ゲーマー日日新聞

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【評価】『MGSV:TPP/メタルギア5ファントムペイン』の感想やレビュー、第一印象として

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※ネタバレ等は極力回避しています。

期待のMGS新作

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小島監督の送るステルスゲーム、『メタルギア』シリーズは、最新技術に、高度なレベルデザイン、そして長大なストーリーから、国産ゲームの中でもとりわけ異色のAAA級作品として知られている。

本作はナンバリングで言う『MGS4』からおよそ7年ぶりの新作であり、人員、予算共に、とんでもない規模で制作されたことが伺える。

 

そして本作の主人公、「スネーク」こと「BIG BOSS」は、シリーズのあらゆる作品で物語に強く影響する存在として描かれており、

本作は、そのプレイヤーに強く印象づけていた「BIG BOSS」の内面を展望する内容であると、告知されていた。

否が応でも、ファンからの期待は高まると言っていいだろう。

 

オープンワールドへようこそ

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序盤でオセロットが「アフガンは広い場所だ」と言うように、本作最大の目玉は、何と言っても広大なオープンワールドを活かしたゲーム性である。

序盤のアフガニスタンでは、どこまでも砂原が広がり、真ん中には道路が存在する。そしてその合間には検問所が設けられ、最終的にはソ連軍の基地が、重要な物資共々構えられている。

プレイヤーは、このオープンワールドを自由に往来し、自分の考えた潜入ルートと戦術で、ターゲットに迫ることが出来るのだ。

 

で、肝心のこのオープンワールドは実際面白い。

抜本的なシステムは2004年の『Far Cry』そのまんま。広大なフィールドから自由に潜入できるゲリラFPSとしての本作は、ステルスゲームにおいて「索敵」と「潜入」を大きく区分けしたことで大きく評価された。

このコンセプトは、そのまんま直輸入されており、今までの、万能「ソリトン・レーダー」によって「索敵」と「潜入」を同時進行させるゲーム性は切り捨てられ、

レーダーの代わりに手動の双眼鏡で敵を一人ひとりマーキングし、確実に処理することが必要とされるようになった。

(余談だが、ダイアログでストーリーを語るというのも『Bioshock(System Shock)』まんまだ)

 

新鮮味があるかと言われると、正直微妙である。確かによく作られているのは確かだが、やっぱり『Far Cry』の既視感を拭えない。

純粋に、『Far Cry』にTPS視点と、『MGS』伝統の便利な装備品を与え、代わりに敵兵の能力を向上させたゲームと言って過言ではなかろう。

ただし、取りうる選択肢は『Far Cry』の比ではなく、ここに『MGS』のメカニズムがてんこ盛りされている点が興味深い。お馴染みの「ダンボール」や「CQC」、そして新たに追加された「バディ」に「ビークル」。

基礎部分に革新性を期待するのは酷だが、遊ぶほどにその作りこみ具合に圧倒される。あまりステレオタイプで語りたくはないが、正に「国産」ゲームらしい出来栄えだ。

要するに、「洋ゲー」におけるトレンドをしっかりと輸入したうえで、「MGS」ブランドにおける丁寧な作りこみ具合を、実現しているのである。理想的な「国産ゲーム」と考えられるのではないか。

 

ところで、本作は何故オープンワールドを採用することにしたのだろう?

それは恐らく、28年間、『MGS』で培われてきたあらゆる技術、ゲーム性、アイテム、キャラクターを最大限に発揮するためには、狭っ苦しい一本道では足りなかったからだ。

『3』らしいゲリラ戦がしたい、『2』らしいハイテク潜入がしたい、『PW』らしいマザーベースと連携したい、最新作のフィーチャーをフルに活用したい…。

こういったプレイヤーの欲望を、最大限に叶えてくれるユートピア、それこそがオープンワールド、いや「戦場」の正体であり、決してオープンワールドを、伊達や酔狂で取り入れたわけでない。

 

マザーベースについて

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本作のイノベーションは大きく分けて「オープンワールド」と「マザーベース」にある(PVでも常にこの二つが強調されたため)わけだが、

前者はあくまで『Far Cry』をシンプルに導入しただけで、既存の『MGS』ノウハウを全力で発揮できるためのものにすぎない、というのは前述の通り。

一方、後者の「マザーベース」要素は、国内外のゲームでは例のない、まさしく『MGSV』のオリジナル要素となっているため、こちらも紹介する。

 

元々、前作『PW』で導入されたこの「マザーベース」要素は、端的に『ポケモン』よろしく、優秀な兵士を自分の基地に拉致し、彼らを自分のサポートに回す事ができる要素だ。

例えば、敵のキャンプ地で技術に長けた戦車兵に出会ったとする。そんな時、あなたは麻酔銃で彼を眠らせ、自分の基地に拉致した後、様々なアイテムを研究させることが出来るのだ。

これにより、ゲーム中にただ目標のために敵を倒すのではなく、RPGのようにコツコツと報酬を稼ぐことも可能になっており、ソーシャルゲーム全盛の現代らしいフィーチャーと言える。

 

及第点

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ただ、少し残念だったのがストーリーだ。

私はこのトレーラーを観て、長い長い「MGSサーガ」における「BIGBOSS」という一人のシンギュラリティに何が起きたかを知ることが出来ると期待していたのだが、現状そういうわけにもいかない。

怒りに満ちた蛮行、そしてその報い、かつての裏切りへの拷問… こういった、後のラスボスたる「BIG BOSS」を思わせるダーティーな部分は中々姿を表さず、

オープニングこそ長回しを徹底活用し、かつデヴィッド・リンチ顔負けの暴力シーンを見せつけるものの、ゲームが始まるとシンプルなムービーに、ありきたりな台詞と、少し残念な具合。脚本にもキレはない。

最も最後までプレイしていないので、それはこれからの楽しみということにしておく。

 

また、これはゲーム性を転換するうえで必然だったとは思うのだが、従来の『MGS』ならではの「現地調達・潜入任務」のスリルやレベルデザインは萎縮し、波のないシーンが続く点が気になった。

 

いずれにせよ、本作は間違いなく昨今のAAA級タイトルとは一線を画した、本物のAAA級タイトル。王者の貫禄を見せつける、素晴らしいタイトルであることは間違いない。

圧倒的作りこみ、そして、どこまでも広がる可能性。次世代機を持っていて、プレイしない手はないだろう。

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