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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『Brothers: a Tale of Two sons』の感想やレビュー 操作を通じて知る「兄」の虚像

ゲームレビュー

 

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開発:Starbreeze Studios

発売:2014年1月28日(日本)

対応:Xbox 360、Steam

ジャンル:アクションアドベンチャー

 

ゲーム概要

二人の兄弟を、コントローラーの左スティックと右スティックで、同時に操作するパズルアクション。

ボリュームは一周3時間ほど。

 

父親を救うために

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本作のストーリーは至ってシンプルで、父親が病に倒れたので、二人の兄弟が山岳の奥深くまで薬を求めて冒険する、というもの。

ロケーションは豊富で、最初は山村だったのが、トロールたちの鉱山になり、切立った崖や野蛮人の集落もある。

また、兄弟は至って平凡な人間で、魔法や剣を使うことは出来ない。ゲームは専らパズルがメインになる。

ここで一つ面白い特徴があって、本作はコントローラーの左部分を兄貴、右部分を弟の操作に割り当てられている。つまり、左スティックを倒せば兄貴だけが走り、右レバーを押せば弟が飛ぶといった具合だ。

 

当然、ゲームプレイには兄弟をいかに協力させるかが問われる。最初は、パズルの解に兄弟が協力する程度のものだが、途中からはアクション要素や基本的な操作にも兄弟の連携が必要となる。

特に、最後の方では「兄か弟、どちらかがトチれば両方死ぬ」というマップが出てくるのはとても面白い。

プレイヤーとしても、決して片方に傾注することは出来ず、何が何でも「二人」を生きたまま家に帰してやろうと思えるわけだ。

グラフィックは美しく、UE3にしてはかなりレベルが高い。見下ろし視点故に描写量を節約できた点が大きいと思われる。

 

新鮮味のあるパズルゲーム

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本作の醍醐味は、まずこの作りこまれたゲーム部分にある。

この手の、いわゆる「インタラクティブメディア」と評されそうな、コンセプチュアルな小粒のゲームたちは、ゲームとしては退屈な作品が多かった。

金太郎飴のように2Dアクションかパズルばかりで、文学的なメッセージやグラフィカルなデザインといった魅力が薄れてしまうのである。

 

ところが、本作はルールからして特殊であり、コントローラーをそのまま半分に分割してプレイする上に、ゲーム性もそれに沿っている。

前述した、「最初はパズルを協力して解く程度のものが、最後にはアクション等で一人のミスが兄弟の死を招く」レベルデザインは実に見事。難易度カーブを維持しながら、ストーリーの緊張感、ゲーム性の多様性まで発展させている。

更に驚くべきは、パズル内容がほぼ毎回異なっている点である。例えば、序盤に二人で協力して手押し車を運ぶシーンがある。だが、次に「運ぶ」シーンでは通路が迷路のように入り組んでいて、兄弟がそれぞれ配慮して進まなければならない。

また道中に何気なく置かれているベンチもいい。これは兄弟が座ることでマップ全体を俯瞰できるというものだが、このベンチ一つで「偵察」「チェックポイント」「トップビューによる息苦しさからの開放」「世界観の観光」までこなしてしまうのだ。

 

このように、本作は『ICO』ライクなエモーショナルな雰囲気だけ汲み取っても魅力的だが、ゲーム部分も「新たなルール」と「合理的なレベルデザイン」を踏まえており、とても面白い。

一見よくある「インタラクティブメディア」にして、ゲームプレイに全くの怠惰が見られない作り込み具合は、老舗のStarbreezeならではと言えるだろう。

 

弟の成長(ネタバレ有り)

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最後に、個人的な物語面の考察を含めて、本作を改めてレビューしたい。

 

本作を遊んでいると、私は少なからず居心地の悪さを感じた。

何故なら、コントローラーで「兄」と「弟」の二人を同時に操作するために、自分の感情移入すべき「主人公」が分散してしまうからである。

では、本作はタイトルにある通りに「Two Sons」の物語なのだろうか?むしろ、私には弟の成長物語だったように思える。

 

本作でゲームプレイから唯一阻害された「ムービー」として描かれる、母親と弟の別離のシーン。母親は溺れかけるが、弟はそれを助けることが出来なかった。映画『普通の人々』を思い出す。

そのトラウマがフラッシュバックするかのように、弟は兄貴なしでは川を渡る事ができない。この点では、むしろ兄貴がNPCで、弟を常に支えてやっているかのように感じる。

そして、ある種の自明のように襲いかかる死の運命。結局、この作品は弟が実体験した人生を、一つのお伽話として再現しているようだ。

母親の喪失は弟にとっての瑕疵であり、兄弟の絆を断ち切った契機だった。その二人が、「薬」という具体的な報酬のために、村を出て工場に行き、巨人たちと戯れ、やがて戦いに身を投じる。

元々断絶していた兄弟が、両親の喪失によって必然的に向き合い、冒険の間で絆を育む。

このゲームは、「強い兄貴」と「立ち上がる弟」という非対称な人物を主人公に仕立てあげられながらも、一度断絶したはずの二人を再び引き合わせる人間関係をゲームプレイに昇華させる。

最初は歪だった二人の操作は、「母親の喪失」「兄弟の力関係」によるギャップそのものを表現する。だが、決して二人を俯瞰するだけに留まらず「弟」に焦点を当てている点こそ、本作の何よりユニークなところに感じた。