読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『アンチャーテッド4』の感想やレビュー B級からA級へ

ゲームレビュー

f:id:arcadia11:20160517162315j:plain

 

ゲーム概要

ノーティドッグの開発する『アンチャーテッド』シリーズ最新作。冒険王ネイサン・ドレイクが、未知の秘境を求めて冒険するTPSだ。

今作では海賊ヘンリー・エイブリーの残した遺産を求め、世界各地を奔走する。それと同時に、ネイサンの兄サムの登場と、ネイサン自身の過去を掘り下げる物語も展開される。

 

『アンチャ』ってそんな面白いの?

f:id:arcadia11:20160517162354j:plain

と、思う人も多いと思う。

唐突な話で申し訳ない。しかし、アンチャの評価に違和感を抱く人は、少なからずいるはずだ。実際アンチャはすごい。シリーズ通して国内外で絶賛の嵐。SONY機限定であるにも関わらず、だ。

その割に、「具体的にどうすごい」かは伝わってこない。せいぜい、グラフィックが綺麗だからとか、演出が派手とか、月並みな答えしか帰ってこない。事実、私が初めてアンチャに触れる際も、この疑念を捨てることが出来なかった。

 

それでも私の答えは、「はい、『アンチャ』は面白いです」だ。そして本作、『アンチャーテッド4』は紛れも無い名作だった。

確かに、『アンチャ』は個性が薄い。「パクリの塊」といっても言い。抜本的なTPS部分は『GoW』で、冒険というコンセプトは『Tomb Raider』、アスレチックは『Assasin's creed』、ステルス面は『Splinter Cell』から、まんま引き抜いている。

こう説明すると、”硬派な”ゲーマーにはウケが悪い作品だと思うし、事実人を選ぶ作品だと思う。古典的な定義でいう、ハードで戦略的なゲーム性は期待できない。

一方、『アンチャ』は既存の技術とノウハウを徹底的に煮詰め、無理なく詰め込み、総合的なクオリティや仕上がりという点で、1つの到達点に辿り着いている。そこから導かれる、マニアから一般人まで幅広く平等に楽しめる「多様性ある作品」として、本作はオリジナリティ溢れる作品だと思う。

 

B級からA級へ

f:id:arcadia11:20160517162518j:plain

『アンチャーテッド』は喩えるなら「B級映画」だ。どこかで見たような設定とノウハウを土台としながら、再構築された作品。実際、『アンチャ』自身がインディー・ジョーンズに触発されたB級映画というコンセプトを意識していることは違いない。

本作は主に、物語を主導するカットシーン、未知なる土地を探索するアスレチックシーン、敵兵と戦うステルス・シューティングシーンの三部構成で、律儀なまでにこれらのシーンが順繰りに用意されている。

カットシーンではベタな冒険家同士の掛け合いを楽しみ、アスレチックシーンではスリルある(何度も落ちそうになるお決まりも健在)冒険を楽しみ、戦闘シーンでは他のシューター作品で何度も楽しんだ銃撃戦を楽しむ。

だからこそ、アンチャはB級映画、いや「B級ゲーム」なのだ。どこも既視感ある、よく言えば安心する程にベタな体験が待っていて、プレイヤーは客観的に「ああ、ゲームってこんなもんだよね」と娯楽を楽しむことが出来るゲーム・・・だった。

 

『アンチャーテッド4』が目指したのは、このB級・娯楽ゲームからの脱出だった。従来までのアンチャーテッドは多様性あるゲーム性、迫力ある演出、ベタなストーリーを混ぜたその完成度から評価された。バランスの良い作品だったが、物足りなさは拭えなかった。

一方、『4』では各要素が際限なくブラッシュアップされ、「A級」の作品に引けをとらないレベルになっている。

 

最も磨き上げられたのは、ゲーム性の中核をなすシューター部分だろう。古典的な名作FPS・TPSと比べても引けをとらない程、銃撃戦の戦術性は増している。

まず、一本道をひたすらカバーに隠れながら進む従来のデザインは(『2』から既に改良されつつあったが)、立法的かつ幅広い箱庭風のマップを、ステルスとアクションを駆使して戦う、『Farcry』のようなスタイルへと刷新された。

ここで活躍するのが、新登場するロープだ。これを使うことで、ネイトはターザンのようにマップを縦横に移動することが出来、ダイナミックな戦闘が楽しめる。細かい点でも、弾薬の配分や敵兵の出現パターンといったレベルデザインの純度はかなり高い。AIの実力も高く、敵はカバーを頻繁に移動したり近接攻撃を仕掛けるなど、常に緊張感ある闘いが用意されている。

f:id:arcadia11:20160517163742j:plain

爆発物でカバーを吹っ飛ばすアサルトプレイから、完全ステルス可能なマップまで存分に楽しめる。近接攻撃がめちゃ強いのも本作の特徴。

 

次はアンチャの醍醐味でもある美術面だ。PS4作品の中でもそのグラフィックスの精度はダントツであり、遠景から葉の葉脈までシッカリ描きこまれ、看板やポスターの文字すらしっかり読み取れる次元には、感動すら覚える。

とりわけ本作で強化されたのが、物理エンジンとそれに伴う演出だ。銃弾や爆発で人から遮蔽物まで木っ端微塵に吹っ飛び、演出の爽快感を跳ね上げると同時に、戦闘の戦略性まで向上させている。

物語面に関しても、従来までのB級映画オマージュな脚本をベースにしつつ、本作はやや重いヒューマンドラマを導き出している。死別したはずの兄や妻エリスとの衝突、宝を巡る悪党との(ベタな)戦い、そして消えた海賊王の真の目的。これら三重の物語が、無理なく平行して進むことで、ライトながら常に続きを期待させる物語に完成させている。

特に白眉なのが、登場人物への掘り下げだろう。プレイヤーの行動1つ1つをキャラクターがチャカし、素晴らしい演技で彼らの個性を見出す。物語自体は一見チープなのに、思わず彼らの行く末を見届けたくなるのは、そういうミクロな脚本と演出がギリギリまで練られているからだ。(何時間もじっくりと付き合える、ゲームにしか出来ない豪華な技術だと思う)

f:id:arcadia11:20160517162556j:plain

シワ、浮き出る血管から、ヒゲの一本一本まで。

 

究極的な多様性を目指し

f:id:arcadia11:20160517163756j:plain

本シリーズのキャッチコピーには、代々「Playする映画」と付けられてきた。従来作ならそうかもしれないが、本作は違う。紛れも無く「Playするゲーム」、即ち純然たる理想的ゲームの1つだと言える。

本作は外見的に、「映画らしさ」を取り込んでいる。冒険活劇というキャッチーなテーマ、ゲームプレイの合間に挿入されるカットシーン、演出も大いに映画を参考にしただろう。

 

それでも尚、本作の本質は「ゲーム」だと思う。例えばムービー。本作はムービーだけで物語が進行することはない。むしろムービーはゲームの添え物であり(当然だが)、ゲームプレイの中で拗れた人間関係の精算、悪役との開戦、舞台の移動など、必要なときに必要な部分だけ流す。

あるいは、冒険活劇というテーマ。一見退屈そうなテーマなのに、本作はバカ正直にこのテーマの魅力を引き出す。マダガスカル島の美しさを描いてプレイヤーの感動を呼び、海賊の歴史的ロマンを紐解いて探究心をくすぐる。

雑多なゲーム性ですら、シューター面を中心として徹底的に面白さを磨かれ、銃撃のスリルと戦術性の駆け引きを実現する。ただ崖を登るだけだったアスレチック1つとっても、パズルと演出を混じえて飽きさせず、もう十分だと思ったらサッパリ別の場面に移行してくれる。

 

f:id:arcadia11:20160517163824j:plain

ヒロインのエレナは、揺れ動く感情を台詞と表情で訴え、ありがちな人物ながら極めて存在感は強い。

 

本作は何も「スカした」事をしていない。自尊心たっぷりの革新性や、歴史に残ろうとするフィーチャーも特にない。特定のマニアに媚びる内容もない。大衆っぽさを拭おうともせず、その「娯楽」を隠そうともしない。

だからこそ、誰にでも楽しめる多様性、全体的なデザインをバランスよく磨く美麗さ、中庸を突き詰めた先にある1つのオリジナリティが本作にはある。

それを支えるには、無論絶え間ない努力が問われる。一部でも手抜きをすれば、そのバランス的美徳が失われ、「B級」に転落する。事実、初代『アンチャーテッド』はそうだったと私は思う。

本作は、王道の先にある1つの到達点だ。ゲームを遊び、そこで駆け引きや爽快感、達成感を得ながらも、ネイトを含めたゲームプレイそのものと、能動的な操作を通じてプレイヤーが一体化する。そこに筆舌に尽くし難い「エモーション」が宿る。極めてシンプルながら、ここまでの純度はそうはない。

そこに、あらゆる方向・面を磨き上げた、究極的な多様性が本作に眠る。マニアだから遊べるわけでも、素人だから楽しめるわけでもない。遊んだ人間なら、誰もが平等に評価しようとする。そこに「Playするゲーム」としての原点、1つの答えが眠る。

f:id:arcadia11:20160517164017j:plain

全ての冒険は、この窓を飛び越えることから始まった。

 

(ただ1つだけ不満点を挙げるなら、『2』などの従来作に比べてロケーションが少なかった点は残念だ。リバタニアを含めてジャングルが多すぎるので、市街地編や他国のマップをもう少し欲しかった。

あと、17世紀の遺跡にキャスター(コロコロ)付きの台があるのは、さすがに違和感があったのだが。)

 

---

 

f:id:arcadia11:20160517164040j:plain

↓20年後

f:id:arcadia11:20160517164126j:plain