ゲーマー日日新聞

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【評価】『ライフイズストレンジ』の感想やレビュー ADVの可能性

 

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物語に関する核心的なネタバレは避けています。ご安心してお読みください。

ただし筆者の気は触れています。

 

基本はADV+自由行動

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フランスの「DONTNOD」社から出た本作、『ライフイズストレンジ』は、アメリカの田舎町を舞台に女学生が様々な謎を解く、アドベンチャーゲームだ。

「DONTNOD」社といえば、TPS『Remeber Me』が有名で、秀逸な世界観やシステムといった良い点もあったものの、全体的な品質が今ひとつで、光るものはあるが生かし切れないチーム、そんなイメージがある。

 

本作『ライフイズストレンジ』では、アクションやゲーム性をある程度切り捨て、世界観やストーリーといった点を特化できるADVを採用したことから、DONTNODらしいデザインがより輝いている。

舞台となるオレゴン州は、穏やかなビーチと豊かな森のコントラストが美しく、担当が「印象派を意識した」と語る独特の温かみのあるライティングで、一層引き立てられている。

一方、主人公マックスの通う学校では、シビアな人間関係、多感な学生による未熟さ、それぞれの家族との諍いなど、プレイヤーなら誰もが経験したことのあるであろう「ありがちな」悩みが話題の中心となっているため、ゲームプレイ時も共感し易い。

 

ゲームは中途半端なミニゲーム要素(ほんのごく一部ステルスシーンがあるけど)はバッサリ切り捨て、基本的に限定的なオープンワールドと会話が中心となって進んでいく。

その分、「会話」を通した戦略は重視され、また取り返しのつかない選択肢、いわゆるタフ・ディシジョンも連続する。ちょっとした行き違いや誤解でキャラクターの機嫌を損ねることもあるし、最悪彼らの生死にも関わることにもなる。

ここまでならTelltaleのADVのパクリ・・・と思いきや、本作のユニークな点が先ほど少し触れた主人公の能力、タイムリープだ。仮にキャラクターが死亡しても、その瞬間に巻き戻すことが出来るので、選択肢を好きなように修正できる。

え?でもそんなことしたらヌルゲー過ぎないかって?ははぁ、まぁそこは一度プレイしてみて欲しい。最も、開発陣曰く「どうせADVの選択肢って、セーブ&ロードでやり直せるじゃん? なら最初から時間を戻せれば楽だと思ったんだ」・・・だそうだ。

 

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↓ナウな話題についていけない・・・

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↓せや!時間巻き戻したろ!

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やったぜ。

 

日本とアメリカの「青春」と差異

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本作は5つのエピソードから構成されており、エピソード毎に主人公らに何らかの事件事故が起き、またそこから彼らは共に成長していく物語だ。

正直言えば、私は最初のエピソードが退屈だった。まるっきり、平和な学校生活を平凡な会話で過ごすだけであり、魅力的なキャラクターの紹介や、今後の伏線なども散りばめられているものの、続きを遊ぶ気にはなれなかった。

(そりゃ、ゾンビに追いかけられるADVの方がワクワクするよな!)

だが、物語はエピソード2の衝撃的な展開から加速し、私はそのままクライマックスまで休日を使って一気にクリアしてしまった。一見退屈なテーマを主題としながら、ここまでまとめきる脚本家の力と、そこに至る洗練されたデザインは素晴らしい。

 

物語の核は「青春」だ。それも日本のマンガにありがちな、ユートピア的な青春でもなく、あくまで精神的に未熟な人間たちが混ざり合い、時に苦しみ、時に喜びながら成長する、「人生で最もスリルのある戦場」としての青春だ。

何より好ましいのは、彼らはあくまで「青春」という意識がない点だ。日本の映画『霧島、部活やめるってよ』という作品では、シニカルに青春を捉える主人公たちの姿が共感を呼んだが、私はアレがどうも安っぽく感じた。

思うに、日本は余りにマンガや映画の影響が強すぎて、大抵の思春期の子供は「自分は今、例の思春期じゃん!」と既に自覚していると思う。その自覚故に、過剰に葛藤したり団結しようとするのだ。(例えば、大半の学生は皆等しく制服を着て、決まった授業を受ける。だから自分の学生生活とメディアのそれが一致してしまう。)

だがそれは所詮、メディア上で作られた役割を、好んで演じている、真似しているだけに過ぎない。だから、現実であれ物語であれ、子供が青春だリア充だスクールカーストだと叫んでも、まるで迫力に欠けるのである。

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その点で、本作はアメリカの「複雑な青春」を基にすることで、子供と大人の絶妙な境界線を描いている。

本作で登場する学校は、日本で言う高校なわけだが、内実は我々のそれとは大きく異なる。服装やイベント参加も自由で、幅広い年齢層が混ざり、授業の成績が自分の立場から将来まで強く影響する実力主義社会と、まさしくアメリカの「自由だが責任も大きい」価値観が横たわる。(高校というより大学っぽい)

既に将来に至るキャリアという目的があって入学しているわけだから、学生はとても努力するし、良くも悪くも自分がいかに成功するか考えて生きている。大人とほぼ対等な世界で、同じ成果が求められる世界がそこにある。日本も成果を求められるが、大人の社会からは切り離されている。

当然、彼らの間では「思春期らしい」「若者らしい」価値観も薄い。ただ精神的に未熟な「小さな大人」たちが、ひたむきに生きようとする物語がある。だからこそ、平和な学校生活でもスリルに満ち、解釈の分かれる選択肢も生まれるのだ。

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でもね、

そんなことは、結構どうでもいいんだ。ジュブナイルとか、複雑な選択肢とか、タイムリープとか、恐らくコンセプトを聞いた時から、私を含めた大半のプレイヤーが想像ついてたことじゃないか。それだけなら、私がドツボにハマって、クリアしたことを後悔することもなかったろうさ。

 

優れた物語には、優れた登場人物が、特に主人公が必要だ。このゲームにおける最大の革新はここだ。これほどまでに、一人のキャラクターを掘り下げ、ゲームプレイを通して繋げた作品はあっただろうか。

このゲームを遊ぶプレイヤーは、専ら主人公、マックス・コールフィールドの背中を見てプレイすることになる。

そして、マックスの言葉を通してキャラクターと会話する(因みにマックスはコミュ障だから微妙な選択肢しか出ない)。マックスの日記帳を通して物語の因果律を整理する。

そもそも、マックスが超人的な能力を手に入れたことから物語は始まり、マックスの個人的な祈りがプレイヤーの目的となり、マックスの個人的な性格がプレイヤーの価値観に取り込まれる。

選択肢を通して会話できる意識はマックス「とプレイヤー」の二人だけ。タイムリープして同じ時間を何度も過ごすのもマックス「とプレイヤー」の二人だ。、観葉植物に水をやるとか、リスの写真を取るとか、先生にキツく叱られた時とか、どーでもいいことで一々漏らす感情を、全部プレイヤーに伝えてくれる。

 

ええと、何を期待してこのゲームを買ったんだろう。世界を救うためだっけ、暴力的な衝動を発散するためだっけ、何か面白い物語を聞くためだっけ。まぁどうでもいいか。

だって、GladosもMax PayneもGordon Freemanもティーダも、ここまでプレイヤーに寄り添ってくれなかった。「寄り添う」って言っても、それは全部独り言で、それは全部自分のためかもしれないけど、何をするにも、語って、聞いて、思ってくれたから、プレイヤーは彼女の人生(Gameplay)そのものに寄り添う、彼女のためにプレイする。

そんな主人公はいなかったし、そんなゲームはなかったんだよ。

 

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