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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Call of Duty: Black Ops』の感想やレビュー 愛さずにいられないNPC

 

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「私達は兄弟だ、メイソン。私達は同じなのだ。」

 

ゲーム概要

Treyarchが開発した『Call of Duty』シリーズの第七作目。

東西冷戦の中、主人公メイソンはCIAの一員としてソ連の陰謀を阻止すべく、ベトナムやキューバを奔走する。2010年11月9日発売。(※ネタバレあります)

 

やはりゴージャスな『CoD』

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ベトナム戦争、キューバ革命、ケネディ暗殺といった、冷戦における最もきな臭い要素を、これでもかとぶち込んだ新たな『CoD』、それが『Black Ops』だった。

本作は、CIAのエージェントであるメイソンが、化学兵器ノヴァ6を製造するソ連の将軍、ドラゴヴィッチの陰謀を阻止すべく奔走する物語が展開される。そこに、歴戦の兵士ウッズと、上官ハドソンが加わり、プレイヤーはベトナムやラオス、香港、キューバ、ソ連本土を股にかけ、化学兵器を追跡する。

とりわけ、ベトナム戦争を舞台にしたシーケンスは出来がよく、ベトナム軍と正面衝突するレベル「SOG」や、まんま『ランボー』を再現したようなレベル「PAYBACK」は、いつも通りのシネマティックで派手な演出を楽しめる。

 

とりわけ、本作が高く評価されているのは、ドラマチックな脚本だ。

ゲームを始めると、いきなり主人公は尋問室に放り込まれ、「数字の意味を教えろ」と問いただされる。最初はプレイヤーも主人公も混乱しているが、少しずつ回想を重ねることで、何故自分が尋問されているのか、誰に捕まったのかが明かされる。

今までの『CoD』にない、サスペンス調の物語が印象的だと高い評価を受けた。

 

「シュタイナー、クラフチェンコ、ドラゴヴィッチ、奴らに死を!」

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とりわけ、本作をプレイした者が口にするのは、プレイヤーを支えるNPCとして登場する「レズノフ」というキャラクターの魅力である。

まず、主人公メイソンは、序盤でソ連軍の捕虜となってしまうのだが、その収容所でメイソンを救うのが、勇ましい台詞と屈強な精神が印象深い、ヴィクトル・レズノフである。

彼はかつて祖国に忠誠を誓う兵士であったが、その活躍ぶりから軍の上層部、特にドラゴヴィッチ将軍らから敵視され、口封じのために強制収容所へと送られたのだ。

彼は祖国に裏切られたことで、将軍ドラゴヴィッチとその部下に復讐心を燃やし、メイソンに「奴らは死を与えねばならん」と訴える。そして同時に、たまたま放り込まれた主人公メイソンの腕を見込んで、アメリカ人であるにも関わらず、彼を高く評価する。

 

そんなこんなで意気投合した二人が、強制収容所を火の海に変えるレベル「VORKUTA」は彼の魅力が最も発揮されるシーンだ。

レズノフは常に主人公よりも前に立ち、「これが自由への第一歩めだ!」「武器を取れ、同志よ!」と囚人たちを鼓舞する。その上で、レズノフはメイソンへの特別な敬意と信頼をも見せる。

 例えば、囚人の一人が「レズノフ、このアメリカ人を信じるのか!?」と、アメリカ人であるメイソンへの不信感を露わにする。だが、レズノフはそこで躊躇いなく「命に代えてもいい。」と断固として答えるのだ。

ここで主人公のメイソンとプレイヤーは、ほぼ間違いなくレズノフに好意を抱くだろう。メロメロになるだろう。それからというもの、レズノフは様々なミッションに出現し、絶妙な話術と塩梅で主人公を褒め、進むべき道へと導いてくれる。(決して嫌味さは感じない程度に)

 

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確固たるヒエラルキーが顕在する軍隊を舞台とした『CoD』において、このレズノフのようなキャラクターは実に珍しい。前作までのプライス大尉やシェパード大将は、あくまで部下に命令を与えんとして、「あっちに行け」「あいつを殺せ」と、厳しい口調でプレイヤーを急かしたものだ。

一方で、レズノフは「褒めて伸ばす」タイプのNPCだ。それも、『Half Life 2』のアリックスのように、お世辞地味た鬱陶しさはなく、NPCとして常にプレイヤーを先導し、アシストし、そしてここ一番の窮地を協力して切り抜けた時、「さすがだ我が友よ」と評してくれる。

これまでのゲームを振り返っても、レズノフ程に魅力的なキャラクターはそうはいない。彼の魅力だけで、本作のストーリーは十分ユニークなものになっている。

 

愛さずにいられないNPCを作る試み

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だが、最後までプレイした者なら知っている通り、レズノフは人間ではない。彼はメイソンの創りだした妄想だったのだ。

それを裏付ける証左として、レズノフは何発被弾しようと決して死ぬことはないし、プレイヤーの後ろを警戒していたはずが、何故か前方にワープしていたりする。

この事実を上官ハドソンから告げられるのが、終盤のレベル「REVARATIONS」だ。自分を命令し続けてきた数字が頭から離れず、レズノフの影を求めて彷徨うこのシーケンスは、多くのプレイヤーが哀れなメイソンに同情したことだろう。

 

ところが、この「レズノフ=幻想」という構図は、果たしてプレイヤーと無関係なものだろうか?私はそうは思わない。

端的に言って、「レズノフ」とは、あらゆるゲームに存在する。つまり、プレイヤーに何らかのインセンティブを与え、誘導し、ゲームを楽しんでもらうための、「NPC」である。

だが実際、NPCは人間ではなく、ラグドールの一つに過ぎない。「レズノフ=幻覚」というのは、そっくりそのまま、「NPC」という概念の虚しさへのアイロニーに思えてくる。

「数字」もまた然りで、これはそのまま、ゲームにおける「命令」や「目標」といったものを抽象化したものではないか。メイソンが「数字が頭からはなれない!」と苦しむシーンがあるが、そもそもプレイヤーは「数字」の正体を考えない上に、数字に従い続けているのだ。

 

ただここで、Treyarchが安易な嘲笑、よく言って「なぞなぞ」地味たテクスト解釈が、『CoD:BO』の魅力だとは到底思えない。

まず素晴らしいのは、先述したように、レズノフが実際に魅力的なNPCだという点だ。

私にとって、本作最大の魅力が、この勇ましく、またドラマチックで、ちゃんとプレイヤーに話しかけてくれるレズノフという男であることに違いない。

それは開発側にとっても百も承知で、「最高のNPCとゲームを遊べる」という魅力を十分堪能させた上で、もう一段落の「NPC=幻影」というメッセージを引っ張ってきているのだ。

(魅力的なNPCといえば、『Portal』のGladosもそうだし、『CoD』シリーズのキャラクターは皆かっこいい。また『DAIKATANA』というゲームには・・・おっとこんな時間に誰か訪ねてきたようだ)

 

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(「Reznov」を演ずるゲイリー・オールドマン)

 

さらに言えば、「レズノフ=幻想」という布告を受けたメイソンの成長もまた、本作の脚本の醍醐味だ。

まず第一に、レズノフと対比的な人物として、ハドソンが登場する。レズノフが常に「奴らに死を」とメイソンを動かし続けた一方で、序盤から尋問官として「数字の意味を教えろ」など、メイソンに自分の頭で考えさせようとした厳しい上官だ。

そして遂に、メイソンがレズノフへの依存をやめた時、自分で決断する。「送信元は、ルサルカ号だ。」彼は命令でなく、自分の意志で戦場に赴く。

ここで上手いのがハドソンの人物像だ。最後、ドラゴヴィッチと対決する前に「洗脳は解けているんだろうな?」とメイソンに聞き、彼が自分の意志で行動するのだと伝えると、ハドソンは「"We" gonna finish this」と答えてくれる。

本作は、昨今流行りの「ゲームの不毛さ」を訴えるだけの陳腐なサスペンスに留まらず、今後の展望を描いているのだ。

 

いずれにせよ、本作のストーリーは、最高のNPC「Reznov」の人物像を中心に、それを取り囲む豊かなシチュエーション、そして数奇な脚本が、今までの『CoD』にない主観的でドラマチックなストーリーを実現した。

まだプレイしてない人がいれば、今からでも遅くない。このシングルプレーは実際にプレイして、実際にNPCと一緒に過ごすことで、初めて魅力が伝わると思う。

 

 

(因みに、最後のオチは、メイソンはCIAの極秘命令でケネディを殺した、というものだと思う。

元々、一番最初のピッグス湾事件は、史実でCIAの企画だったのだが失敗に終わり、そこでケネディ大統領の怒りを買ってCIAが解体させられる可能性が浮上した。現実でも、ケネディ暗殺の主犯はCIAの陰謀という説が一部では強い。)