ゲーマー日日新聞

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【評価】『Hotline Miami 2』の感想やレビュー 続編未満

 

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ゲーム概要

インディーズのDennatonGamesから開発された、格闘と銃器を織り交ぜた見下ろし視点シューターの続編。

80年代カルチャーに影響されたサイケな世界観と、シビアなレベルデザインが特徴。

 

天井知らずに跳ね上がった難易度

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このゲームの第一印象は、とにかく難しくなった。ということ。

実際前作でも相当に難しかったが、序盤から終盤にかけての難易度カーブは守られていたので、初心者も学びつつ遊ぶことが出来た。

ところが、本作では最初のレベルから多数の敵が問答無用で襲い掛かってくるし、終盤に差し掛かる頃にはマップの至るところに敵が溢れ、『Alien Shooter』顔負けの人海戦術を繰り出してくる。

正直、前作で難しすぎて心が折れたという人には、全くオススメできないと断言出来る。

 

問題は、この難易度の高さは、単なる理不尽なのか、それとも挑戦しがいのある水準なのか、ということだ。

結論から言って、序盤は中々優れた構造になっている。

まず、前作では、基本的にマップが狭く、敵も散開していたために、近接武器によるステルス戦術が強すぎたという欠点があった。

銃など使わずとも、とりあえずナイフを振り回してツッコんでいけば、一部の難所を除いてほとんど攻略出来てしまったのである。

 

一方、本作では開けたマップが増えた上に、ガラス張り(銃弾の貫通する壁)の部屋が増えた。これにより、プレイヤーは必然的に銃に頼ることとなり、銃弾でバタバタと敵を撃ち抜く爽快感を強調している。

勿論、近接攻撃も十分に有効であり、部屋をクリアリングする近接戦闘と、遠距離の銃撃戦が良い塩梅で取り入れられている点から、戦闘の多様性は増した。

稀に、あまりにマップが広すぎて画面外から撃ち殺されるケースもあるが、それも壁や遮蔽物を活用してクリアリングすれば、ちゃんとマップ全域を把握できるように作られているので、むしろ攻略の幅を広げていると言えるだろう。

 

難しいのでなく、理不尽なだけ

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ただし、攻略の幅は格段に狭くなった。

例えば、前作のプレイヤーは様々な能力を帯びたマスクを装着して、独自の攻略を見出すことが出来のだが、

一方、本作ではプレイアブルキャラはほぼ固定で、前作のような選択肢はない。

それだけならまだしも、大抵のキャラクターの能力は「弱い」。記者を操作するシーケンスでは銃が使えず、ほとんどのマスクも武器が拾えないとか、間接的な弱点を抱えている。

特に兵士を操作するシーケンスは酷く、武器が変更できない上に、ほとんど弾薬を補給する機会がなく、しかも銃弾でないと倒せない敵が大量に配置されていたりする。

せっかく銃も使えるようなレベルデザインにしておいて、どうして銃縛りプレイを強制させられねばならないのか。

プレイアブルキャラの固定化と弱体化により、このゲームはジグソーパズルのように攻略の幅が狭い作品になってしまった。

 

確かに、前作にも一部プレイヤーの能力を制限するシーケンスがあったが、大なり小なりストーリー上の演出も兼ねたものが多く、数も少なかった。(Bikerシーケンスはエピローグみたいなもんだし)

ところが、本作ではデフォルトで何かしらの制限が加えられ、ストーリー自体は中々に興味深いものの、具体的にゲームプレイと連動する演出は少ない。

要するに、演出やストーリーで飾ることすらせず、ただひたすらに理不尽な縛りプレイを強要されるのであり、このフィールは「難しい」というより「理不尽」に近い。

 

だが、これですら中盤までの話。Act5辺りからは敵の物量と装備の制限を厳格化し続けたことで、解答は一つだけだと言わんばかりの、ADVのようなゲームプレイとなる。

マップは恣意的な一本道の構造となり、悪意しかないような敵の配置と相まって、あとはAIの馬鹿さを利用したハメ技による、非常に地味な、それでいて退屈な攻略を強いられる。

後半だけ切り取って評価すれば、完全に「駄作」と言ってしまって良いだろう。

 

もはや続編ですらない

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言わずもがな、私は前作『Hotline Miami』のファンである。ストーリーとBGM、アクションは全て新鮮で魅力的に映った。

だが、本作を遊び続けることで、一部の欠点は前作からそのまま引き継がれたものも多いように感じた。

詳しいことは今後発表する予定の拙稿を考にしてもらうとしても、劣悪な操作性や間抜けなAIといった、前作の不満点が改善されず、むしろそれを「仕様だ」と言わんばかりにハメ技を奨励することは非常に残念だ。

 

また、本作の最も致命的な部分は、前作と比べて改良された部分、追加されたコンテンツが、(少なくともゲーム部分に関して)ほぼ皆無であるという点である。

本作は続編と銘打っておきながら、新たな演出やギミックがほとんどない。一部マスクは追加されたものの、二人一組のマスク以外はほとんど新鮮味を感じさせず、武器や敵兵の種類もビジュアル以外は全く変わっていないのだ。

つまり、どこまで遊んでも「追加ミッション」以外の何者でもないのであり、ゲームプレイの中に新たな攻略を試す機会も、ひいては「面白さ」が発生することも決してない。

私が唯一新鮮味を感じたのは、優れたサントラと興味深いストーリーぐらいである。

(別に新アイテムを追加すればいいといものではない。とにかく前作から変化のないゲームプレイである以上、せめて同じ質のゲームプレイが欲しいということ)

 

嫌われる続編というのは数あれど、多少なり努力の形跡が見られれば、擁護しようもある。

「あんな武器を追加しなければいいのに」「前作ほどに洗練されてないな」などと批評される続編は、少なくとも「あの名作の続編の割には」という前提、プレッシャーありきのものなのだ。

しかし、ほぼ何も追加せず、何も改善するつもりもないとなれば、もはや続編とすら言えないのではないだろうか。本作の最も致命的な欠点はここにある。

それどころか、本作は新しい何かを追加する代わりに、武器やルールを制限することでしか、ゲームプレイを実現出来なかったのだ。そんな出涸らしに付き合えるほどに寛容なファンは多くない。

 

本作は、「『Hotline Miami』という名作の続編にしては」つまらないのではない。そもそも、本作は続編の定義を満たしてすらいない。「続編未満」。その前提で辛うじて及第点を与えられるレベルでしかないと思う。

それでも、本作は確かに面白い。見下ろしシューター、過剰なゴアとサイケな雰囲気、シンセ中心のサントラ、シリアスなストーリー、歯ごたえのあるレベルデザイン。どれも希少な要素でありながら、中々需要は満たされない。だからこそ、それらを全て手中に収めた本作は実際面白かった。

この要素に飢えていて、相当のストレスに耐えられる人なら、手にとって損はないと思う。

(でもサントラとストーリーは最高なので、そこだけ抜き出した記事を後日でも記するかもしれない。)

 


"Roller Mobster by Carpenter Brut - Hear the world’s sounds"