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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Tropico 5/トロピコ5』の感想やレビュー 名作RTSのモンタージュ

ゲームレビュー

 

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ゲーム概要

Heamimont Gamesが開発した、独裁者としてカリブの孤島を運営するストラテジーゲーム。発売日は2014年5月23日(日本語版は2015年4月23日)。

植民地~現代のカリブを再現したリアルな世界観とブラックユーモア、そして戦争ではなく内政に特化したゲーム性が特徴。

 

私がプレジデンテだ!

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南洋の孤島に訪れ、「青い海、白い砂浜、ここは常夏の楽園だ」 ・・・と喜べるのは、欧米の富裕層だけである。

現実のカリブといえば、労働者がモノカルチャー経済に喘ぎ、家族は廃屋寸前のバラックで寝食を共にし、人民は独裁者の気まぐれを何より畏れるのが現状。さすがに楽園と評するには厳しいものがある。

さて、このゲームはそんな生々しいカリブ諸島の生活を見事に落としこんでいる。

何気ないアパートの一棟や、農家の備蓄倉庫まで綺麗に描かれ、農民の一人一人が軽快に動く。本作ではテクスチャを一新したこともあり、その生き生きとした南米の姿に、誰もが心躍らせるだろう。

 

そこに君臨するは、プレジデンテことプレイヤーだ。

プレイヤーは道路網や生産施設を整えて島民たちの雇用を確保する他に、娯楽施設や住居を与え、時には憲法を発布したり外国の軍隊と戦わねばならない。

とはいえ、基本は内政さえこなせば問題ないし、操作感は直感的なものなので、ストラテジー初心者でもすぐゲームに没頭できるだろう。

何もない島がプレイヤーの意志で徐々に豊かになっていく様子は、ストラテジーらしい達成感を与えてくれる。

 

交通網と生産形態のマトリクス

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本作は一見イージーで、他のストラテジーに躓いた人にもオススメできるというのは、前述した通りだ。

それでも、本作は一度プレイすれば何十時間とハマってしまう魅力があり、決して底の浅さを感じさせない。それは本作が、名作RTSのエッセンスを少しずつピックアップしたからだと思う。

 

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本作では、まず「交通網」がとても重要だ。

農場や採掘場で得た物資は、そのまま自動で利益となるわけではなく、ちゃんと港まで運んで船に載せて、初めて外貨として利用できるし、労働者たちも通勤などの移動には車を使う。

なので、本作では道路や輸送施設といった交通網が何より重要になってくる。プレイヤーは無駄のない道路を島に張り巡らせ、それに応じて施設や住居を建築する必要があるのだ。

これは正に、『シムシティ』で常に交通網を意識しながら計画的に町を作る面白さに似ている。

『シムシティ』とは短絡的に言って交通網のゲームであり、ただ施設をスパムする代わりに、渋滞という概念を設けることで、リアルな町作りに合理的な評価を与えた作品なのである。

 

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一方、本作には複雑な「生産形態」を維持することも重要だ。

このゲームでは、ただ農場を作るだけでは、十分な利益は得られず、それに応じた工場などで加工してやる必要がある。モノカルチャー経済では決して国庫は潤わないのだ。

例えば、プレイヤーはタバコ農場に追加して葉巻工場を用意したり、木こり小屋には製材所をあてがってやることで、貿易でボロ儲けすることが出来る。これはまるで、『Stronghold』で農場と風車を同時に建設するようだ。

ただリソースを収奪するだけでなく、そこに手間暇を加えて更に膨張させることが、このゲームにおける経済の醍醐味といったところだろう。

 

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本作の面白い点は、この「交通網」と「生産形態」の二つがガッチリと組み合わさっていることだ。

本作のリソースは、港や空港に運んで外貨とする他に、農場から原材料を工場へ運ぶのにトラックを使うなど、「生産形態」を維持するのには「交通網」が必要となる。

だが一方で、道路やガレージを建設するにはコストがかかり、しかも交通網自体は何の利益ももたらさないので、いくら道路を増やしても島の経済は赤字になってしまう。

また、仕事に就く労働者たちもまた、自分の車で家から通勤している。そのためには、娯楽施設や住居も、ちゃんと職場と結ばねばならないのだ。

このように、本作は常に「交通網」と「生産形態」を同時進行で建設する必要がある。

プレイヤーは、常にその取捨選択に悩まされながら、限られた資金をどう割り振るか考えねばならない。その上で、反乱軍や選挙といったイベントも突発的に起こり、プレイヤーの柔軟な選択が問われるのだ。

 

『Tropico』シリーズの醍醐味は、偉大な『シムシティ』と『Stronghold』のような過去のRTSのエッセンスを引き継ぎつつ、そこに「カリブ海」というユニークな世界観を与えた故の、合理的なデザインである。

模倣しながらも一級品、というと『アンチャーテッド』や『Dead Space』が思いつくが、本作は正にRTSにおける名作イミテーションではないか。

本作は私のお気に入りだ。内政好きのゲーマーから、ストラテジーは少し苦手だという初心者にまで、絶妙にフィットする面白さがある。

 

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あと肝心の『5』ならではの面白さだけど、マルチプレーは軍事ユニットの少なさもあって微妙。

でもシングルは、UIがひと通り改善された(たまに改悪あり)のと、テクスチャが綺麗になったのもあって、十分面白い。

あと、本作では同じ島を引き継いで色んなミッションに挑戦する(配置した施設とかもそのまんま)ので、適当に作ると後で面倒なことになる一方、一々最初から島を作らなくていい点でとてもテンポが良くなった。