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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

『MGSV:TPP』はなぜ炎上したのか。GameSparkで考えるゲハサイトの功罪。

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基本的にこのブログは個人ブログであるし、よくも悪くも「ウチはウチ、ヨソはヨソ」のスタンスで、なるべくネットの世俗の話には遠巻きに語ることにしている。(よく言うなら不偏不党)

のだが、少し違和感を感じる記事を見つけたので、ひとつまとめサイトと、彼らの1つの記事への自分の考えをまとめていくことにする。

(『MGSV』への直接的な指摘はない。それは前日のレビューを読んで欲しい。)

 

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www.gamespark.jp

 

『MGSV:TPP』は今年の9月に発売されたばかりの、国内外で人気を博した『MGS』シリーズの最新作であり、巨大なプロモーションと共に一定の評価を獲得したゲームである。

発売初期は「グラフィックは美麗だ」「やり込み甲斐があって楽しい」「ボリュームもある」と一定の評価を得たのだが、ある時期を契機に、つまり「終盤」をクリアした一部のプレイヤーから、いくらかの不満が噴出し、それが募って「炎上」したのである。

 

早い話、アツい「手のひら返し」が一週間程で起こったわけだが、この記事はそれについて論じている。概ね、その論点自体は誰もが同意するところで、現に私の記事の中でもいくつか触れている。

面白いのは、この問題に触れた人間が誰かという点だ。GameSparkはまるで「遠巻きに」大衆を見下しているような口調であるが、さて彼ら自身のポジションについて、私は言及したい。

 

ゲームが発売前に評価される現状

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このサイトは、「世間一般の『MGSV:TPP』への評価」について注目しているのだが、私が一番笑ってしまったのはここ。

 

■ゲームはいつ、なにを評価されるべきか

1)ゲームは「いつ」評価されるべきか
こうした状況で低い評価が相次ぐ中、発売前のメディアのレビューとの乖離を指摘する声も挙がっています。

(中略)
果たして本当にそうでしょうか。本作のエンディングがひどいものだと仮定して、その結末がこれまでの数十時間を全て否定してしまうものになってしまうのか。

(中略)

エンディングがどんなに良くても、ゲームプレイに問題があればゲームそのものの評価は良くならない。逆に言えば、エンディングの良し悪しはゲームそのものの評価を極端に左右しない。つまり、エンディングまでプレイしなくても評価することはできる。

 

いやいや。さすがに怒りを通り越して笑っちゃった。「なにがいつ評価されるべきか」だよ。

 

 

・・・さて、この記事と問題点に切り込む前に、まず私自身の「レビューと炎上」についての考えをまとめておきたい。

私が以前、任天堂のTPS『スプラトゥーン』が「極端に」高く評価されているのではないかという疑問に対し、このような記事を書いた。

要約すると、

「『スプラトゥーン』は文句なしの楽しいが、「面白いゲーム」である以上に「語りやすい作品」であるため、他の作品より圧倒的な評価を得てしまった。」

「何故なら、ゲーム自体に語るための(それが面白いかはともかく)”切り口”が多分に含まれたため、発売”前”から既にSNSなどで議論が紛糾し、それらがバイラル的にの評価を形成した。」

といった具合に話をした。

 

つまり、なぜ『スプラトゥーン』の評価が激烈にあがり、同時に「ステマトゥーン」と煽るアンチが生まれたのかと言うと、『スプラトゥーン』自体が他作と比較して明らかに「バブル状態」にある評価が原因であり、

その根底には、SNSやまとめサイトのような、ネット上の「語りたい」欲望と、その欲望を煽ったり実現させるサービスが存在するからだと私は考えている。

 

そして当然、その「語りたい」欲望から生まれた評価は、人の噂の中で実際に「プレイした」評価とは離れていくし、

そもそも「語る」事自体は発売「前」にも出来るため、現代のゲームはTGSやGamesComなどの発売前のプロモーションを通じて、まだ世間に出回る前から(主に賞賛が)一気に募り、それが直接評価に繋がることもあると考えられる。

(現に、『MGS』のゲームプレイトレイラーが発表された時、youtubeやtwitterを通じて、既に一定の評価は獲得していたと言える。)

 

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さて、この『MGSV:TPP』に話を戻すとしよう。

このゲームも『スプラトゥーン』と同じく、SNSなどを中心とした人々の言葉によって、評価が爆発的に伸びて、その直後に炎上した作品である。

ではそこに、それを助長するサイトが存在すればどうだろうか?

 

例えば、ゲームが発売される前に海外誌が発表したレビューを、いち早く記事にし、「海外誌も大絶賛!」とタイトルを付けるサイトがあればどうか?

例えば、海外誌のレビューの中でも、点数やスコアだけを太字で強調し、肝心の根拠やレビュー内容はごくわずかな数文で要約するサイトがあればどうか?

例えば、そのスコアをランキング形式で並べ立て、「平均○○点獲得!これは期待できる!」などと、何の論拠も責任もない「メタスコア」をあげつらうサイトがあればどうか?

例えば、その発売前の何の根拠もないゴシップ記事に、TwitterやFacebookのボタン、更には自前のコメント欄まで設けて、とにかく世論を煽って拡散させることだけを目的としたサイトがあればどうか?

(どうでもいいが、このサイトのTwitterアカウントは2万5000人フォローしている。もちろん、無言のフォロースパムでだ。私もフォローされた。)

 

それが、存在するのである。

 

人気ステルスアクションシリーズ最新作『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のPS4版海外レビューをお届けしました。記事執筆時のMetacritic平均スコアは95点。22件のレビューのうち6件が100点満点、最低点数もWashington Postによる80点と目覚ましい高評価を獲得しています。

 

そう、さっき「『MGS V: TPP』レビュー騒動から見る、ゲームの終わり方とその評価 」などという、大衆を上から見下ろしているこの「GameSpark」こそ、

「海外レビューを無断で要約し」「スコアを平均化し」「コメントやSNSで煽り立て」「ゲームの評価を確立する」仕掛け人の一人である。

 

何かの皮肉か、それとも単なる自爆か。コイツらは、どの面下げて、「ゲームはいつ評価されるべきか?」などと高説を垂れているのか。「ゲームはエンディングに行かなくても評価できる?」と、発売前にこんな腐った「評価」を下すサイトの記者が言えたものだ。

仮にも企業の体を取ったこのサイトが、ゲームを真摯に評価する海外誌にズケズケと入り込み、彼らの誇りあるレビューを無断で要約し、数字だけ拡大解釈した挙句、それを勝手に「まとめ」と称し、SNSで拡散する。

TwitterやFacebookで、「記事執時のMetacritic平均スコアは95点。22件のレビューのうち6件が100点満点、最低点数もWashington Postによる80点と目覚ましい高評価を獲得しています。(原文ママ)」などという文章を読んだ人間はどう思うか。

仮に彼らに悪意がなくとも、発売前で注目の集まる『MGSV:TPP』について語るため、この記事を引き合いにだし、あれこれと意見を述べるだろう。プレイもしていなければ、そもそも誰の意見かもわからない情報を基にだ。

 

なんというか、今のゲームを取り巻く「一部の」環境は目に余るものがある。

ゲームは一人一人が「考える」のではなく大多数が「語る」ことによって評価され、それらを煽ってみみっちいアクセス数を奪い合うゲハサイトが横たわり、その一方でしれっと「コラム」と称して、痛いレトリックで誤魔化した駄文を連ねるのだから。

(一応言及しておくが、記者は別人である。ただ、そもそもの編集は同じ。そしてこの腐った言い訳は、GameSparkという集客力ある媒体なしで、どこまで読まれただろうか。)

 

ゲハサイトの功罪と、ゲームを取り巻くメディア

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まず断言させていただくが、現代のゲームを取り巻く「世論」或いは、「評価」というのは既に相当歪んでいる。

『MGSV』が発売1週間でバカみたいに持ち上げられたかと思えば、もう2週間で各地でボコボコに叩かれていた、その「落差」こそ、その最たる例だろう。(大量の批評を集めたこと自体、”炎上”ではないが)

 

このGameSparkの記事では、その歪んだ評価における主体と動機を「不特定多数のユーザー」に求めている。それは事実の一部としてはそうだろう。しかし、本当に彼らだけだろうか。

例えばこの、海外メディアの記事を勝手に要約して、ありもしない信頼をでっち上げる「メディア」ならどうか。

 

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まず、ゲームの評価を伝達する媒体は「不特定多数のネット上の意見」と、その大衆に寄生する「メディア」で構成されている。

ではメディアは、ゲームの評価にどのような影響をもたらすのか。主にその方向性は二つある。

 

一つの「メディア」は、常に「不特定多数」をひたすら煽り、彼らの愛するファンボーイネタをばらまくことで(”GameSpark”など)、大衆の感情を特定の何かにぶつけさせるメディア。

或いは、ゲーム企業の独占のインタビューや情報と引き換えに、企業の純粋な「広告塔」に成り下がり(”4Gamer”など)、無条件にゲームそのものを神格視し、プレイヤーであると同時に消費者である一般人の消費行動を麻痺させるメディアだ。

(余談だが、後者への指摘に賛同されない方も多いと思う。しかし、彼らのレビューを読んでもらえば、驚くほど保身的な「公式サイト」そのまんまの文法で書かれてる上、パブリッシャの情報が絞られる余り、極めてパブリッシャ寄りの偏った内容であることが伺えるはずだ。)

(現に、「4gamer」誌ではオンラインタイトル『MHF』におけるコラムで、開発チーフが「ガチャ等の課金要素は実装予定がない」と発言した記事を、何の予告もなく削除している。)

エアプレイでレビューとか、ゲーム業界なら常識なんじゃなかったのって話 - ゲーマー日日新聞

ネ実 MHF-G @ wiki - MHFの歴史/シーズン1.0~シーズン10

「当時MHFの経営状態が極めて悪かったが故の実装であることを後年のインタビューで明かしているが、
そんな説明が当時される訳もなく、アイテム課金はしないという約束を破ったということで相当批判された。

 

では、海外ならどうか?

恐らく、「PC GAMER」が語り、「Gamasutra」が調べ、「IGN」が締めに入るだろう。Youtubeで活躍する「Pewdiepie」が遊び、「Flanky」が無双し、「Badger」が茶化し、「AngryJoe」が叩くだろう。

私は何も、カリスマが欲しい、ファシズムが欲しいと言ってるわけではない。ただ向こうの情報を流し見する限り、少なくとも国外では「企業の犬」にしろ「大衆の犬」にしろ発信者が溢れかえっており、情報を貪る聞き手は、より魅力的で個性のある主体を探しているという点だ。

もちろん、海外誌であろうと不正はあり、平凡な意見もある。

加えて、私もダメな、微力なメディアの一部だ。だが断言するが、私は常に「大衆」や「作り手」からは自由な一個人だったし、実際に好き勝手記事を書いてきた自信はある。

 

結論

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この記事は悪い意味で、現代のゲームを取り巻く環境がどこまで腐敗しているか伺わせるに余りある内容だった。

とりわけこの、GameSparkご本人からのありがたい記事はまさしく「自爆」と評すべきだろう。散々大衆を煽って、アクセスを奪い合ってるゲハブログの張本人が、何を言ってんだよと。

(ところで、彼らの『Bloodborne』のレビューはとても興味深い内容なので、プレイされた方ならぜひ一度読んで欲しい。)

 

ところで、あなたは何かの「ゲームの評価」について、疑問を感じたことはないか。

「持ち上げすぎだろ」とか、「叩きすぎだろ」とか。私もよく感じるし、そのために記事も書いてる。

だがそれは、事ある毎に他人に理由を求め、うじうじとファン同士の揉め事に持ち込むのではなく、正々堂々とゲームの評価を見計らって行くべきだと思う。

もちろん、ユーザーや業界への指摘も大切だ。だからこそ、そこは「ゲームはゲーム」「業界は業界」で分けたほうが良いと思う。

 

おまけ

『MGS2』のネタバレあり

www.youtube.com