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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【再評価】『Portal 2』の感想やレビュー パズルと視点、克服のためのCOOP

 

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ゲーム概要

Valveによって開発された、「どこでもドア」のようなポータルを、自在に作り出す「ポータルガン」を駆使し、崩壊した研究所から脱出するFPSパズルの続編。

本作ではCOOPが新たに搭載され、本稿では主にこれを批評する。

 

パズルと視点

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パズルゲームは、数あるゲームジャンルの中でも、比較的メジャーな部類だと思う。

 

任天堂の功労者『テトリス』は当然として、洋ゲーで根強い人気を誇る『Bejeweed』、スマホなら『パズル&ドラゴンズ』は日本中でプレイされている。

これらの作品に共通することは、見下ろし視点で遊べることだ。つまり、パズルを解くのに必要なピースは、全てこの画面内に用意されているのである。

この視点は、言うならば神の視点。この画面には、ヒントも答えも既に揃っており、理論上は必ず正解できるはずだ。もし間違えるとするなら、それは人間の思考の遅延や認知の誤解といった、「プレイヤーの弱さ」が原因と言うことになる。

 

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(これが「神の視点」だ。パズルを解く全てのキーは、既に画面の中に揃っている。)

 

そういうパズルゲームが並ぶ中、今回紹介する『Portal 2』は一風変わった作品である。

本作の視点はFPS、つまり一人称視点であり、先述した神の視点こと「見下ろし視点」と比べると、明らかに不便である。

まず、FPSではピースの全てを視野に入れるとは限らない。仮にA、B、C、Dのピースがあり、正解はBとCを組み合わせるものだったとして、FPSならABCD全てが画面内に収めることは出来ない。

そこで、プレイヤーは等身大の視点から、マウスを動かすことで周囲をぐるりと見回り、それぞれのピースを配置、性質、個数を確認したうえで、自分の頭の中でピースを組み合わせる必要があるのだ。

 

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(壁にはレーザーが二つ、地面には反射キューブが一つ、ゴール前には飛び出し床が一つ・・・ えーと、つまり?) 

 

これは、ただFPSのスリルある視点で、パズルを組み立てられると考えても面白いが、

私が興味深く感じたのは、このFPSという、狭く、不便な視点によって、プレイヤーの誤判をわざと誘発している点である。

人間の記憶力は脆弱だ。マップの中に、Aという鍵を発見し、次にBという鍵を発見したとしても、Aという鍵がどこにあったかは覚えていない。視野の外にあるピースを記憶で補完しながら、プレイヤーは何とか「人間並みの視野」、すなわち一人称視点でもってパズルを解いていく。

 

当然ながら、全てのピースを一目で確認できる『テトリス』よりも、より複雑な立体の空間で、しかも朧げな記憶を頼りに攻略する『Portal 2』の方が、同じパズルなら難しい。

だが、逆説的に『テトリス』は、攻略をいかに煮詰めるかを、全てプレイヤーの能力に依存しているために、一切言い訳を許さない硬派なデザインと言える。

一方、『Portal 2』はFPSという不便な視点を与えることで、立体的空間と視野の制限とプレイヤーの判断力、それらを総合的に調整して、絶妙な難易度カーブを実現しているのである。

 

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つまり、もし『Portal 2』を遊んでいて失敗しても、それはプレイヤーが悪いのでなく、主人公Cellの視点が平凡すぎるのが原因なのだ。

最も、「神の視点」の極端な合理性による高い難易度を緩和すべく、『テトリス』や『ぷよぷよ』はランダム要素等を挿入した。しかし、FPSという、「一般人の視点」によって合理性に妥協を許すデザインとなると、中々新鮮だと思う。

 

「視野」という限界を克服するための、COOP

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『Portal 2』の醍醐味である、この複合的な要素を束ねるパズルは、本作で新たに導入されたCOOPモードにより、更に深みを増す。

さて、本作のCOOPでは、2人で専用のマップを攻略するのだが、当然、1人で遊ぶシングルプレイより、2人で遊ぶCOOPの方が難しい。

まず、ゴールに辿りつくには、倍となる4つのポータルを活用しなければならず、更にマップも、シングルのそれより2倍近く広い。元々FPSで視界が狭まっているために、マップが広くなることで難易度が跳ね上がるのである。

 正直、シングルプレーでも四苦八苦してクリアできるほどの難易度。いくら2人いるとはいえ、それを更に難しくして、クリアできるものだろうか?

 

それが、意外とアッサリ攻略できるのだ。そこにも、この「視点のパズル」としての面白さが眠っている。

まず、先述したとおり、本作はFPSによって視界が狭まるので、同時に眼中に収められるピースの数には限界がある。だから、死角にあるピースは記憶で補わなければならない。

ところが、もし2人分の視野があればどうか? そう、お互いの死角を埋め合わせれば、全てのピースを視界に入れることは難しくないのだ。

このように、本作におけるCOOPは、ただ人数が増えただけではない。今までパズルの難易度を上げていた、「狭い視界」というハンデを取り除く鍵になっているのである。

勿論、無条件に有利になるわけではない。お互いの視界を常に共有するには、正確に情報を伝えるコミュニケーション力や連携が問われるからだ。

しかし、前作で特徴的だったFPSというハンディに対し、本作ではCOOPによって視点を増やし、二人の連携によっては著しく改善できる、という点が実に見事である。

 

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(私に見えているものと、相棒に見えているものは違う。だから、互いに自分が見えていること、そして考えていることを共有する必然性が生まれる。)

 

逆説的に、「COOPパズル」の土台には、既に何らかの障害が存在する、いかにもストレスの溜まりそうな作品である必要があったと言える。

だからこそ、予め超人的な能力が普遍化したジャンル、つまり「神の視点」が基本のパズルゲームを、一般人の視点である「FPS」へと堕落させたのは、前作『Portal』の革命であった。

そして、『Portal 2』で描かれるのは、堕落したパズルゲーマーの、「克服」である。本作のCOOPは、二人で協力して成功を掴むというよりは、むしろ奪われた視界を克服するドラマがある。そこに、本作の新鮮さがあるのだろう。