ゲーマー日日新聞

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『ソウル』シリーズの魅力に迫る -通貨「ソウル」の普遍性について

 

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噂によるとフロム・ソフトウェアが生み出した、アクションRPG『Souls』シリーズは今年発売された『ダークソウル3』をもって打ち切られると言われている。

ゲーム性はピーキーでありながら、これほど多くの人間に親しまれ、愛されてきた『ソウル』シリーズ。

本シリーズの通貨として「ソウル」が共通して採用されているが、実はこの通貨1つとっても制作陣の秘めた工夫と戦略がたっぷり詰まっている。リソースの一元化、それに伴うビルドの自由度とリスク、ロストと消費意欲、そしてエスト瓶という例外の存在・・・。

本稿ではこの通貨1つから本シリーズの魅力に迫りたい。

 

リソースの一元化

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『ドラゴンクエスト』は勿論、現代ではFPSやレースゲームでさえ、「通貨」や「経験値」といった「RPG」要素はよく採用される。各種リソースを積み立てさせ、現状持ちうる「実力」と組み合わせて戦える面白さが、RPGの醍醐味だ。

 

『ソウル』シリーズもアクションRPGであり、リソースの中に「ソウル」がある。興味深い点は、この「ソウル」を用いる幅が大変広く、ソウルがあればレベルアップから武器の強化、スペルの習得、消耗品の購入までこなせる点だ。通貨も経験値も本シリーズではソウルに統合される。地獄の沙汰もソウル次第なのである。

これはプレイヤーに、成長の自由度を与えている。武器を育てるか、プレイヤー自身を育てるかはプレイヤーの選択に委ねられ、自分が理想とするビルドへ最短距離で迫れる。リソースを無駄にすることは決してない。

一方で、これはプレイヤーに迷いを生じさせる。プレイヤーと武器、消耗品のいずれに費やすべきか。そして「どの」スキル、武器、消耗品を獲得するか。リソースの使い道1つで、プレイヤーの知識量と決断力が試されるのだ。

 

『ドラクエ』でいう「通貨」と「経験値」、『Civilization』でいう「パン」と「ゴールド」、用途に応じてリソースを区分するのは、確かにわかりやすい。だが同時に、「限られたリソースを、限られた用途に思考停止で垂れ流す」プレイを生みやすく、結果としてRPGは「作業ゲー」として認識される。

本シリーズはその点を問い直す。RPGは闇雲にプレイ時間をリソースに還元することが面白いのでなく、「持ちうるリソースを長期的にどう投機するか」を考えるのが醍醐味なのだ。その点において、本シリーズは単なるアクションとしてでなく、RPGとしても奥深さを維持している。

 

ロストというインセンティブ

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ソウルシリーズは「マゾゲー」として一般に認識されているが、その代表たるシステムがこの「ロスト」だろう。ロストはプレイヤーが死亡した時、その時所持している万能通貨ソウルをその場に落とし、もし回収できねば全てのソウルを消失してしまう。

プレイヤーは当然「ロスト」を恐れる。ソウルをなくせばレベルアップも消耗品の補給も覚束ない。何より、今まで稼いだ時間が無駄に消えゆくのが堪える。一見して単なる意地悪なロストだが、これもまた本作のRPG要素の奥深さに繋がっている。

 

例えば、本作を遊ぶプレイヤーは一度くらい「ロスト」を経験するだろう、そしてこう考える。「ロストするぐらいなら、さっさと使えばよかった」と。ソウルを貯めこむリスクを知ったプレイヤーは、店なり火防女なりに駆け込むのだ。

即ち、「ロスト」はプレイヤーの消費意欲を弛まず刺激するインセンティブ(動機付け)と言える。現代の日本は「タンス預金」に代表されるように「金を使う危険より、使わない安全」を優先する問題が存在するが、『ソウル』シリーズにおいてはまず「タンス」がないから消費に走るしかない。

 

従来のRPGでいえば、金銭や経験値はただプレイヤーに有利をもたらす金の延べ棒だ。バブル崩壊も、アジア通貨危機もない。あればあるほどメリットになる。その結果として、プレイヤーは金銭や経験値を消費するタイミングを曖昧なものとし、「適当に稼いで、適当に溜める」といった怠慢なゲームプレイを続ける。

ソウルシリーズなら「ロスト」という暴落がある。だから自分には今何が必要で、そのためにいくら何ソウル稼ぐ必要があるのか、常に意識をしてプレイする。そこに駆け引きが生まれてくるのである。

また、単純に「消費意欲」を刺激するだけでも、プレイヤーにリソースを消費する面白さを教えてくれるメリットも指摘しておこう。

 

エスト瓶との比較

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先ほど「ソウル」システムの魅力が、リソースの一元化による明確さと戦略性にあると述べたが、この例外にあるリソースがある。それが「エスト瓶」だ。

「エスト瓶」は回復アイテムであり、ソウルシリーズは一部例外を除き、体力回復にはこのアイテムが必要となる。プレイヤーには装備も、レベルも、消耗品も必要で、ソウルがあれば何でも手に入るが、しかし「エスト瓶」ばかりはいくらソウルを積んでも手に入らないのである。

 

ソウルシリーズのプレイヤーなら一度は経験するはずだ。「ステージも恐らく終盤。中ボス格も倒し、ソウルも大量に持っているが、体力は少なく、エスト瓶もないから回復もできない。先ほどまで巨大なドラゴン相手に戦ったが、今では雑魚敵に一突きされても死んでしまうだろう。矢弾尽き果て、散るぞ悲しき。」

本作はアクションRPGだ。敵の攻撃は熾烈だが、回復は基本的に「エスト瓶」に頼る他ない。ありがたいことに、ソウルシリーズでは「篝火(チェックポイント)」に触れる度、エスト瓶は最大値まで回復する。しかし、エスト瓶の回復量、装備量を増やすためには、専用アイテム「エストのかけら」その他が求められ、万能通貨「ソウル」によっては強化も補給も出来ない。

「エスト瓶」は一見して初心者救済システムである。ソウルが枯渇して回復アイテムが買えないことが生じないよう、無償で、「誰に対しても」同じ量だけ与えられる。だが一方でソウルで肥えた成金中級者が買い漁ることもできず、詰み防止はするがゴリ押しは認めないという、極めて中立的なシステムと言える。

 

粋だなあと思うのが、エスト瓶の世界観設定。不死人は篝火の”エスト”を瓶に溜め、それを巡礼に持ち歩く。そして不死人の成長と共に、エスト瓶もまた力を取り戻していく。『ダークソウル』において、名も無き騎士からエスト瓶を託されるシーンは、まさに名シーンと言って良いだろう。