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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

「難しい」って何だ? ゲームデザインの方向性を5つに分けて考えた

ゲーム業界について

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よく、ゲーマーは最近のゲームが「ぬるすぎる」と言う。

なに、珍しい話ではない。AAA級タイトルが主流となり、市場が拡大するに連れて、ゲームは従来の「ニッチな趣味」から、ハリウッドのような「エンターテインメント」へと変化した。

だが、大作やインディーズもまた、独自の道で進化を遂げているのは確かなはず。であれば、まだ理解されない「難しさ」「奥深さ」が、そこに潜んでいるのではないか。

 

本稿では、ゲームの「難しさ」を定義する、様々なゲームデザインの方向性について吟味していきたい。

 

  1. 多様性ある難しさ
  2. ルールの難しさ
  3. 言語的な難しさ
  4. 時間的な難しさ
  5. 文芸的な難しさ

 

難しさと機会

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まずは、従来の定義における「難しさ」から考えてみよう。

古典的な難しいゲーム、そう『魔界村』や『ロックマン』のような、わずかなミスが命取りとなるゲームがそれに当たる。

これらの「難しさ」は、バランスを一歩間違えると「理不尽」に繋がってしまう。では、難しいままにゲームを面白くするには、何が必要か。私はそれに「多様性のある脅威と機会」が必要だと考えている。

 

この対比をくっきりさせたゲームといえば、やはり『Dark souls』(アクションRPG)は外せない。単純に敵が強いのもそうだが、落下、トラップ、オンラインの侵入、ソウルのロストなど、やたらに「脅威」のバリエーションが豊富なのだ。

ただし、一方的に苦役を与えるだけでなく、RPGならではの成長要素や、武具収集、ルート構築、アクション技術、COOPなど、打開する「機会」がいくらでもある点も特徴的といえる。

 

古い作品なら、『Serious Sam』(FPS)のレベルデザインはすごい。ロケット弾のような回避できる攻撃のダメージは高い代わりに、回避できない銃弾の威力は低いなど、「多様性ある脅威」もそうだし、

こちらもまた、自爆のリスクがあるロケットランチャー、雑魚敵に強力なミニガン、弾数は少ないが一発逆転のキャノンなどを自由に使い分ける「機会」を持ち、それらで無数の敵を捌いていく快感はFPSならではだ。

 

 

ルールの難しさ

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日本のゲームだろうと、海外のゲームだろうと、大抵のゲームは「敵をぶっ殺せ!」という単純なルールに基づいている。

しかしながら、「司令官となって軍を導け!」や「資源を集めて人口を増やせ!」のような「ストラテジー」なルールはどうか。

未経験者にとって、そもそも何をどうすれば倒せるのか、見当も付かない人が大半だろう。何故なら、ゲームの構造やルール自体が複雑なゲームは、ゲームをプレイする前から「難しい」と感じてしまうからだ。

 

中でも、『Age of Empire』シリーズに代表されるRTS等のジャンルでは、元々複雑で膨大な操作に加え、内政と戦争で異なる操作を要求されるため、慣れるまでに時間がかかる。

ただし、ルールが複雑であるからこそ、勝ち筋は無数に存在し、プレイヤーの裁量やセンスもまた自由に発揮できる作品と言える。

だからこそ、構造の複雑さはそのままに、ユーザビリティを向上させることが望ましい。例えば、『Civilization』(TBS)は、実在した歴史をユニットやキャラクターに反映することで、プレイヤーに直感的に理解させた。

 

言語的な難しさ

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プレイヤーがゲームを遊ぶためには、そもそもゲームが何をプレイヤーに求めており、何で持ってクリアとするのか知る必要がある。そのためには言語や記号といった形で、ゲームが自らプレイヤーに語りかけなければならない。

典型的なものでは、ゲームのチュートリアルなど挙げられる。「剣を振るには○ボタンを押してくれ」と、画面上に文字が表示されることで、初めてプレイヤーは敵との戦う手立てを覚える。

しかし、単に文字だけで伝えるのでは、少し没入感が損なわれてしまう。その点、『Call of Duty』(FPS)ではチュートリアルを、「新兵訓練」という形で導入し、プレイヤーが兵士になりきりながら操作を覚えることが出来た。

 

一方で、直接的な説明を意図的に取りあげて、プレイヤーに挑戦させるゲームもある。

『大神』(ADV)は秀逸だ。古代の日本を舞台とした本作では、「筆しらべ」を通して、抽象的な絵を自ら描くことにより、道を拓くことができる。プレイヤーは知恵をこらす喜びと、物語への没入感を同時に味わえるわけだ。

 

時間的な難しさ

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週休二日制を夢見る社会人ゲーマーにとって、「ゲームは1日1時間」はそう珍しいことではない。その上、ゲーム以外の趣味を両立させようとすれば、ゲームを遊ぶための時間を確保することは困難を極める。

ただでさえ、「積みゲー」などという言葉が流行る昨今において、『Witcher 3』(RPG)に代表される大作RPGや、広大なマップの『Grand Theft Auto』(ACT)は、やはりそれなりに腰を据えて遊ぶ必要があると言える。

とりわけ、レベリングのような作業や、無数にあるコレクタブルアイテムは、やはり多くの時間を費やしてしまうため、普通のゲーマーには特に「難しい」。

 

勿論、優れたゲームなら「一本で何十時間も遊べる」とも考えられる。一時間辺りの密度が高ければ何の問題もないし、何十時間と掛けられるからこそ描ける物語もある。

ゲームプレイの「量」より「質」を重んじたゲームは必然的に評価され、また長大な時間をかけて遊ぶからこそ、理解できる面白さも存在する。

例えば、『The Elder Scroll』(RPG)の世界における様々な人種を理解したり、『Final Fantasy』(RPG)の登場人物たちと長く付き合った後だからこそ、プレイヤーは一層強くゲームプレイに引き込まれるのだ。

 

文芸的な難しさ

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最近、深い物語や斬新なアートを、ゲームに落とし込む試みが注目されている。

コンラッドの『闇の奥』がモデルとなった『Spec Ops: The Line』(TPS)、ゴーリーの画風を再現した『Neverending Nightmares』(ホラー)などは、日本でも大きく取り上げられた作品だ。

彼らは「小説」「絵画」ではなく「ゲーム」だからこそ実現する「文芸性」を目指しており、一人称視点を活用した実存主義の表現を試みた『Dear Esther』(FPS)や、物理エンジンを活用して花びらを動かす『Flowery』(ACT)など、あくまでゲームならではのアプローチにこだわっている。

 

とは言え、やはり小説や絵画の面白さ自体が理解できないと、それらのアプローチをゲームで試した、これらの作品を楽しむことも難しい。純粋なゲームプレイに特化した『ICO』のような作品から、あくまで語りに集中するゲームまで存在する。

一方、他の業界における手法が、ゲームの多様性を一層深めているのも事実だ。嫌悪する人もいると思うが、見守るだけの価値があると思う。

 

結論

一般に語られる以上に、「難しさ」の定義は広く多様なものだと思う。当然だが、ゲームは簡単すぎても、難しすぎてもよくない。本稿で挙げたような様々なベクトルを同時に鹹味した上で、うまく調整されたゲームは楽しめる。

いずれにせよ、様々な魅力が求められる現代において、レベルデザインはどうしても疎かになりがちな部分だが、そんな時代だからこそ挑戦しがいのある「難しいゲーム」は必要とされているはずだ。

それは、敵が殺す気まんまんのゲームだったり、何度も遊んで理解できるゲームだったり、不可思議な世界を冒険するゲームだったり、壮大な物語へ漕ぎ出せるゲームだったり、人の苦しみを描いたゲームだったりするのだろう。

プレイヤーは、彼らのその多様な作品に挑戦し、その「難しさ」を噛み砕いて、ゲームの面白さを実感するのである。