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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【ネタバレあり】『Hotline Miami 2: Wrong Number』のストーリー考察 間違ったのは誰だ?

 

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前回、ボロクソに叩いてしまった『Hotline Maimi 2』だが、ストーリーはむしろ最高に盛り上がったものになっている。

まだまだ把握できていない箇所はあるかと思うが、とりあえずこのゲームから伝わった内容を適当にまとめていきたいと思う。

(※フルスロットルでネタバレあります!)

 

間違った(Wrong)のは誰だ?

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前作、『Hotline Miami』のストーリーを要約すると、平凡な若者(プレイヤーの分身)が次々にロシアンマフィアを襲撃するが、実は途中から主人公の妄想にすり替わっていた。という話だ。

そこで、ゲームは我々に問いかける。「仮に妄想であっても(ゲームであっても)、暴力を振るうことは好きか?」と。

だが、このメタフィクション的なストーリーテリングは、もう『Bioshock』から『メタルギア』に至るまで散々語られてきた話で、少し陳腐な内容だったのは事実なのだ。

 

ところが、本作『Hotline Miami 2』は、ちょうど正反対のストーリーを描く。

前作の「プレイヤー vs ゲーム」という構図に対し、本作ではプレイヤーでなく、世界が狂気に陥る様が描かれるからだ。

本作では、複数の主人公による群像劇、という形式でもって、どこか壊れてしまった架空のアメリカを俯瞰することになる。

(ちょっと『パルプフィクション』っぽい)

 

マイアミを見守る二人の善人

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プレイヤーは様々な主人公を次々に操作していく。

刑事、記者、映画監督(The Pig Butcher)、ロシアン・マフィアのボス(The Son)、その手下、自警団(The Fans)、アメリカ兵、WASPのアメリカ人(Jake)、そしてキーパーソンRichterらだ。

ここで一つ、彼らの共通点を見いだせる。それは、彼らが殺しのプロであることだ。

前作の主人公、Jacketは一般的な若者だった。愛国心に熱狂しているとはいえ、ホームレスを殺せば吐くし、警察を殺すことは出来なかった。

だが、本作の主人公たちは、何の躊躇もなく殺人を犯すことが出来る。むしろ殺人を生業とする人間だ。前作で「人を傷つけることは好きか?」と自問自答するように暴力と向き合うことはなく、むしろ「殺す」ことを前提として話は進んでいく。

 

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ここで、プレイヤーはある種の疎外感を覚えるはずである。前作でアレほど悩んでいたのは何だったのか。どうして彼らは平然としていられるのか。

だが、ここで輝くのが「記者」ことEvanのシーケンスだ。

Evanのシーケンスでは特殊な制約が課され、プレイヤーは銃やナイフを装備できない代わりに、敵を気絶させることが出来る。つまり、唯一人を殺さずとも進めるシーケンスなのだ。(ちなみに、二人敵を殺すと、服を脱いで銃を使えるようになる)

Evanは前作でJacketが行った凶行を追跡すべく、マフィアや刑事Pardoに接近する。それがいかに危険であろうとも、「暴力」と戦い続ける。彼はこのゲームで唯一、主人公らしい人物だ。

 

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また、もう一人の主人公、Pardo刑事の活躍も面白い。

彼はこのマイアミにうんざりする刑事で、マフィアや愛国者の両方と戦わねばならない人間である。

この殺人とドラッグに溢れたマイアミを見て、彼は落胆する。それと同時に、犯罪撲滅のためといえ、彼らと同じように暴力で人間を制する自分にもまた、ある種の失望を抱いているのだ。

彼は「Death Wish」チャプターにて、追い詰められた少年たち「The Fans」を射殺し、こう言い放つ。「明日は我が身だ」と。

彼はさしずめ『真昼の決闘』の保安官といった立ち位置だろう。

 

暴力が世界を包む

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ここまではAct3までの流れだが、次のAct4から話は大きく転換する。いよいよ、「間違った世界」の正体が見えてくるのである。

突如、舞台は1985年のハワイへ移行し、訳もわからぬうちに戦場でソ連軍と交戦するよう指示を受ける。

だが、何故1985年のハワイで彼らはソ連軍と戦争しているのか?プレイヤーは混乱するだろう。

 

ここで、実は『Hotline Miami』の世界観が、我々の住む世界とは異なる、パラレルワールドであることを理解できる。

前作で、何故これほどロシアンマフィアがいるのか?と疑問を抱いた人も多いだろう。そもそも、何故こんなに殺人事件があって平然としていられるのか?とも。

その疑問は、この「ハワイ戦争」という架空の戦争によって説明される。このゲームは『Fallout』のように、最初から架空のアメリカを舞台としていたのだ。

 

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そして、明らかに「綻び」が生じたアメリカを舞台に、マフィアたちの激戦が始まる。

マイアミのそこら中にマフィアが闊歩しており、もはや修羅の国と化したこの国は、ドラッグと暴力に満ちていた。

そして、アメリカの大統領にまで「暴力」が及ぶと、核の炎が世界を包み、エンディングを迎える。

引退したマスクの男、Richterは鶏頭にこう語る。

 

「こうならずに済む方法って、あったのか?」

「今となっちゃ、誰も変えられないよ」

「なんだ、もう戦わなくていいわけだ」

「物分かりがいいね」

 

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冷戦、マフィア、愛国心・・・ アメリカから溢れ出るあらゆる「暴力」が、徐々に綻びを作り始めた。

「間違えたアメリカ」は、ホッブズが予見した「万人の万人に対する闘争」を体現した国である。そして、ソドムの町のように、天から降り注ぐ光と炎によって消失するのだ。

 

決して前作の二番煎じではなく、むしろ真逆の視点から新たに「暴力」の本質を描き出した本作は、(少なくとも脚本は)実に優れた続編と言えるだろう。

 

簡易Q&A(間違ってたらごめんね!)

 

Q:あの鶏頭って誰?

A:恐らく人間の良心。シークレットレベルでは、「君たちには理解できないよ」と言っている。

 

Q:最後のマフィアの幻覚では何が起きたの?

A:アメリカ大統領を暗殺した。チャプター名は「Take Over(乗っ取れ)」

 

Q:何でハワイで戦争してんの?

A:このゲームのアメリカは架空の歴史を歩んでいるから。

 

Q:Jacketは?Bikerはどうなった?

A:両方生きてる。Jacketは警察に勾留中で、Bikerは引退してEvanと会話するシーンあり。

でも、最後にRichterが「どうしようもない」って言ってる辺り、このゲームでは彼らの暴力さえ些細なもの(ありふれたもの)として描かれている。