ゲーマー日日新聞

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【評価】『ポケモンGO』の感想やレビュー 作品として冷静に評価してみた

 

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ゲーマーやブロガー以前に、ひたすら思ったことを正直に言ってます。ノスタルジーとか欠片もありませんが、それでもよろしければどうぞ。

 

要旨:

・ポケモンGOは位置情報とカメラ機能を使用した、二重の拡張現実を軸とする新鮮味のあるゲームである。

・開発の軸は『ポケモン』より『Ingress』が強く、熱狂の根拠は米国の『Ingress』の普及にある。

・内容そのものでは、対戦要素と収集要素が噛み合っていない。『Ingress』は対戦要素に特化しているため、奥深いゲーム性が個性となっている。

・また運要素が余りに強く、最初こそ万人が楽しめるシンプルなゲームと感じるが、少し遊べばガチ勢によって初心者はむしろ締め出されている。ポケモン要素も薄い。

・可能性の塊だからこそ、単なる熱狂の中で消費するのは惜しい。本作はまだα版であって、コンテンツ量以前に、抜本的な方向性を確立する段階にある。

 

ゲーム概要

株式会社ポケモン米Nianticの共同開発によるiOS/Android用アプリ。

GPS機能をベースに展開される現実のマップを活用しつつ、公共施設等を架空の「スポット」として設定し、それらを中心に歩きまわることで、様々なポケモンをゲットしたり、スポットを巡ってプレイヤー同士の対戦が可能。

 

「グラウンド・ゼロ」を生み出したNiantic

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『ポケモンGO』の発表以降、数々の評価、懸念、期待、紹介をするメディアが飛び交い、私もそのうち多くを読んできた。

だが1つ引っかかったことがある。それは話が大きくなり過ぎて、これはゲームであるという前提での意見や、ポケモンのコンテンツとしての意見が、圧倒的な情報量の中に埋もれているように思える。

ゲーマーでもポケモンファンでもない、そんなマジョリティがこぞってハマることで、大衆向けメディアもそこに集る。とても理想的な話ではあるが、評価が白熱し過ぎているように思えるし、もっと言うなら単なるカネ目的で一部メディアに「消費」されてるとすら思えてくる。

そこで本作を1つのコンテンツとして、私個人の率直な印象として評価したい。

 

ではまず、何故ここまで白熱するほど、ポケモンgoは人気を得たのか。これは開発陣に注目すればわかりやすい。

まず、稀に誤解されているのだが、主要の開発陣は任天堂でもゲームフリーク(各『ポケットモンスター』シリーズの開発)でもなく、米Nianticと株式会社ポケモンである(当然、両企業から多くの人材が携わっているが)。

まず、Nianticという企業について。こちらは日本人にも聞き覚えがない方が多いと思うが、GPSを活用した陣取りゲーム『Ingress』を開発した元Google社の開発部門で、『Ingress』の発展と共に独立した企業だ。

『Ingress』は2チームに分かれたプレイヤーが、世界各地のランドマークを確保し、その合計量で勝負するという『ポケモンGO』のジム制度に極めて類似しているルールがある。

つまり、傍から見ると不可思議なまで成功した『ポケモンGO』は、あくまでNianticの『Ingress』のノウハウを直接本人らが継承させた作品であり、本作の「熱狂」は、既に米国で確立された企業と作品の評価があってこそ、という点を踏まえれば納得がいくだろうか。

既に1400万ダウンロード以上された『Ingress』と、それを確立した元Googleのエリート集団Niantic。そこに強烈な『ポケモン』ブランドの個性が加わることで、米国での成功は確立された。更に、米国での大成功と熱狂が、文化的に影響力の強い日本に流れ込み、現在に至ると言えるだろう。

 

二重の「現実」

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ではここから、『ポケモン』を含めた様々なゲームをプレイしたゲーマーとして、冷静に本作を評価したいと思う。

 

本作の遊び方は簡単だ。プレイヤーが位置情報に照らし合わせて現実のスポットへ移動すれば、そこからアイテム等の報酬を得たり、ジムリーダーとして各プレイヤーと対戦することが出来る。

また、移動する間、偶発的に「ポケモン」と遭遇することがある。ポケモンはカメラに撮影される切り取った現実空間に出現し、バーチャルのモンスターボールを投げることで確保できる。

本作でプレイヤーが取れるアクションはこの2つと極めてシンプルだ。このわかりやすさが多くのプレイヤーに受け入れられたのは事実で、GPSによるマクロな現実と、カメラによるミクロな現実、二重の現実空間がゲームと重なるこどで、シンプルながら無限の奥深さと興奮を生み出している。

ネットでは「オバマケアより米国人の健康を確保した」などと冗談混じりに言われる程、プレイヤーは歩く。どれくらい歩くかと言えば、ミニリューを探してたら気付いたら各停2駅分移動してたほど。

実際に歩き、ポケモンと遭遇し、目的地に辿り着けば、観光ついでにプレイヤーとのささやかな交流もある。『Ingress』の理念でもあった「外で遊ぶゲーム」という理想は達成され、私も子供のように夢中になれた。

 

しかし冷静に考えると、まだまだ未発達な点が多いのも事実だ。

確かに、歩きまわってポケモンやプレイヤーと交流するのは新鮮で楽しい。だが、実際はスポット巡りもポケモン乱獲もほぼランダム要素の塊だ。投入した金銭と時間のみ結果に反映され、プレイヤーの個性や努力がゲーム内に反映されることはない。

この部分に限れば、巷で非難されるソシャゲと変わらない。せっかく外に出て集まっても、プレイヤー同士の繋がりもなければ、コミュニティで共有するものもない。話すネタも、何をゲットした?とかで済む。

また対戦要素でもあるジム戦は、ポケモンのCPと呼ばれる唯一にしてランダムのステータス・数値により決まるため戦略などはほぼ存在せず、またシステム上、一方的な対戦しか実現しないため、激戦区なら30分と経たずジムが乗っ取られてしまう。(『ACV』?)

 

『Ingress』と比較 何が不足しているのか

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ゲームとしての面白さなら、既に数年先行して運営している、同Niantic社の『Ingress』の方が遥かに奥深い。まず単純にプレイヤー同士の対戦に重きを置いているため、コミュニティが発展しやすい。

陣取りゲームとしても、ポータル確保のための「ハック」、ポータル破壊のための「レゾネーター」、各ポータルを補助する「MOD」があり、またポータル同士を線でリンクしないと得点にならないため、効率よくポータルを維持する地政学的な戦略も立てられる。

例えば、街中のポータルなら簡単に確保できるが、自然の中のポータルは確保が難しい。なら登山家や釣り人が、自慢の体力を生かして遠い場所のポータルを確保し、一般的なプレイヤーは、コミュニティの物量作戦で街中のポータルを確保する。集団の移動を事前に察知し、それを妨害する前線部隊と補給部隊が連携して反攻作戦に出るなど、ハードなコミュニケーションも重要な要素として存在する。

ここで、位置情報を活用したゲームとしての魅力が見えてくる。まず他プレイヤーと対戦している前提があり、陣取りゲームとして訪れにくい場所ほど価値も増すため、歩き回る努力とゲーム内での成果がイコールとして成立する。そこに戦略が生まれ、コミュニティが築かれ、プレイヤーの達成感もあるのだ。

 

一方で、『ポケモンGO』はどうか。ポケモンを入手して楽しむも、対戦に打ち込むも良しといえば聞こえはいいが、この2つのゲーム性は未発達な上に繋がりが極めて弱い。

本作は大前提として試行回数がモノを言う。強いポケモン、魅力的なポケモンを得るには、どこでもいいから歩きまわり、何でもいいからアメやほしのすなをぶっこむしかない。単純作業が苦手な人間には長続きしないだろう。

また奇妙なことに、このランダム性こそ初心者を排除している。本作のわかりやすいと評価される、『Ingress』より単純化された陣取り、ランダムで決まるポケモンのステータスといったゲーム性では、数をこなす廃人の前には初心者は全く歯が立たず、現に大半の日本人プレイヤーは、CP数千とかのポケモンを確保する廃ゲーマーの外人にボコボコにされている。

対照的に『Ingress』は入門こそハードだが、その発展されたゲーム性故に初心者やカジュアル勢でも貢献できるデザインに富んでいる。

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UIはくっきり見やすく。

 

期待と興奮のアルファビルド

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リリースされた直後だし、そりゃ不満もあるだろうと私も考えている。それでもここまで述べたのは、現在の『ポケモンGO』の課題は、ただコンテンツを増やせば改善するというものでなく、方向性が見えてこない不透明性にある点だ。

『Ingress』にしても、初期はコンテンツ量も少なければ、ルールも未発達で、米国ですらうまく浸透しなかった。ユーザーのアイディアと、開発陣の努力が、数年の時を経て今に至る。だが拡張現実をゲームの中に反映する尖兵として、抜本的な革新性があったからこそ、ユーザーの根強い支援も得られた。

だが、『ポケモンGO』は同じ開発陣とノウハウを共有していながら、固有の魅力は埋没しているように思う。ARゲームとして、蒐集ゲームとして、対人ゲームとして何が面白いか、「ポケモンファン用『Ingress』」ではなく、『ポケモンGO』として夢中になる魅力はどこか。

同時に、私も愛する『ポケモン』シリーズの魅力も眠ったままだ。日本らしい奇妙な世界観、運と相性と戦略が絶妙に混ざった対戦。ポケモン達の個性も最高だ。愛らしいブイズ、怪しげなレアコイル。だが『ポケモンGO』の世界観はまだ淡白で、バトルやポケパルレのように、ポケモンとの絆を感じさせる要素も薄い(「博士に送る」ってお前)。

 

本作は可能性の塊だ。初めて遊んだ時の興奮は、そりゃもう新作『ポケモン』や現行『Ingress』にはないものだった。なんたって、目の前にピカチュウがいるわけだし、街中にポケモン好きがいて、そいつらと一緒に遊べるわけだから。そりゃ今のヒットも頷ける。

しかし、友達と一緒に歩きまわったり、自分のポケモンの自慢をしあってる内に、少しずつ「願望」が見えてきた。ああすれば、こうすれば、もっと最高なのにと。本作は最高の素材を最高の調理人が作っているのだから、興奮するのは当たり前だ。

正直、現状の熱狂ぶりは少々異常に思える。往来の人気コンテンツがそうだったように、みんなが興奮し、熱狂するだけでは「消費」するだけで終わりかねない。(カネの臭いだけ嗅ぎ付けて集まる連中なんて大体薄情なもんだ)

『ポケモンGO』は良く言って、まだアルファ段階だ。コンテンツの「量」ではなく「方向性」を求められる段階である。『Minecraft』や『Ingress』と同じく、面白くなるかは今後の発展にかかっている。手放しで絶賛するのは早く、過熱化させすぎて使い潰すのも勿体無い。可能性の塊だからこそ、もう少し色々な目線で考えても損はないと思う。

 

まだ実装されていない要素もちらほら。交換は今すぐにも欲しいね。

 

 

(え?『ポケGO』 はゲームやポケモンの枠組みに収まる器じゃない?まぁ、この記事は私個人の意見であって、業界レヴェルのポケGOの未来とか可能性を否定するつもりはございませんと言っておこう。

ただまぁ、一部の熱狂的な人みたいに、可能性とか展望を理由に現状の課題に目を背けて絶賛するって、努力の上で改善した既存のコンテンツを評価する上で不公平なんじゃ。

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(あと、世代的にそんな遠くないはずだが、自分もクラスメイトもポケモンにどっぷりハマる幼少期がなくて、当時から完全にアニメとゲームのやつって割り切ってたから、ほかの人ほどノスタルジーに浸れなかったならすまん。ゲームは友達と遊んでて楽しかったし、映画も観に行った思い出はあるけどね。)