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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

現代のゲーム開発者が『DOOM』から学ぶべき3つのゲームデザイン

 

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1993年にid Softwareが開発した『DOOM』が、現代にまで連なるFPSムーブメントの先駆けとなったことは、あまりに有名な話だ。

エイリアンに支配された火星で、ドアの鍵を探しまわり、ショットガンで敵を圧倒し、ヘルスは自動回復しない。現代のトレンドとはかけ離れたゲームが、何故ここまで支持されてきたのか。

ここでは、2KGamesのデザイン監督Matthias Worchが語る、現代の開発者が『DOOM』から学ぶべきデザインを、3つ取り上げて紹介する。

 

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個性豊かでありながら、わかりやすい敵の造形

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『DOOM』における敵NPCの挙動は、それぞれが驚くほどシンプルである。

Shotgun Zombieは距離を取って攻撃し、Impはゆっくりと迫る火炎弾を放つ。他のデーモンもまた然り。このように、それぞれがプレイヤーによる攻略を見越してデザインされているのだ。

一方、彼らのビジュアルは対照的に個性豊かだ。皮膚の色はパレットのようにカラフルで、プレイヤーは突入して即座に敵を見分ける事ができるし、倒すべき順番も判断できる。

 

「『DOOM』では、わかりやすい特徴を個々の敵に持たせることで、プレイヤーにしっかり攻略させる面白さを残しているんだ」

「同時に、シンプルな特徴を、膨大な種類の敵に分配することで、決して単調にならないようになってる」Worch氏は語る。

 

現代のFPSでは、人型のデザインが中心となり、敵の行動はより複雑なものとなった。

彼らは一様にカバーに隠れ、グレネードを投げ、定期的に位置取りを変える。時には仲間に支援を求めることもある。

たが、一度の接敵でいかに複雑な行動を取っても、『DOOM』のデザインに打ち勝つことは出来ないと考える。

 

「大抵のゲームでは、少ない種類の敵に、複雑な特徴をもたせているね。確かに、このアプローチにも面白さはあるが、プレイヤーに攻略させるための”わかりやすさ”が欠如している。」

「でも、プレイヤーに未知の体験を与えることを目的としたゲーム、例えば『The Last of Us』とか『Tomb Raider』は例外だ。

プレイヤーと主人公を、過酷で悪意のある世界へ放り出すハードな作風なら、敵の行動は”攻略される”ためのものより、むしろ予想がつかないものの方がいい。」

 

遊んだだけプレイヤースキルを伸ばせる攻略性

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まだ3Dとして完成されていなかった『DOOM』は、違う階層に陣取る敵を倒すために、レティクルを上下に向ける必要はなかった。どれほど高い場所にいる敵にも、水平の狙いさえ合っていれば、弾は自動で命中したのである。

 

「古株のゲーマーたちが、この仕様をプレイヤーに高低差を意識させないシンプルなデザインだと評する一方で、今のゲーマーからすれば、それは時代遅れじゃないかと感じるかもしれない。

でも、同時にエイリアンたちの配置をプレイヤーとの距離によって厳格に定めることで、FPSならではの面白さもまた、現代のそれに勝るとも劣らない水準だったんだ。」

 

先述したように、DOOMの大きな魅力には、わかりやすい行動と個性豊かな造形が組み合わさったデーモンたちのデザインがあった。

そこに、この様々な位置や距離に配置されたデーモンとの、水平的な戦いが加わることで、本作は『Robotron』*1をFPSで再現することに成功したのだ。

つまり、『DOOM』が求めた面白さは、ただ敵を狙って撃つことだけでなく、自分と敵との間の距離と空間を把握し、いかに行動に移せるか、というゲーム性だ。

そして、ここにこそ「プレイヤースキル」の幅が、言うならば攻略性が存在する。ただ狙って撃つだけでなく、どのように立ちまわるかも考慮せねばならない戦略性が、初心者と上級者のゲームプレイに明確な違いを生み出すのである。

 

「このゲームには自分で見つけるべき技巧や戦略が溢れていて、初心者と上級者では動きに明らかな差が生じる。だからこそ、プレイヤーは『DOOM』を完全に攻略してやろうと考え、何度もリプレイを重ねられるんだよ。」

 

『DOOM』では、空間把握と移動テクに長けたプレイヤーなら、ノーダメージで無数のデーモンを抹殺することも出来るし、

一方、初心者であっても、敵のわかりやすい動きと造形から、すぐに自分でセオリーを掴めるように作られている。

 

また、『DOOM』の高い攻略性には、自動回復しないルールも貢献している。マップ上に散らばっている回復アイテムが限られている以上、プレイヤーは常に残りのリソースを気にしながら戦わねばならないからだ。

 

「アイテムが限られていることで、プレイヤーがアイテムを見つける度に、新たな決断が生まれるデザインになっている。」

「逆に、ライフが勝手に回復してしまえば、プレイヤーの決断はいつもリセットされるんだ。そして、作業的な殺戮を繰り返すしかない。」

 

不動のレベルデザイン

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『DOOM』を取り巻く世界観は、全体的に抽象的なものに仕上がっている。プレイヤーにわかっていることは、放置された月面基地と、ファンタジー風の地獄が舞台というだけ。

そう、最後に紹介する『DOOM』の魅力は、プレイヤーの関心と挑戦を引き出そうとする抜本的なデザインだ。前述した、わかりやすい敵のデザインや、高い攻略性もまた、このデザインなくして実現することはない。

さて、この特徴に関しては『DOOM3』で比較した方がわかりやすいだろう。何故、火星でドンパチするだけの抽象的なデザインが、ゲームを面白くしているのだろうか?ただ暗い廊下にデーモンがいることが、ゲームの面白さに貢献するのか?

 

例えば、DOOMはステージを結ぶものは「鍵」と「ドア」だけだ。エリアを一定まで攻略すると鍵が見つかり、その鍵に合った色の扉が開く、いたって古風なデザイン。抽象的な世界観を下地にしているからこそ実現するデザインでもある。

 

「ステージの間を鍵と扉で結ぶことで、デザイナーはステージ全体の様相を、間接的にプレイヤーへ伝えているんだ。だから、プレイヤーはマップを開くまでもなく、自分がどこまでゲームを進めたか、今どの位置にいるのか把握できる。」

「色付き扉の先には、何を設置したっていいんだ。武器やアイテムはもちろん、敵だらけのトラップだっていい。だから、プレイヤーは鍵を拾う度に、次は何が待っているのかとワクワクするんだ。」

 

対して、現代のゲームはより現実的で、複雑な手段を好む。その典型はカットシーンの挿入だ。

 

「もしデザイナー側が毅然とした態度を貫くとするなら、つまり一方的にストーリーをとくとくと語るようなことがあれば、プレイヤーは置いてきぼりにされてしまうし、その後の展開まで読めなくなる。ゲーム側だけで勝手にゲームを進めるべきじゃないんだ。」

「この”扉&鍵システム”からわかることは、ゲームはそれなりに定型化された上で、プレイヤー自らが物語を読み解くための「式」をゲームが与えるべきだということだ。」

「もちろん、扉と鍵にこだわる必要はない。電子コードと防火扉、指紋認証錠とエイリアンの死体、何だっていい。とにかく、ギミックを何度か繰り返させることで、プレイヤーにゲームがどこまで進行しているのか理解させている点が、このシステムの肝だ。」

 

最後に

これらの教訓は万能ではないが、ゲーム開発者なら学ぶ価値のある、或いは作品に応用する価値のある点が、いくらかあったのではないか。

ただ映画のようにムービーを切り貼りしようと、自動回復を導入しようと、プレイヤーの集中を霧散させるだけだと、Worch氏は『DOOM』を引用して語る。

 

「一番大事なことは、ゲームを作る最大の動機は、いかに他人を楽しませられるゲームを作るかという願望を持つ、デザイナー同士の振子運動だということ。システム的、映画的、アート的、色んなゲームがある中でね。」

「ただ、長い歴史のなかで、その振り子が振りきれてしまう時がある。今回挙げた『DOOM』もそうだけど、『Halo』『Dead Space』も同じように感動させてくれたよ。」

 

それでも、現代のゲーム産業は、やはりエンジンがいかに優れているかとか、物語やアンロックツリーへの傾倒が主流だ。

だからこそ、過去の作品に立ち返り、どのようにして色褪せない作品を築き上げたのか知るのも悪くないだろう。

 

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以上、内容はGamespot誌のDaniel Hindes記者による「Three Lessons Today's Shooters Can Learn From Doom」(2014年5月15日)から抜粋し翻訳したものである。

ソース:GameSpot

*1:『インベーダー』の主人公が四方に動けるものと想像して欲しい