読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

「グレネード」はFPS・TPSにおける最大の発明である

エッセー

f:id:arcadia11:20160222222313j:plain

待望のベータ版、『Division』をプレイして驚愕した。

確かに、美しいグラフィックや手の込んだマップは素晴らしかったが、それより驚いたのは、戦闘における面白さが微塵も進歩してなかったことである。

 

『Division』はTPSベースのRPGだ。M4やAKのようなアサルトライフルを手に、悪党相手に銃撃戦を繰り広げる。Aボタンでカバーに隠れ、L1ボタンで狙いをつけ、R1ボタンで射撃。メインクエストであろうと、フリーローミング中であろうと、ひたすらこれを繰り返すことが、本作における「攻略」の全てなのだ。

具体的にTPSの起源がどの作品かは諸説あるが、それにしても初代『Tomb Raider』辺りから一貫してこのスタンスは崩されていない。2006年に登場した『Gears of War』は、先述した「カバーシステム」を含めて、ある程度TPSのゲーム性に革新を加えたが、そこから10年近く経過しても進歩がない。ドローンや(スクリプトの)ステルスのような、些末な追加要素を含めてもだ。

別段、『Division』への不満というわけではない。まだベータ版で十分プレイできていないし、個人的には十分期待しているタイトルでもある。

むしろ、昨今のTPS、FPSなら多くのタイトルでも同じ問題を抱えている。シングルプレーメインの『The Order 1886』(2015)、MMOの『Warframe』(2014)、FPSなら『CoD』から『BF』、『Borderlands』(2009)まで。これらは結局、「狙いをつけてバーッと撃つ」だけのゲームだ。

 

逆にTPSの好例を挙げれば、『MGSV:TPP』(2015)は、ステルスとしての選択肢、TPSとしての選択肢は多数あり、これらを組み合わせることで楽しめる。全体的な完成度なら『Sunset Overdrive』(2014)もすごい。「カバーなんてクソ喰らえ!」と言わんばかりに、あちこちのオブジェクトを活用して、跳ねて、滑って、転がり込める。

無論、ファンが懐古してやまない古典的なものなら、多数の敵を最適解の武器で捌く『DOOM』、圧倒的機動力で爆発物をぶっ放す『Quake』、圧倒的な軍勢を相手にする『Serious Sam』もある。

 

そうは言っても、これらの魅力を現行の様々なシューター作品に取り入れるのも難しい話だ。ベテランのノウハウ、多様性あるギミックもさながら、そもそも顧客は「奥深い攻略」を望んでいるのかといえば、そうとは限らない。

この際、「狙いをつけてバーッと撃つ」だけで十分満足だというプレイヤーに、やれロケジャンが、やれ多様な攻略法が、などと言っても魅力に感じるとは限らない。ド派手な演出と、精緻なテクスチャこそ、ゲームに求めるものだという人もいるだろう。

 

そこで本題に戻り、「グレネード」である。私が『Division』をプレイして飽きがこなかったのは、「グレネード」の存在があったからだ。

普段は「スティックとR1ボタン」(ないしは「マウスと左クリック」)で事足りる味気ない戦闘が、「グレネード」を組み合わせるだけで格段に面白みが増すのである。

まず、銃は遮蔽に隠れた敵を狙えず、また複数の敵相手には弾切れを起こす。そこで、プレイヤーはグレネードを使おうと考える。グレネードは投擲できるから、遮蔽物越しに攻撃できるし、しかも複数の敵を一度に処理する攻撃範囲もある。

されど、グレネードは大抵のゲームで貴重品であり、(何故か)湯水のごとく湧き出る弾薬と異なり、使う場面を考えねばならない。ここでリソースの管理もゲーム性に加えられる。ついでに、爆風で自分がダメージを負うこともある点にも注意せねばならず、ハイリスク・ハイリターンな手段でもある。

かように、「グレネード」1つとっても、そこからゲームにもたらされる「戦略性」の多さは大きい。もしシューター作品で、あまりグレネードを使わないという人がいるなら、それは余りに勿体無い話である。

 

とりわけ、「グレネード」の最大の功績は、どんなゲームにも溶け込める身軽さにある。先述したようなステルス要素や、アクロバット要素は魅力的だが、それを組み込むには膨大なコストが必要であり、そもそもゲーム性が大きく引きずられてしまう。

一方、「グレネード」に関しては、仮にそれがホラー、SF、ポストアポカリプス、FPS、TPS、マルチプレー、シングルプレーであっても、問題なく導入できている。世界観、ゲーム性、開発側のコスト、顧客の負担、あらゆる点において、「グレネード」は極めて安価であり、問題なく導入できるのである。

世界観でいえば、グレネードは過去から現在まで現実に使われる武器であり、ゲーム性でいえば、グレネードはシューター部分に違和感なく組み込め、開発側のコストも少なく、顧客も理解しやすい。

だからこそ、大半の「銃をぶっぱなすだけのゲーム」が、グレネードによって戦略性を得た。先述した『DOOM』や『SunsetOverdrive』のような多彩な攻略が、部分的にだがどんなゲームでも容易に実現できると言える。

実際、私自身「グレネード」がなければ、多数のTPSやFPSをプレイする上で、クリアするよりも先に飽きて、投げ出してしまったであろうことは否めない。そもそも、10年以上に渡って変化の乏しいFPS・TPSが、現代まで生き残っている上で、「グレネード」による貢献は極めて大きいといっていいだろう。

 

・・・ん?

f:id:arcadia11:20160222223337j:plain

(対戦型のシューター作品では、プレイヤーの不満の種になることも少なくないようだ)