ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

「賢いAIとは何か?」 ゲーム史上最強のAIを決める大会をはじめようか

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NPCの「AI」をどう進化させるかは、現代のゲーム開発における焦点の一つだ。誰もが本当の人間を相手にしているような、手に汗握る戦闘をゲームに期待している。だからこそ、プレイヤーの強大な敵として立ちはだかる屈強なAIは、それだけでゲームの魅力を引き上げてくれる。

 

だが、そもそも理想的なAIとは何だろう。現実的な動きをするAIか、それとも派手にやられて戦闘を盛り上げるAIか。実は、その方向性は様々で、一様に「このAIこそ理想」と言えるAIは存在しない。

例えば『Civilization』の開発に携わったSoren Johnson氏が、AIの優劣を「良いAI」と「楽しいAI」に分けて説明したことがある。AIには、プレイヤーに本気で勝つAIと同時に、華々しく負けるためのAIも必要だと言うのだ。

これは必ずしもストラテジーゲームにあてはまらず、むしろFPSにも言えることだと思う。そこで、今日は「優れたAI」の実例を、「良いAI」「楽しいAI」更に「盛り上げるAI」「育つAI」と、大きく4つに分けて解説しようと思う。

 

(参考:「Civilization IV」のリードデザイナーSoren Johnson氏がAIの秘訣を語る、「負けるためのプレイ: AIと“Civilization”」

 

「良いAI」

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我々ゲーマーがよく「このゲームのAIすごいよ!」と褒める場合、大抵は彼らの「賢さ」を指して言うことが多い。

つまり、ガチガチの戦略と柔軟な思考でプレイヤーを追い詰める、「強いAI」のことだ。

 

FPSにおいて最も殺意をむき出しにしたAIといえば、『F.E.A.R.』は有名な語りぐさだ。

Monolithから2006年に開発されたこのホラーFPSは、9年後の現代においても、衰えるどころか未だに最高峰の「良いAI」の作品として知られている。

例えば、プレイヤーを発見した敵兵は、一度障害物に隠れて銃撃を開始するものの、銃撃の間髪をついて側面に回りこみ、物陰に隠れるプレイヤーの裏を取り続ける。

更に、存在する机をひっくり返して盾にしたり、ガラスや手すりは難なく乗り越えるなど、オブジェクトを認識した上で最適の行動を取ることも可能だ。

 

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最近の例で言えば、『RAGE』も中々印象深い。

こちらは積極行動となるとあまり賢い行動は取らないが、一定のダメージを受けたり、兵員を消耗すると「こんちくしょう!」等の捨て台詞と共に、戦線から後退してキャンプする珍しいAIを持つ。

一見、ただ場を盛り上げるだけの後退だが、実は中々に厄介で、一度しとめ損ねると、次は仲間と一緒に待ち伏せしていたり、こちらが不利になるような形成を維持したりするなど、攻略面でも面白みのあるAIだ。

 

そうそう、コンシューマ専用のために見逃されがちだが、実は『Halo』のAIもとても優秀だ。

宇宙を舞台とする本作は、人型のNPCやモンスター型のMOBに対し、それぞれ別個で特徴的なAIが備わっている。特に人型のAIは白眉で、ビークルに乗り込んだり、ロケット砲を偏差射撃することも出来る。

このAIの魅力を最大限活用できるのが「フォージ」というモード。いわゆるマップエディターなわけだが、マップを編集している最中にAIたちを戦わせる事ができる。そうすると、彼らがいかに優秀な行動を取るか理解できよう。

 

「楽しいAI」

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必ずしもプレイヤーに撃ち勝つだけが優れたAIではない。強さの中に人間的な弱さを持つAIにもまた、プレイヤーはリアリティを感じるからだ。

 

さて、より人間らしいAIといえば、2004年に発売した『Far Cry』が有名だろう。

まず、本作はプレイヤーは数で勝る現地軍をたった一人で相手にしなければならない一方で、障害物や広大なマップを利用した「ステルス要素」を組み合わせて戦える、「ゲリラFPS」と銘打たれたユニークなゲーム性が魅力の1つだ。

とは言え、数の優位まではそうそう覆せない。10人のうち2人も倒せば、死体や発砲音に反応した敵兵が主人公を追跡するので、プレイヤーは手短な草むらなどに隠れることになる。

すると、敵兵は「草むら」を認識して、隠れた主人公を見つけずにウロウロし始めるのだ。そこで、プレイヤーは逆方向へ石ころを投げつけ、別の方向に敵を誘導することが出来る。

 

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更に、続編の1つである『Crysis』では、より生々しいAIへと進化した。

本作の主人公は、「ナノスーツ」と呼ばれる強化スーツを装備しており、好きなタイミングで透明になったり俊敏に移動したり出来るのだが、この機能を利用して敵兵に近づくと、相手は混乱して逃げ惑ったり、乱射したりするなどして、ゲームを盛り上げてくれる。

 

いずれにせよ、「ステルスゲーム」の中毒性や超人性を演出する上で、人間らしい弱さを露呈するAI、つまり「騙されるためのAI」は必須と言える。

そういう点で、『Dishonored』『Thief』『Deus Ex』は、代表的な「楽しいAI」を搭載した作品として挙げられよう。

 

「盛り上げるAI」

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ゲームの魅力は必ずしもゲーム性のみに縛られない。特に現代においては、大迫力の演出や現実的な描写もまた、プレイヤーを熱中させる重要な要素と言える。

そこで、派手な演出に加わるAIや、ゲームを快適に進められるNPCとしてのAIも、それぞれプレイヤーを「盛り上げる」ために秀逸な進化を遂げた。

 

例えば、ゲームを「映画のように」盛り上げてくれるAIといえば、『Call of Duty』シリーズのAIが有名だろう。

まず敵兵の動きのバリエーションが多い。被弾した時のよろけ方や、カバーにつこうとする動きもそうだが、これが「戦場」であると思わせるような堅実な動きをすると同時に、死の間際にピストルを抜いて抵抗したりするなど、戦場の痛ましさをも表現している。

 

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またスマートな仲間のAIといえば『バイオハザード5』も捨てがたい。本作は元々人間とのcoopを前提に作られた節があるが、実はAIと一緒に戦っても中々楽しいのだ。

まず、AIが妙に人間的なのが良い。入手したアイテムを分けてくれたり、遠回しにレアアイテムの位置を教えてくれる他、先行してクリアリングしたり、近接武器と銃を見事に使い分けていたりする点が、驚くほど自然に「協力プレイ」を再現している。

 

「育つAI」

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もはや、これまで紹介した「プレイヤーの良き友人」としてのAIの時代は終わりを迎えつつある。最先端のAIにおいては、プレイヤーが自らAIを育て上げることが出来るものも登場しているからだ。

 

例えば、人気ロボットアクションの最新作『ARMORED CORE: VERDICT DAY』に搭載された「UNAC」と呼ばれるシステムは、プレイヤー自らがAIを作り出す事ができる。

元々、プレイヤーの好みで自由にロボットを組み立てる、高度なカスタマイズ性が特徴だった本シリーズだが、この「UNAC」と呼ばれるシステムでは、AIの攻撃や移動、チームの連携の傾向さえカスタマイズできてしまう。

更に、自分好みに育てたUNACと共にミッションに旅立ったり、UNACだけのチームを組んで自分は司令官として指揮に専念することさえ可能。シングルプレーでAIと高度な連携プレイを楽しめるのは新鮮だと、プレイヤー側の評価も高い。

 

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最後に、任天堂の対戦アクションである『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』における「Amiibo」システムも紹介しておく。

「Amiibo」というのは別売りで販売されている、任天堂キャラクターを模したフィギュアなのだが、WiiUと連携してゲーム性を拡張する外部端末としても活用できる。

まず、登録されたばかりのAmiiboのレベルは0で、CPUの中でも貧弱な部類だが、プレイヤーやNPCと戦わせることで成長を繰り返し、更に対戦相手の技の傾向や距離感などを学習していく。

こうして最大まで育ったAmiiboは、最終的にプレイヤーと瓜二つの「オリジナル」のアルゴリズムを習得しており、プレイヤーは彼と対戦することで自分の弱みを学習したり、共に他のNPCに挑戦することも可能だ。

 

これら「育つAI」はまだまだゲーム業界に浸透しきっていないが、いずれも新たなゲーム性の可能性を伺わせるものが揃っている。いずれマルチプレー顔負けの高度なゲームプレイを、気軽に一人で楽しめる環境が実現するかもしれない。

余談だが、現代における人工知能の研究は主に認知心理学の学域において発展を遂げている。学習するAIを掘り下げて調べたい方は、是非こちらの資料なども参考にして欲しい。

 

結局、最強のAIって誰?

現状で言えば、ズバリ『F.E.A.R.』こそ最強だと私は感じる。あの機敏な動き、論理的な思考回路は、ホラーテイストの雰囲気と相まって、本当に人間を相手にしているような「死闘」の恐怖感を実現していた。

とは言え、強いAIと言っても、先述したような「良いAI」と「楽しいAI」が存在し、またゲームプレイという幅広い定義では、「盛り上げるAI」や「育つAI」など、様々なベクトルでAIの進化は進んでいる。

このような進歩の先に作られるであろう、新たなAIがゲームで活躍する時代の到来を期待したい。