid』など、並のアートを軽々しく蹴散らす実力と斬新さを兼ね備えた作品はいくらでもある。まぁこの場合、本場で修行を積んだ芸術家たちが、実際にゲーム会社で勤務していたりするが。

 


これをゲームで遊んでみたい。