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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Medal of Honor(2010)』の感想やレビュー ドキュメンタリー的シューター

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ゲーム概要

大人気FPS『Call of Duty』シリーズの生みの親である、『Medal of Honor』シリーズの続編。

第二次世界大戦から現代のアフガン戦争へ舞台を移し、特殊部隊の一員としてタリバン掃討作戦へ参加する。

 

現実の紛争を描く

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本作は発売時期が『CoD:BO』と被ったこともあり、巷では師弟対決と評判になった。

だが結果というと、当時の『CoD』が飛ぶ鳥も落とす勢いだったのもあり、売り上げ的な勝敗は『CoD:BO』が制したようだ。

しかし、シングルプレーを丁寧に遊ぶと、このゲームが何の打算もなく『CoD』と対決したわけでないことが見えてくる。

では、『CoD』になく、『MoH』にあるものとは何か? 実は『MoH』には「実際の戦争を描写するドキュメンタリー」としての側面があるのだ。

 

『CoD』といえば、「映画的」と形容されるドラマチックな脚本と、派手な演出が有名だ。

元々現実の戦争を描くシリーズだったのだが、『CoD4』のヒットを受けて、ハリウッドライクな架空の現代戦へ、『CoD』は大きく方向転換したのである。他のシューターも追従するように、多くの類似作が架空の現代戦を描いた。

そこに、改めて現実の戦争を描き、歴史のドグマを我々に叩き付けた作品、それが『Medal of Honor』なのである。

 

渓谷に取り残された兵士

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本作で描かれるのは、実際に2001年から発生した、アメリカ軍によるアフガニスタン侵攻の実態である。

9月11日の同時多発テロを契機に始まる、国際テロ組織アルカーイダへの報復を誓うアメリカと、そのアルカイーダに依存したターリバーン政権の戦争。

こう文字に表しても、不明瞭で、先行きの見えない戦争だ。それは本作も同じで、とにかく「進軍している」感覚が希薄である。

前作『MoH:Airborne』なら、一歩一歩と終戦に向かって進軍することで、エンディングに向かっていく達成感を確実に感じられた。

しかし、本作では、史実同様にアフガンの渓谷を彷徨うこととなる。

ヘリを使い、無人機を使い、ようやく隠れた敵の司令官を倒しても、それは幹部の一人に過ぎない・・・そんな話が延々と続く。戦争が終わってるのか、むしろ拡大してるのか、それは特殊部隊員であるプレイヤーにすらわからないのだ。

 

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しばしば、本作は登場人物が多く、話がややこしいという批判を受けた。

だが、それこそ本作の狙いなのだ。アフガニスタンという不毛の地へ進軍するアメリカ軍と、目的のない軍事作戦に各所で振り回される兵士達の悲哀こそ、本作の描く現実なのだから。

「不毛な軍事作戦」と言えば、『Spec Ops: The Line』が有名であるが、それは脚本とメタファーの幻想的な構造による狂気であり、現存するマップを再現した高いリアリスムからなる、純粋な「アフガニスタン紛争」の訴求力は、『CoD』『Spec Ops』のそれとは一線を画す。

最後のミッションに至っては、映画『ローン・サバイバー』でも描かれた、現存するレッドウィング作戦をモティーフにしている程だ。(なんと、映画より先にレッドウィング作戦を描いたのだ)

今自分がアフガンのどこにいて、いつになれば作戦が終わるのか。不毛な銃撃戦を繰り返す中で、プレイヤーは実際に犠牲になった兵士たちの不安に共感するだろう。

 

映画のオマージュではなく、ゲームの力だけで世界を描く

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前述したとおり、史実の戦争をゲームで再現することは珍しいことではない。

だが、第二次世界大戦を描いた前作『Medal of Honor: Allied Assault』の場合、その表現力の弱さ故に、どうしても戦争の恐怖を感じるに至らなかった。

むしろ、あのシーンが印象に残ったのは、『プライベート・ライアン』という偉大な映画のおかげだろう。あのオマハビーチは、戦争ではなく映画を再現していた、といった方が近い。

これは、『MoH:AA』に限ったことではない。『CoD』さえ『Enemy at the Gates』のような戦争映画を、わずかなポリゴンで必死に再現していたのだ。当時の戦争ゲームは、映画の二次創作のような立場に甘んじる他なかった。

 

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(引用:『Medal of Honor: Allied Assault(2002)』)

 

だが、本作では、映画のオマージュで妥協することなく、正面から戦争を描き切った。

とりわけ、アフガニスタンの描写は完璧で、中央アジアならではの澄んだ空気感は素晴らしく、戦争さえなければ歩き回りたいほどの美しさ。ロケーションも多様に用意されている。弟分『CoD』からも演出法を学習している点も好印象だ。

また、本家『MoH』らしく、シューター部分もよく作られている。例えば、現代風に銃の反動が少なくなっているが、代わりに遠距離戦が多いバランスなど、ぬるすぎないように考えられている。

特に、アフガンらしいむき出しの岩を天然の遮蔽物として活用しながら前進するのは、これぞアフガン紛争といった感じで、リアルながらも面白い。

 

唯一欠点を挙げるとするなら、とてもリアルな内容なのに、体力は自動回復という点。確かに『OFP』みたいにすると別ゲーだし、テンポよく進めることで純粋に「戦争」を俯瞰できるメリットもあるのだが、やはり違和感は拭えなかった。

なんにせよ、「現実の戦争を描いた」という視点で楽しむと、本作は他とは異なる味わいが見えてくると思う。ゲームのドキュメンタリー的手法が注目される中、『MoH』の価値は一層増すことだろう。