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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Call of Duty: Modern Warfare 2』の感想やレビュー バランスブレイカーの狂想曲

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開発:Infinity Ward

対応:PS3/Xbox 360/Steam

発売:2009年11月10日

 

ゲーム概要

Infinity Wardから開発された、『Call of Duty』シリーズの第六作目。無差別テロによる報復として侵攻するロシア軍との架空の戦争を描く。

数々の賞を受賞し、売上も記録更新した一方で、マルチ・シングル共に物議を醸す内容となっていた。

 

シリーズの異端者

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『Call of Duty』も、次に発売される『Black Ops 3』で12作目。FPS史上最大の長寿シリーズにして、最も有名なFPSの一つと言える。

私もまた、『CoD』のファンだ。派手なシングルプレーに、手頃なマルチプレーと、とにかくエンターテインメントとして完成された本シリーズは、そのカジュアルさと同時に他のゲームシリーズによって置き換わることのない、独立した精神を貫いてきた。

 

中でも、2009年に発売された本作『Modern Warfare 2』は、『CoD』の全盛期だったと言っていいと思う。売上的にもそうだが、本作と『CoD4』で培われたノウハウ、エンジン、ルール、そしてファンは、6年後の現代にいたるまで、ほとんど変わらずに受け継がれているからだ。

しかし、『MW1』を無条件に褒める人間がいても、『MW2』を持ち上げる人は少ない。実際そうだろう。このゲームは11本に及ぶシリーズの中でも、一際「キワモノ」であって、理解に苦しむ部分も大きいからだ。

発売当初は賛否両論だった一方、海外では「HD版リメイク」を求める署名運動も起こる程に根強いファンがいる本作。改めて時間が経った今、盲目的な懐古でなしに、このゲームがいかに際立っており、また何を表したかったのか評価したい。

 

何故ここまでバランスが崩壊していたのか

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本作をほんの一度でもプレイした人間ならわかると思うが、本作はとにかく「強い武器」が多い。

ここにおける「強さ」とは、ちょっと他より威力が高いとか、装弾数が多いなんて生易しいレベルでなく、ルールを根底からひっくり返すような強さだ。

中でも、「グレネードランチャー」に「デンジャークロス」の組み合わせは、プレイヤーの誰もが脳裏に焼き付いているだろう。適当に狙いを定めてポンッと放てば、一方的に遠距離から、それも一撃で倒せてしまうのだから。

いや、「コマンドー」に「マラソン」「ライトウェイト」の組み合わせも懐かしい。これはナイフの当たり判定を広げ、かつ移動速度と距離を大きく伸ばす組み合わせだが、これによって銃で撃つより、適当に走ってナイフを振った方が強くなるのだ。

一方で、脅威の命中精度で圧倒する「M93R+Akimbo」、フルオートで散弾を放つ「AA-12」、確定3発で倒せてしかもレーダーに映らない「UMP45+Silencer」、いつでも無限に弾薬が補給できる「ワンマンアーミー」。

 

そう、このゲームはゲームバランスが崩壊している。

何と組み合わせると強いとか、どう使えば強いとかじゃなく、もう純粋に強すぎる武器が跋扈しており、前作『CoD4』とは完全に別物、いやFPSとすら言えないような仕様だ。

もちろん、強いのは武器だけではない。新たに追加されたキルストリーク、「AC-130」「Harrier Strike」は一方的に相手をなぶり殺し、25キルで発動して一人でゲームを勝利させる「Tactical Nuke」は、チーム対抗戦であるコンセプトを根底的に否定している。(しかも、頻繁に発動する)

言うまでもなく、『CoD4』のシンプルにして、完成されたデザインとバランスを愛するファンたちは、このゲームを遊んでハゲ散らかした。何故こんなバランスを放置しているのだ、IWはいつまで正月休みを取ってるんだと。(私だ)

 

結局、最後まで修正のパッチはこなかった。それでも驚くことに、10ゲームに1回は核が発動する世紀末ゲームにプレイヤーは残り続けた。だが驚くべきことに、『CoD4』のような整ったバランスに回帰した『Black Ops』が発売した後も、根強く『MW2』を遊ぶファンは存在したのだ。

ここで一つ疑問が浮かび上がる。ひょっとすると、この歪なバランスは確信犯だったのではないだろうか。IWが意図的にバランス崩壊級の装備をバラ撒き、カオスな戦場を創りあげたのではないか。

ということは、結局『MW2』は単なるストレスフルのゲームではない。あの中毒性は、バランス崩壊の中に新たなゲーム性を見出した故と言える。

 

実は相互関係にあるバランスブレイカー

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バランスブレイカーが存在したのは、何も『MW2』だけではない。

古くは『WaW』の「MP40」や、『BO』の「FAMAS」、『MW3』の「FMG9+Akimbo」。

だが、これらの武器に共通する点として、「作品の中で比較的強い武器」が強武器として評価されてい点が挙げられる。確かに「FAMAS」は強いが、どちらかというと他のARが弱いだけとも読めるし、『MW2』のように既存のルールをひっくり返すものでもない。(明らかに強すぎるのもあるが)

 

『MW2』の面白い点はここである。本来、『CoD』とはそのカジュアルな体験故に、僅かな性能の差がゲームに影響する、バランス調整が困難なシリーズだ。そこで『MW2』では開き直り、あらん限りの強武器を実装し、新たな「バランス」が構築されていた。

例えば、爆発物を強化するデンクロとグレポンの組み合わせは強い。しかし、マラライ+コマンドーなら弱点の近距離に潜り込める。一方、冷血+UMPサプの組み合わせでキャンプすれば、走り回るコマンドーはカモになるだろう。

このように、あらん限りの強武器たちが、じゃんけんのように互いの弱点を補っている。「目には目を、チート武器にはチート武器を」で、あらゆるラフプレーをぶつけて殴りあうのが『MW2』の醍醐味だと思う。

 

実際、「コマンドー」や「デンクロ」の影に隠れているが、ほぼ中距離で仕留められる「SPAS」や、『CoD4』で必須装備だった「Stopping Power」だって相当にインチキ臭い。ARだって軒並み強いし、SRもQSのお陰でとても使いやすい。

豊富な最強装備から自分だけのものを選んで、キルストをじゃんじゃん呼び、増え続けるスコアにニマニマできる。このように、何の躊躇もなくドンパチできる爽快感こそ、『MW2』だけが持っている特殊な面白さだった。

『CoD』ならではのカジュアルさと快楽性を最大限用いて、強くて派手な装備をぶつけ合う混沌な戦場は、最強武器を遠慮して「二、三番目ぐらいに強い装備」でコツコツ撃ちあう、その後の『CoD』には決してなかったものである。

 

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また、この「お祭り感」を更に盛り上げてくれるのが、『MW2』で一新されたグラフィックだ。

今では、あまりに使い回されすぎて新鮮味もなくなった「IW 4.0」エンジンだが、この美しいグラフィックを初めてお披露目した『MW2』は、2009年当時のプレイヤーを驚かせた。

また、ロケーションも最高だ。『CoD』といえば、ロシアや中東のリアルで地味な戦場が舞台となることが多いが、『MW2』では太陽の照りつける「Afghan」、極彩色の市街地「Favera」、空港が再現された「Terminal」など、いかにもハリウッド調の、ビジュアル重視のマップが大量に収録された。

何より、「バランスブレーカー」と呼ばれる程強い装備は、大抵が『MW2』において新たに実装された装備というのも興味深い。「Akimbo」「ナイフ一式」「新PERK」は全て新たにフィーチャーされた要素だし、「SCAR」や「UMP」といった数々の新武器も大体強い。

せっかく新しいゲームを買った以上、新登場の武器を使いたいと思うのは、娯楽重視の顧客の自然な欲求だろう。

 

もちろん、開発側も最初から終末戦争を楽しむゲームを作ってやろうと、コンセプチュアルな姿勢で挑戦したとも思えない。

ただ純粋に、「こんな武器面白いんじゃね?」という発想で創りだした装備を、つめ込むだけ詰め込んだ結果、こうなったように思える。

実際、いくらラフプレー上等と言っても爆発物は飛び抜けて強いし、「これが新たな『CoD』だ」と仮定しても、文句の言いたい点はいくらでもあるし、理想的な競技性には程遠かったと思う。

だがそれでも、あの「ぼくのかんがえたさいきょうかすたむ」で殴り合った『MW2』は、『4』を除いて最も記憶に残った作品である。マンネリを否定しきれない『CoD』にとって、次の方向性の一つに『MW2』があってもいいのではないか。

(無限グレポン&ジャベリン等のバグはさすがに遠慮したいが)