ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

伝説的ゲーム実況者「Dunkey」を日本で紹介したい

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今や「ゲーム実況」はゲームにおける市場、文化、コミュニティにおいて、欠かすことの出来ないコンテンツ。私自身も、一部の面白い動画を楽しく観賞させてもらっている。

しかし、ゲームを遊び、そこに自分のトークを入れ、動画としての編集を加える。この過程はいくらでも「手抜き」することが出来て、極端な話「適当に遊んで、適当に喋る」だけの動画なんていくらでもある。正直、日本で伸びる動画の多くがそうではないか。

同じゲーム実況でも、海外のそれは遥かにレベルが高いものが多い。「遊ぶ」ならプロゲーマー顔負けの腕前、「喋る」ならコメディアン並のトーク力、「編集」ならテレビ番組同様の見やすさ。何より、実況者一人ひとりに個性があり、自分の強みと弱みを把握して動画を作っている。

 

中でも、私が一押しするのが「videogamedunkey」こと、Dunkey氏だ。彼は専らオンラインゲーム『League of Legends』のプレイ動画をメインにしていたが、今ではインディーズからAAA級まで幅広いゲームの動画をアップしており、チャンネルのサブスクライバーは約250万人、平均再生回数も1動画につき100万~200万再生をザラに超える。

彼が最も得意とするのは「喋り」、つまりトーク力だ。まぁ海外youtuberを日本で紹介したいと言っておいて、言語の壁がデカい「喋り」を推すのはどうかと思うが、それでも彼の「喋り」は本当に面白いし、癖になる。

そこから、「喋り」を含めた「プレイ」「編集」に強い一貫性を持つ魅力があり、彼自身の個性を決定づけているところが、Dunkeyのファンが絶えない点だろう。さて、ここからは彼の名作の数々を紹介していきたい。

 

Ultimate Skyrim /J1N1による日本語字幕追加済

往来の名作『The Elder Scroll V: Skyrim』に、大量のMODをぶっこみ、カオスなゲームプレイを愉しむ動画。

開始2秒で「これが世界で高評価を受けたスカイリムで~」と話しながら、突如現れた門にぶちあたって転げまわるシーンから始まり、キャラメイク、チュートリアル(この間、「トーマスMOD」が盛大に暴れる)の流れを1分でぶった切る。

この間、Dunkeyは「笑い」という安直なリアクションを見せるどころか、「これがスカイリムか。スカイリムが助けに来た。センキュースカイリム。」などと、既に自身がボケに走っている。視聴者はシュールさと不条理さに笑う他ない。

オチにはMudcrabがトップハットとモノクルレンズを装備し、マスターチーフが弓を構えて「Lets get fuck out here!」。するとDunkey動画へのサブスクライブ・リンクがでかでかと登場する。

 

常人ならバニラ版のSkyrimだけで数十本の単調な動画を量産するだろうが、Dunkeyは名作『Skyrim』の魅力をギュッと3分、たった3分35秒で収めてしまっている。因みにDunkeyのSkyrim動画はこれだけだ。

それでいて、ただカオスな笑いでゴリ押しない。MODで混沌としたゲームプレイをDunkeyは自身も引っ掻き回すように楽しみ、それでいて要所を切り取るため同じ笑いを使いまわそうとしていない。本質的に彼の動画は、カオスどころか極めて洗練されたものなのだ。

 

Da Sims

ごく普通の社会で普通の人生を楽しむシミュレーション『The Sims 3』。このゲームもDunkeyにかかれば、「Dunkey World」の一部となってしまう。

まず主人公の赤ん坊の名前に「カニエ・ウェスト(有名なラッパー)」と名付け、父親の性格を「子供が嫌い」に設定。「and here is his dad who dislike children.」と当人はサラッと流す。

当然、父親と赤ん坊の関係は険悪なものとなるが、Dunkeyはあくまで「子供嫌いな父親」に肩入れし「夜中の3時じゃねえか!黙ってろ!」とマジギレ。しまいには「おっと、これは事故だよ(O↑ops!の発音が好き)」と言って子供を焼き殺そうとする。

 

本来、The Simsの大半のプレイヤーは健やかな赤ん坊の成長を願い、我が子同様と言わないでも、それなりに慎重に育児をしようとするが、Dunkeyは「所詮ゲーム」と言わんばかりのサイコっぷりを発揮。

ついには父親(40歳)は赤ん坊により焼き殺され、カニエ・ウェストは満足気味(ハッピーバースデー!)、だが父親の幽霊を迎えに来た死神が、カニエの腐ったマカロニをシンクに流したことで逆上する。

そして27年後。ビッグになったカニエは、新築の家にあったテレビをビンテージカーに「アップグレード」。Dunkey曰く「Live and Learn」。そして27年前のマカロニの復讐を死神に果たす。(因みにNPCを殺せるのはMODで追加した機能)

 

極めて高い自由なゲームプレイが認容される『The Sims』において、あくまで「Dunkey流」を貫くサイコな個性的なゲームプレイを魅せ、尽く珍妙なアクセントのトークで場をからかうDunkeyのトークと相まって、もはやゲームプレイ動画であることも忘れてしまいそうになる一本。

個人的に、開幕50秒で赤ん坊を燃やすシーンと、「古いテレビだ、アップグレードしよう」と言って車を屋内に設置するシーン(ついでにBGMもかかる)が何度も見返す程好き。

 

I'm Done With League of Legends

先述したように、Dunkeyは『League of Legends』(以下『LoL』)のストリーマーとして特に知られ、投稿した動画の数は約200本近くにまで上る。

普段、とてもユニークな動画で楽しませてくれるDunkeyも、時折「真面目な話」をすることがある。この動画は、それまで精力的に動画をアップした『LoL』との決別を、彼自身の問題提起を含めてアップした動画である。

 

要約するとこうだ。

「私は『LoL』の動画を作ることを辞める。自分はLoLで一定期間のBANを受けた。理由は「暴言」だが、自分が暴言を吐いたプレイヤーは極めて悪質かつ意図的なゲーム放棄に対するものに過ぎない。

『LoL』のプレイヤーにはトロール、フィード、AFK、やつ当たり同然の暴言を平然と行うプレイヤーが横行している。彼らの悪意が許されていて、その悪意への反論が許されないのか。

更にゲーム自体、プレイヤー間の実力に基づかずチーム間のそれを強制するような調整がされており、先述した悪質なプレイヤーが存在する限りそれらは苦痛にしかならず、個人の努力が報われない。

私は4年に渡り『LoL』動画をアップした。この最後の動画をアップするため、BANを解除してくれとメールを送ったが、返事は「なんて暴言だ!」だった。Riotは私に何ら感謝もしてないし、報いることもなかった。

本来なら個人の努力、友人との成長を楽しめるゲームのはずだったが、現状ふざけた人間とチャットファイトする程度しか楽しめない。もう『LoL』を尊敬できない。私は『LoL』を辞める」

 

Dunkeyは自身がBANされたことに抗議の声を上げた。確かに、この意見は人によってそれぞれで、いくら悪質なプレイヤー相手でも暴言は許すべきでないと考える人も多いだろう。

私自身、個別的なDunkeyへのBAN処置が間違っているとは言わない。しかし、彼の訴える内容は現状の『LoL』に根強く残っている問題であるし、事実「”先に”トロールプレイをした人間がBANされず、”それに対し”暴言を吐いた人間がBANされる」運営の方針は間違っていると思う。

この問題は別の記事で掘り下げるとしても、Dunkeyは自分のネームバリューがありながら、炎上を恐れず、疑問に対してストレートに抗議する。彼は単なるピエロでなく、通すべき筋を通していると思う。(こんな動画でさえ「面白い」のだからすごい)

 

 

幾つかの動画を紹介したが、彼の最大の魅力は、優れた質の「プレイ」「トーク」「編集」から一貫性を持って構成される「ユニークさ」だと思う。

ゲームプレイ動画は、どうあがいてもゲームそのものの魅力に依存し、悪く言えば便乗する。だからこそ、ゲームそのものとは切り離されても通用する魅力、個性が求められる。

Dunkeyは各技術に加えて、その個性がずば抜けている。誰もDunkeyのマネは出来ないし、だからこそDunkey動画には安心感すらある。ゲーム実況動画を作る上で、Dunkeyの作品は1つのマイルストーンだとさえ思える。

 

因みに、筆者は『Ultimate Skyrim』のみ日本語字幕を作成したが、他の作品にはまだ手がつけられていない。もし語学力に自信のある方で、Dunkeyの魅力を知ってもらえたなら、是非日本語字幕の作成に協力して欲しい。