ゲーマー日日新聞

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【悲報】俺氏『Alan Wake: Americans Nightmare』でガチ泣きする【ネタバレ】

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素晴らしいゲーム、というのは本当に多種多様に存在しているが、「泣けるゲーム」とくると、意外と思い当たらない。

そんな中、私が遊んだ『Alan Wake: American's Nightmare』(以下『AW:AN』)は、それはもう、「泣きゲー」だったのである。

今回は、その『AW:AN』のストーリーを伝えていこうと思う。

言うまでもなく、最後までネタバレするので、まだプレイしてない人は是非今からでも遊んで欲しい。その価値はあると保証する。

 

作家が抱く恐怖

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アランウェイクというベストセラー作家がいた。

だが彼はスランプに陥り、ベストセラーというプレッシャーにも押しつぶされていた。そのため、なんとか『Departure』という小説を完成させた所で、そのストレスの余り、「Mr. Scratch」というもう一つの人格を産みだしてしまう。

彼は自分の「悪意」そのものだ。売れっ子作家の傲慢さ、アーティストとしての狂気、紛れも無く「アラン」という人物の一面が、「Mr Scratch」なのである。

一方、前作でアランが自らの小説に創りだした主人公、「アラン」というキャラクターは、自分の「善意」を象徴している。

妻のために光を掲げ、闇に向かって猛進し、決して意志を揺るがすことはない。

 

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アランという一人の作家に宿る、二つの魂。「アラン」と「Mr. Scratch」。

「Mr. Scratch」は「作家」としての万能の権力を用いて、ゲームのルールを変え、敵の配置を増やすなどして、「登場人物」としての「アラン」を叩き潰そうとする。

『AW:AN』の話は、要するに一人の作家の葛藤をメタファーとして描いたものである。

悪意と善意に間をさまよう作家。その葛藤は、不毛の砂漠をループするゲームプレイ自体に強く表れていると言えよう。

 

すげえ鬱になるラジオ

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そう染み染みアランに感情移入しているプレイヤーに、一つ致命的にキツイ情報がラジオから流れてくる。

それはバリー(親友)やアリス(妻)が、自分の道を歩んでいる情報だ。

 

ラジオMC「今日はゲストに、バリーウィーラー氏をお呼びしたよ」

バリー「やぁ、よろしく」

MC「あなたは確か、謎の疾走を遂げたアラン氏の担当でしたよね?」

バリー「あー、えーっと・・・ 今日はオールドゴッズの話をしましょうよ。私が担当してるバンドなんですが・・・」

 

なんと、自分が「Mr. Scratch」と精神的に戦っている間、親友バリーは自分の担当を辞め、他のバンドをアシストしていたのである!

これはかなり堪える。

自分が迷ってる時に、友達に後ろから抜かれる焦燥感。

恐らく、アランにとっても、自分がスランプなのはまだよかったのだと思う。

本当に恐れていたことは、それが原因で友達や彼女に愛想を尽かされることなのではないか。

 

中でも、一際キツイのがこれだ。

 

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MC「今日は写真家として有名なアリスウェイク

さんをお呼びしています!」

MC「既に写真家として有名なあなたが、今度は映画を撮られたそうですね?驚きました。」

アリス「私もです。全て友人のおかげです。」

 

自分が大ヒット作家と評された時、いつも側で支えてくれたアリス。

前作で書いた小説『Departure』で、最後に救い出す姫として描かれたアリス。

だが、アリスはアーティストとして、自分の道を歩み始めている。スランプの自分を置いて。

それを知ったアランの絶望と言ったら!そりゃ「Mr. Scratch」を生み出すほどに落ち込むだろう。

大ヒット作家の自分を差し置いて、彼女が先にデビューしてしまったのだ。正直悔しいし、悲しい。嫉妬もするだろう。

 

このように、マップの各所で流れるラジオこそ、本作最大のホラースポットであることは違いない。

前作で「支えてくれる友」「救い出すヒロイン」として描いたキャラクターたちが、一人の作家が向き合うべきリアルを描いたこの『AW:AN』では、それぞれアランの元から去っていくのである。

 

感動のラスト

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さて、本作がいかに絶望に満ちた作品かはご理解頂けただろう。

善意と悪意の葛藤。

そして友人や妻からも見放された。

 

ここで、一つの疑問が浮かび上がる。

それは、どうすればこのループを脱出出来るのか?どうすればこのゲームをクリア出来るのか?ということ。

もしこのループが、誰かの悪意に創りだされたものなら、その元凶を直接倒せばいいし、或いは誰かが助けてくれるかもしれない。

だが、残念なことにその望みはない。何故なら、創りだした原因は他ならぬ、アラン本人だからだ。

これの世界は葛藤のメタファーに過ぎない。「Mr. Scratch」も「アラン」も、最初から同じ自分であると明記されてある。

ならば、ここから脱出するには、「自分」を倒す必要がある。だが、どうやって?

 

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このゲームは「ガソリンスタンド→天体観測所→ドライブシアター」と移動する。

そして、ドライブシアターの最後で「Mr. Scratch」が現れ、「お前は俺の世界から逃げられねーんだよ!」と嘲笑って、世界がループする。

その都度、アランはドライブシアターを訪れ、時計を深夜に調整したり、ライトの位置を変えたりする。

だが、こんなことに何の意味があるのだろう。いくら小細工をしても、ループを脱出することなど出来るはずもない。

ところが、最後のループにおける指示文は、こう書いてあった。

 

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「時間は真夜中。夏はそろそろ終わろうとしていた」

「フィルム・ノワールのポスターが見えた。赤い消火器がライトに照らされていた」

「そしてスクリーンにはアリスの映画が映し出されていた」

 

ああ、そうか。

プレイヤーはようやく、どうやって「自分」が作ったループに打ち勝つかを知る。

それは、自分が最も愛していた妻の、スランプの自分を置いて一人アーティストとして道を歩み始めた妻と、向き合うことだったのだ。

 

自分はアーティストとして地位を失い、支えてくれた妻が作品をアーティストとしてデビューした。

この時、アランが妻の作品と向き合うことが、どれほど辛かったか想像もできない。

自分の幼馴染で、面倒見のよかった女の子が、自分より高みにいることが、どれほど惨めか想像もできない。

 

だが、アランはついに決意する。

自分の最も愛する人と向き合うことを。

アランは映写機にアリスの映画をセットし、そしてスクリーンに光が映し出される。

そこに現れたのは、アランの悪そのものである「Mr. Scratch」。

 

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「よせ!やめろ!」

 

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映写機から放たれる「光」で、Mr. Scratchはバラバラになってしまう。

アランは、自分より優秀な妻アリスと向き合うべく、スクリーンを覗きこむ。

しかし、そこに映っていたのは

 

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アリスは、決してアランを見捨ててなどいなかった。

アリスが初めて作った作品、アーティストの才能を開花させた作品は、他ならぬ自分の夫、アランへの敬意を表したものだったのだ。

タイトルは「夜明け」。

長い夜の末に、アリスはついにアランと出会うという話だった。

もちろん、この「アリスとアランの再開」は、実現していないはずの「アリスの創作」。

アランが正気を失った時、アリスが描いた作品は、「アランと再開する願い」を託したものだった。

 

「本当にあなたなの?」

「ああ、俺だよ。」

 

暁光を背後に、抱きしめ合う二人。

そして真っ暗なエンドロールを迎える。

曲の名前は、「Watching The Sun Coming Up」。

長い、本当に長い夜は、ついに終わりを迎えたのだった。

 


Alan Wake's American Nightmare: Ending - YouTube

 

 

これ、前作でアランが「妻を救う!」という作品を作ったことを考えると、すっごい泣けませんか。やっぱり相思相愛だったんですけど、なんというか、アーティストがお互い作品を出しあって、愛を確かめ合うんですよ。

で、Ed Harcourtの「夜明けを見つめている」です。今回ばかりは、Remedyにガツーンとやられましたね。脚本もすごいけど、それとピッタリ足並みそろえる絶望的なゲームプレイも凄まじい。そりゃ泣くわ。