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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

なんで人を殺しちゃダメなの? -『MGSV』等における「殺傷」ペナルティについて

エッセー

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私は「ステルスゲーム」が好きで、最新作はひと通りプレイするのだが、最近のゲームに導入されるフィーチャーがどうにも気に入らない。

それは「不殺」という選択肢のことだ。最近のステルスゲームでは、空手技をかけたり、麻酔弾を撃ちこむことで、敵を殺さずに進むことが出来る。

それ自体は別に構わない。主人公のイメージを良くしたり、ロールプレイの1つとして、そういう選択もありだろう。

が、問題は、大抵のゲームで「殺人」よりも「不殺」の方が、より多くの報酬や選択肢が与えられる、ということだ。

 

例えば、昨今の『MGS』シリーズなどはわかりやすい。

2004年に発売した『MGS3』では、ボスをスタミナキル(麻酔弾などで倒すこと)することで、様々なユニークアイテムが入手できたことを皮切りに、

2010年の『MGS:PW』『MGSV:TPP』(『MPO』)では、敵を殺さずに捕獲することで「フルトン回収」が可能になり、ゲーム性に大きく「不殺」が食い込むようになった。

まぁ、『MGS』では「戦争に加担する功罪」「BIG BOSSの人望」も重大なテーマなので、殺人がNGという気持ちはわからないでもないのだが、それでも露骨に取りうる選択肢を狭め、代わりにユニークアイテムを与えるというのは、何か納得がいかない。

 

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いや、こういうと「お前どんだけ殺したいんだよ」とサイコ野郎扱いされかねないのだが、あくまでゲームの話である。私はステルスゲームに眠る、本質的な暴力性に惹かれている。

武器や防具を持たない窮地を知りつつ、逆に敵兵を一人ひとり絶望を与えるギャップ。逃げ場のない場所で、敵の生殺与奪を握る愉悦。ある意味、『GTA』など比べ物にならない「悪趣味さ」が、全てのステルスゲームには眠っている。

(翻訳記事:なぜ人はゲームにハマるのか 「船×ステルス」MGS、Hitmanより - ゲーマー日日新聞

そのステルスゲームの「一面」を握りつぶすこと、それも、世界観やゲーム性ではなく、具体的な報酬で「釣る」ことで「不殺」を押し付ける、あまりにゲーム的でトップダウンなやり口にはうんざりする。

 

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実は、海外のゲームでも、この「不殺」のムーブメントが押しかけている。

まず、サイバーパンクの世界観が特徴的な、『Deus Ex: Human Revolution』は、レベルに応じてスキルを割り振るなどの、「RPG要素」が魅力の1つなのだが、

こともあろうに、敵を「殺害」してしまうと、「不殺」の半分の経験値しか与えられない。これはもうペナルティの域であり、プレイヤーは片っ端から敵に関節技を決める他ない。

また、ベゼスダの『Dishonored』では、不殺ならではのストーリー展開(逆に殺人を繰り返すとバッドエンド)や、殺人を重ねることで次のミッションが難しくなる、という要素があるのだが、

そもそも『Dishonored』の新要素はどれも露骨に「敵を殺す手段」であるのに、ストーリーや世界観として「不殺」を推奨する、というのは矛盾しているように思う。

というか、ゲームそのものはプレイヤーの自由な攻略を尊重している一方、ストーリーの中ではキャラクターによる独善的な展開で、長々と会話シーンを垂れ流す点も納得できない。

ゲームとしての「自由度」と、ストーリーの「自由度」を両立する必要はあるのか?

 

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一方、魅力的な「不殺」ゲームも存在する。

例えば、1998年に発売された『Thief』では明らかに「不殺武器」が優遇されているものの、作品のコンセプトはあくまで「痕跡を残さず、金品をこっそり盗み出す」ことを重視しており、

そのための武器や世界観もしっかりと作りこまれているので、むしろ「不殺」は良い調整のように思える。

また、2013年発売の『The Last of Us』では、弾薬が希少なために非殺傷が基本的な選択肢となりうる一方、ナイフのような殺傷武器は敵をすばやく処理するというメリットがあり、「殺傷」と「不殺」の間にトレードオフの関係が成立している点は素晴らしい。

更に、インディーズの『Invisible, Inc.』は、SFの世界観を基に、強化兵やロボットの鉄壁の布陣をかいくぐる、というカタルシスを全面的に主張しており、この「不殺」は面白い。

 

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私は何も、「ゲームなんだから思う存分人を殺したい!」などという願望をぶちまけたいのではない。純粋に、ステルスゲームの魅力である自由な戦闘を、陳腐なストーリーと悪趣味なインセンティブで、スポイルされるのが惜しいと考えているだけだ。

時に、緋村剣心よろしく敵に情けをかけ、時に、チョウ・ユンファのように残忍に任務をこなす。ステルスゲームは、そういったプレイヤーの自己投影も魅力の1つだろう。

だからこそ、未来のステルスゲームを待望せずにはいられないのだ。

 

(全く関係ないが、ステルスゲームは発見されずにクリアする「ノーアラート」を目指すのが王道なんだけど、実は敵に見つかってから、即座にどう対応するか考えるのも楽しいんだよね。私は初見のステージだと、発見されてもわざとリセットせず続行したりする。)