ゲーマー日日新聞

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【評価】『Call of Duty: Ghost』の感想やレビュー マルチプレーに引きずり出された暴力性

 

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「This is Survival of the fittest This is do or die This is the winner takes it all

 (これは適者生存だ。生き残るか死ぬか。勝者が全てをもぎ取っていく。)

  -Eminem, "Survival"」

 

(※マルチプレーの批評になります)

 

拒絶された『CoD』

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今回紹介する『Call of Duty: Ghost』がファンに受け入れられたとは、売上的にも評判的にも認め難いものがある。

FPS界のスターであり、シリーズ10作目にもなる『CoD』の新作だった『Ghost』は、何故拒絶されたのか。

そして同時に、このゲームは何が面白かったのか。一人のファンとして言及したい。

 

まずは、世間一般で述べられている本作の欠点を挙げてみよう。

本作への批判は主に、

 

①広い上に入り組んだマップ

②UAVの弱体化+UAV無効化Perkの強化

③撃ちあう場面が少なく、立ち回り重視のゲーム性に

 

等によって、『CoD』にあった爽快感がごっそり削れて地味になったことが、主な不満となっていると思う。

では、これらは本当にただの「ミス」故の仕様なのだろうか?

私はそうは思わない。むしろ、IWは新たな『CoD』の可能性を掘り下げた、「外伝」を作ろうとしたように思えたのだ。

 

「索敵」により大きくリアル寄りになったGhost

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以前ブログでも言及したが、本作で10作目を迎える『CoD』にとって、マンネリ化という大きな課題が立ち上がっていた。

『Call of Duty 4』の爆発的なヒット以来、ほぼ毎年新作を発売し続けてきたこのシリーズは、少なからず開発のアイディアが枯渇し、とりわけ『CoD:MW3』辺りから、消極的な続編だと非難はあった。

その打開策として、最新作『Call of Duty: Advanced Warfare』が、強化骨格を活用した全く異なるプレイフィールを提供したことは記憶に新しい。ピョンピョン飛び跳ねるFPSは、従来の『CoD』は考えられない「マンネリ打破」の秘策だった。

 

だが、その前作に当たる『Ghost』もまた、同じくマンネリ化を防ぐために大きく舵を切った作品なのである。

まず、本作ではプレイヤーに索敵を率先させるバランスになった。

これまでのシリーズでは、敵がレーダーに映る「UAV」によって、各プレイヤーは互いの位置を即座に把握して戦うことが可能だった一方で、

『Ghost』では、「UAV」が「SAT COM」と呼ばれる、「UAV」の半分の効力しか持たないストリークへ置き換えられ、実質的に弱体化した。

また、マップが広く複雑になったことにより、プレイヤーはリスポーンして即座に銃撃戦に突入するのでなく、冷静に「敵が今どこにいるのか」ということを念頭に置いて立ちまわる必要も生まれたのだ。

 

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以上の調整により、本作は大きく「リアル系」な作品へと転向した。

真正面からバンバン撃ちあう「スポーツ系」ではなく、索敵と位置調整を同時に行い、敵を一方的に仕留める能力が求められるようになったと言えるだろう。

さて、この調整には「『CoD』らしいスピード感が失われた」という批判の声がある一方、いくらか既存の欠点も補完している。

 

まず、突発的な撃ち合いが減ったことで、ちゃんと戦術を立てて戦える点が良い。

前作までのシリーズは「反射神経ゲー」と呼ばれるほどに、近距離の戦闘が多かった。遮蔽物が多いことに加え、マップのルートがガチガチに決められていて、上記のUAVも含めて敵の位置と動きをある程度パターン化出来てしまうのである。

更に、本作では仲間との緊密な連携を求められるのも楽しい。UAVも使えず、マップが開けてる状態で、プレイヤーが頼れるのはチームメイトだけ。

マップ上で、味方がどこを向いてるか、どこで倒されたかを確認しつつ、集団の歩調を調整して進軍する感覚は、前作までにない面白さだ。

 

Survivalを体感するロールプレイ

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それでもまだ、前述した特徴は「好み」の問題だ。実際、『CoD』の持ち味であるスピード感のある戦闘を好む人が、このコンセプトを嫌うのも無理はない。

しかし、これらが本作が描く独特の「体験」と結びつくことで、今までの『CoD』にない魅力になるのだ。

 

従来の『CoD』の路線は、とにかく「娯楽化」にあった。

『CoD4』でAK47やM4を使っていたプレイヤーに、『MW2』や『BO2』ではハイテクな装備が与えられ、兵士たちは徐々にスーパーソルジャー化を遂げてきた。

一方、この『Ghost』はどうだろう。確かに衛生砲やレーダーは最新の装備だが、実はその装備を供給するはずのアメリカは、とっくに半分崩壊してしまっているのである。

 

確かに、『MW2』ではアメリカ本土で決戦するシチュもあったが、それも短期決戦の話。本作ではアメリカは「既に」敗北寸前で、キャンペーンに登場する主人公らも、中盤まではゲリラ戦で精一杯、という状況だ。

故に、マルチプレーのマップは大半がアメリカ本土。加えて戦争の長期化により建物は半壊、町のあちこちに「行方不明者捜索中」のビラが巻かれ、「助けてくれ!」のグラフィティアートが描かれている。

以上から、本作の世界観は自然主義文学のように殺伐としており、コーマック・マッカーシーの小説のような無常感が漂っているのだ。オープニングソングとして採用された、Eminemの『Survival』は、実にこの雰囲気にマッチしていると言える。

既に滅亡した都市で、今日も今日とてアメリカ兵は抵抗する。前作までの、欧州や中東といった他国の敷居を跨いでまで戦っていた余裕は、もうどこにもないのだ。

 

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そう、本作が描くものは、無情の殺し合いであり、泥臭いゲリラ戦である。

ここで、新たに導入した「女性兵士スキン」やキルストリーク「Dog」が、この魅力を一層引き立ててくれる。

ここではマッチョイズムを披露する暇はない。犬だろうと何だろうと、使える兵器は動員され、性別に関係なく、戦う意志のある人間だけが生き残れる。

一見意味のなさそうな、リーンやスライディングといったアクションも、この無情な白兵戦を体感することに助力するし、

アメリカと南米が舞台でありながら、アジアやヨーロッパの武器が雑多に揃っているのも、切羽詰まった総力戦を見るようで虚しく感じる。

 

このように、廃墟でゲリラ戦をする一人の兵士としてロールプレイするように遊んだ時、本作の欠点は魅力に映るのではないだろうか。

もちろん、このような「体験」を抜きにして、単純な競技として遊んでも、索敵や連携プレーの面白さは保証されている。

それでも、地を這うように銃を抱え、足音と銃声に耳を立て、泥を啜りながら戦場を駆ける体験は、今までの『CoD』に実現できなかった、マルチプレーに引きずり出されたナラティブそのものだった。

そして、このロールプレイに特化したコンセプトもさながら、マップや銃器のデザイン、ゲームバランスの調整、追加要素との親和性など、各要素を絶妙に繋ぎ止めた開発陣の連携も素晴らしい。

 

ただし、本作が批判されたのも相応の理由がある。

まず、このコンセプトをプレイヤーに伝えるプレゼン力が欠けていた点、

ゲームルールの追加など、全体的なデザインへの思慮が欠けており、中途半端だった点、

そして、Ping表示のような抜本的なシステムと、盾C4のようなFPSをスポイルするような装備への調整が、それぞれ改善に至らなかった点だ。

以上から、私自身も本作に不満を抱いているのは否定しない。だからこそ、久々に正面から「戦争」を描いてくれた、秀逸な外伝の続編に期待したいところである。