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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Evolve/エボルブ』の感想やレビュー 「映画的ゲーム」のイノベーション

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開発:Turtle Rock Studios

対応:XboxOne、PS4、Steam

発売:2015年3月5日(日本)

ジャンル:マルチプレーFPS

 

ゲーム概要


未開の惑星を舞台に、ハイテク装備で武装したハンター4人と、強大な能力を持つモンスター1匹がぶつかるマルチプレーFPS。
以前レビューを執筆したが、今度は昨今横溢する「映画的ゲーム」に一つの答えを出した、『Left 4 Dead』の革新を再び起こしたという観点から論ずることにする。


刺激的なマルチプレー

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本作はモンスター1匹と、ハンター4人で戦うシンプルなFPSだ。

ハンターには、切り込み隊長の「アサルト」、罠で敵を錯乱する「トラッパー」、味方をバックアップする「メディック」、攻撃と支援を同時にこなす「サポート」など、個性豊かなクラスが用意されている。

とは言え、メディックは攻撃らしい攻撃が出来ず、アサルトは前線で大暴れするしか出来ない等、彼らは『Team Fortress』のように際立ったキャラクターばかりで、人間側なら相互の協力が不可欠と言える。

モンスター側にも、圧倒的腕力で敵を粉砕する「ゴライアス」や、空中浮遊のできる「レイス」など、いかにもB級映画に出てきそうな凶悪なメンツが揃っているが、

「レイス」はワープによって敵を撹乱出来る代わりに移動が遅く、「ゴライアス」は脳筋よろしく殴って走ることしか出来ない。モンスター側も中々に癖のあるものばかりだ。

これにより、ハンター側は仲間との連携なくして勝利は出来ず、モンスター側も弱点を突かれると打撃になる。プレイヤーはそれぞれの特徴を覚えて、別途に対策を用意する必要があるのだ。



一方で、まだFPSに慣れてない初心者の人は、「そんなに複雑なら、慣れるまでが大変ではないか?」と思うかもしれない。

だが、安心して欲しい。本作は幅広いプレイヤー層を見越して、様々なユーザビリティの向上が図られている。

例えば、ゲームプレイを始めた頃は、武器の使い方や基本的な戦術といった、様々なヒントが表示されてプレイヤーを誘導してくれるし、

プレイ中のUIは、敵の足跡や目標の位置など、知るべき情報をひと目で確認できるように整理されている。

何にせよ、ベテランすら苦戦するような工夫の幅が残されていながら、カジュアル層もしっかりカバーしているので、幅広いプレイヤー層に薦められる作品に仕上がっていると言えよう。



さて、せっかく『Evolve』を買ったからには、やはり凶悪なモンスターで暴れ回ってみたいと思うだろう。

残念ながら、実は序盤のモンスターはかなり脆弱で、ハンターと遭遇すれば何の苦労なく倒されてしまうほどに弱い存在。真っ先にハンターに立ち向かったが最後、逆に狩られてしまうに違いない。

しかし、モンスター側とて黙ってはいない。それぞれのモンスターは、フィールドに散らばった中立NPC捕食することで、己を「進化」させることが出来る。その過程で体力や攻撃技を追加できるのだ。

だからこそ、モンスターは自慢の脚力や特殊能力でフィールドを駆けまわり、嗅覚を駆使してハンターたちの接近を警戒しつつ、着実に捕食する必要がある。

当然、ハンター側も進化を阻止すべく、あらゆる手でモンスターを追跡する。敵の足跡を追ったり、捕獲用ドームを展開したり、野生動物たちの行動を観察してもいい。

ここに、今までのFPSにはなかった、鬼ごっこのような駆け引きが生まれている。モンスターは逃亡し、ハンターはそれを追う。この非対称な戦いこそ、本作の醍醐味と言える。



「映画のようなゲーム」ではなく、「映画を演じるゲーム」。

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さて、いかにUIがわかりやすく、ゲーム性が新鮮であっても、フルプライスを投じて「マルチ専用」FPSの購入に踏み切れる人はあまり多くないだろう。

だが、そんな魅力的な現代ゲームの中で、あえて『Evolve』を推す根拠は、単なる競技性やグラフィックに留まらない、とてもユニークな体験にある。

話題は変わるが、あなたは『ジョーズ』や『ジュラシックパーク』といった映画に、感動したことはないだろうか?

もし少しでも、そんな冒険活劇に胸踊らせた経験のあるという人なら、是非『Evolve』をプレイして欲しい。

何故なら、このゲームは「映画を自分たちで作るゲーム」を目指したものだからだ。



例えば、最近巷でもちらほらと見かける「映画のようなゲーム」という評判。

これは文字通り、派手な演出やリアルなグラフィックで、実際に映画の中で遊んでいるように感じる作品を指すが、

一方では、演出やプロットに拘る余り、ゲーム内容そのものは古典的なものに終始するものも少なくない。

だからこそ、一般的に「映画のようなゲーム」は、実際には「スクリーンに映る映画を観ている気分になるゲーム」に落ち着いてしまう。

どうして、ゲームというインタラクティブなメディアを前にして、我々は観客の立場に甘んじなければならないのか?と考える人もいるだろう。



そんな現実に対し、『Evolve』はユニークなマルチプレーでもって立ち向かう。

つまり、一方的に話を進める「映画のようなゲーム」の代わりに、自らが兵士やモンスターとなって、未開の惑星における戦争を演ずる「映画を演ずるゲーム」を作り出すことを実現したのである。

まず、本作は1匹と4人まで参加キャストを削り、その上で、個性豊かなクラスと、モンスターとハンターの非対称なルールを設けた。(ここが他のマルチプレーFPSと異なる点だ)

故に、唐突に映像を流したりせずとも、自然とプレイヤーの意志がゲームに反映され、そこから映画のような迫力ある試合が生まれる。

「小賢しいハンター共め、闇夜から狙われる気分はどうだ?」「クソッ!メディックはまだか?」「見てこいカルロ!」

だからこそ、ゲームを遊んでいれば、自然とこんなセリフが聞こえるようだ。

もちろん、アドベンチャー映画を模倣した世界観、かっこいい試合開始時の演出、CryENGINEによるリアルなグラフィック、迫真のボイスアクトと、映画らしさを支える環境にも抜かりはない。

この映画的な体験は、「悪役」や「相棒」すらプレイヤーが配置される、マルチプレーFPSだからこそ完成したと私は思う。

ゲームはあくまでスタジオに徹し、最高の環境と道具を与えることに腐心する一方で、プレイヤー同士が参加し、協力し、戦うことで、映画のようにダイナミックなマルチプレーが実現するのである。



『Evolve』は確かに欠点もある。ルールが複雑で、バランスもまだまだ未調整。ゲーム性は新鮮だが、移動などでダレるシーンもある。マルチプレーのみでフルプライスというのも、大きなネックになるだろう。

それでも、既存の作品には飽きてしまった人や、何かユニークな体験を待望する人には、あえてこの『Evolve』に触れて欲しい。

プレイヤーをスクリーンの前に取り残すシネマティックなゲームではなく、プレイヤー自らが映画を作り上げていく『Evolve』に。

きっと、Evolveしたゲーム体験を味わうことが出来るだろうから。