ゲーマー日日新聞

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【評価】『Fallout4』の感想やレビュー 大作ゲームの未来

 

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要旨:

・完璧に築かれたAAA級ブランド『Fallout』。既に完成された作品の続編を、どう生み出すべきか?

・まず『3』の欠点、ゲームプレイや演出、表現の乏しさに注目。

・『4』で上記の欠点はあらゆる点で改善され、既に一流ARPGに域に到達した。(一部を除く)

・旧作からTRPGとしてのエッセンスが削られたのは大きな課題だが、既に『3』『NV』で散見されたもので本作のみ批判するのは疑問。

・イノベーションの袋小路に陥り易い「大作ゲーム」の続編だが、本作は徹底的な過去作への反省と既存作の吸収、新要素の発明を繰り返すことで袋小路を打開した。

 

 

ゲーム概要

2015年、Bethesda開発のRPG。核戦争により崩壊したアメリカのボストン(連邦)を中心に冒険し、様々な組織や人物と交わりながら生き抜くRPG。

『Baldur's gate』のシステムに似せたShadow Isle Studiosの『Fallout』シリーズをBethesdaが権利を取得し、『Fallout3』として再開発した経緯がある。

  

『The Elder Scroll: Wasteland』の脱却

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私は『Fallout 3』を初めてプレイした時の衝撃を今でも記憶している。「やめ時が見つからない」ゲームなんて、一体何年ぶりにプレイしただろうか。寝食を忘れて廃墟のワシントンDCを彷徨い、飽きもせずミュータント共をミンチにしたあの日々。

同作への評価は極めて高い。このゲームを遊んで日本のRPGのガラパゴス化を痛感したというプレイヤーも多い。8年前の同作への信頼は、既に伝説の域に達していると思う。それは同時に、本作『Fallout4』への期待も天井知らずに跳ね上がるということだ。

 

とは言え、改めて評価すれば『Fallout3』には難点も多かった。確かに、ユーモア溢れるクエストや、旧作の世界観を見事に再現したオープンワールドは見事だったが、ゲームとしてみるとお世辞にも優れた作品とは言えなかった。

例えば、「RPG+FPS」という形式にも関わらず、連打できるスティムパックとVATSでゴリ押すのが基本となり、一方でRPGとしてもビルド・アイテム・PERK全てのバランスが崩壊気味で取捨選択の余地もなく、ついでに敵自体に個性がほとんどないため、困難にどう挑戦するかといった戦略がない。

早い話、『Fallout3』のゲーム部分は、単に一部が簡単すぎるとか一部を改善すべきといった問題でなく、存在しないも同然だった。何をどう使ってもクリアできるのでなく、何をどう使っても結果は同じという、ゲームの体裁を保つための骨組みしか残っていない。

 

ここまで”ゆるい”ゲーム部分が特に問題視されなかったのは、秀逸なプロットと世界観を楽しむ上で、むしろゲーム自体はストレスなく進めるツールに過ぎなかった点が考えられる。

ポップコーンを片手に、ロケーションを見つけては、そこに居座る雑魚共を蹴散らし、迫真のプロットやブラックな風刺に胸を躍らせる。

ある意味、「ムービーゲー」ならぬ「プロットゲー」の本作には、複雑なゲーム要素自体が不要だった。もっと言えば、シュールでユーモアあるストーリーなため、彼らの生殺与奪を握る「万能感」がよく噛み合ったと考えられる。

しかしこれは、Bethesdaの持つ『TES』ノウハウを、『Fallout』に転用したに過ぎないのではないか。

 

『4』が目指した方向性 『TES』シリーズの呪縛を払拭する 

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『4』の製作では、『3』時代のセンス溢れる物語や脚本はある程度妥協し、代わりに普遍的で奥深いゲーム性を築くことを目指したように思える。

まず、単純なVATS連打で済んだ戦闘面を、あくまで一時的なチャンスを作るVATSと平常のFPSに分割し、FPS部分も銃の反動や拡散を取り込んだ。

次にRPG面では、バランス調整によってビルドの幅を広げた他、ユニークアイテムとレジェンダリーアイテムでトレハン的な面白さも取り入れた。

各種エネミーの個性も強化され、単に殴るか撃つかの二択だった敵は、特異な技を持つ各アボミネーション、待ち伏せと俊足で襲う「グール」、地の利を活かす「レイダー」「ガンナー」、通常種と比較にならない強力な兵器を持つ「各派閥」など、戦っていて飽きが来ない。

 

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およそ、昨今のゲーム業界に溢れる「続編」とは比べ物にならないほど、『Fallout4』はあらゆる点を改良し、手を加えてきた。

それは抜本的なエンジンも例外ではない。Bethesdaが本格的に次世代機用に改良したCreation Engineの表現力は凄まじく、

今まで「所詮オープンワールドだから」と見過ごされてきた、余りに乏しいテクスチャの使い回しや、ENBなしでは飽きの来る景観も大幅に改善され、天候や時間、場所によって美しく変化する世界を冒険できるようになった。

演出面も注目したい。特にBethesda作品では紙芝居のような演出で盛り上がり所に欠けたが、今回は各派閥の支援イベントやダンジョンの個性も派手になり、物語にメリハリが付いた。特にBOSによるベルチバードの支援は、従来作で夢見たプレイヤーも多いだろう。

 

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オープンワールドだと映像面の進化は実感しやすい。「冒険しよう」と思えるからだ。

 

また、物語面においても本作は新たな方向を模索した。『1』のゲームプレイに基づいたシビアな世界観や、ハードボイルドなストーリーは既に『3』に移行する上で失われ、代わりに『TES』流の手法で面白いクエストが盛り込まれていた。

本作では、あの短編集を読んでいたような、ユーモア溢れるクエストを失った一方で、メインクエストやコンパニオンクエストが大きく進化したと言える。

メインクエストの各派閥は、現代の技術をどう利用するかという、明確にプレイヤーの価値観とプレイスタイルに応じて選択する余地があるもので、『Skyrim』『NV』のように似たような軍隊が殴りあうだけということもない。

サブクエストはやや淡白なものが増えた点は否めないが、一方、コンパニオンのセリフ量は大きく増え、また彼らの固有のクエストは印象深く、単なる荷物要因からプレイヤーの物語へ大きく働きかける名脇役へと進歩している。

 

課題 過去作といかに向き合うか

それでも尚、偉大な企業とブランドの両方を兄弟に持つ『4』は、完全にプレイヤーの期待に応えたとは言えない部分もある。ただし、世論を見る分には少々過去作を混同する意見も多かったので、本稿では作品毎に比較する。

問題は、ロールプレイとしての『Fallout』は、「いつ」消えたのかという点にある。時系列に注目して比較し、『4』への批判に対する批判も追記した。

 

『Fallout 1』『2』と比較 世紀末としての設定、シビアな難易度は消えた

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『Fallout』シリーズとして考えると、『4』の「世紀末を生きる」感覚は大きく欠如してしまったと言わざるを得ない。(後述するが、)

 

古典的『Fallout』シリーズは、あくまで核戦争で荒廃した世界を”生き延びる”姿を描いたゲームだ。弾薬や食料も限定的で、アボミネーションの不意打ちでも瞬殺といった有様である。

この点において、『4』は”引き続き”世界観や設定を活かしきれていない面はある。『3』ほどガバガバでもないが、物語面であれほど重視される「世紀末」の設定も、ほぼ背景に留まっている。

このため、本作はあくまで『Fallout』本来の世紀末を生き延びる、プロット重視のTRPGとしての個性を、大きく失ったと言える。

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ゲームプレイ面も同じだ。『Fallout 1』では自分がどのようなビルドにし、逆に何を犠牲にするのかが重要視された作品だった。例えばSTRを振ってないとロケットランチャーは装備すら出来ず、INT値がないと会話もままならない始末。

『Fallout 4』ではそのようなゲーム的なリスク・リターンはスッパリ消え去り、主人公が超人であることに疑いの余地はなくなった。どんなビルドにしようが問題なく強く、選択の自由もあるが不自由なりの工夫の余地もない。

元々、TRPGに強く影響を受けた元祖『Fallout』だが、今作では完全にARPGとして振り切ったと言える。

 

『3』『NV』と比較 RPG面が減退した点は変わらず

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わざわざ課題面を二部に分けたのは、この「元祖『Fallout』」と「Bethesda『Fallout』」を明確に分けて考える必要がある、というより分けて考えずに批判する声が大きすぎる現状がある。

 

本作で頻繁に批判される、ロールプレイとしての魅力の減退や、主人公が喋ったりバックグラウンドを持つことへの等の理由だが、ハッキリ言って、その問題は既に『3』で浮上している。 

例えば、スリルも戦略もないガバガバの育成&戦闘、主人公が誰かの息子で強制的に似非BOSの正義に加担するシナリオ、メインとサブが分断され過ぎて短編集のようになったストーリー。

まして、元祖の血を継ぐObsidianの『NV』はもっと酷いものだった。主人公の背景を消したはいいが、その分シナリオは出涸らしのように薄く、しかもあらゆる面で前作の使い回しが目立ち、新たな発見がない。

結局、TRPGをリスペクトした古典的BG系RPGとしての『Fallout』は、とうの前に「死んだ」のではないか。そして多くの従来ファンはこれを「時代の変化」として受け入れ、一方で新たなファンを獲得し、『Fallout』は生まれ変わった。

それ自体、私は悪いことと思わない。『3』『NV』はそれでもとても面白いゲームだった。だが、今になって懐古話を持ち出し、古株ファンの面をして『4』にぶつけるのはアンフェアではないか。

 

ただし、『3』特有の魅力が消えたのは事実だ。『3』の特徴は、まるでADVかのような多様なクエストの攻略法と、作品全体に溢れるユーモアだ。

『4』でぶっ飛んだ選択肢が消えたのは確かに残念である。主要人物を奴隷として売り払い、街一つを原爆で吹っ飛ばす。『South Park』もかくやと言わんばかりのブラックジョークと、意表をついた多様な攻略法は、『4』のリアルだが消極的な物語にない魅力だ。

また、前作から継続して、退屈な上に頻度が多いハッキングやピッキングのミニゲーム、妙に重い上に見辛いUI、頻発する軽度のバグなど、明らかに改善すべき点が放置されたままなのは理解し難い。

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煩わしいミニゲームのために、魅力的なターミナルがスルーされると思うと悲しい。

 

総論:AAA級ブランドを繋げるイノベーションのシンボル的作品

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バニラ状態でもこれ。キャラデザは大きく進歩した。

 

『Fallout 4』は疑いの余地なく優れた作品である。圧倒的なノウハウ、センス、リソースが継ぎ込まれ、他のあらゆるゲーム企業に到達できない領域に築かれた、難攻不落の城塞だ。

それは無論、Bethesdaが長年築き上げてきた『TES』シリーズ、前作『Fallout 3』においても同じことだ。そのスケールこそ、現代ゲームを象徴する存在と言ってよい。

 

しかし、この脚光はいつまで続くのかわからない。開発費は高騰し、技術でスケールを拡大し続けることには限界もある。その反動で使い回しばかりの続編が作られるのなら、本末転倒としか言い様がない。

『Fallout 4』は無論、AAA級ブランドとして一切妥協していない。相変わらず、「ゲームはここまでやるのか」と思わせる程のスケールだ。マップは地平線まで広がり、美しいCG表現に見惚れ、他ゲームのノウハウも容赦なく吸収する。

だが、やはりゲームなのである。ゲームとして楽しむための障害は可能な限り取り除かれ、一方でゲームとして面白いとは何か、どう駆け引きし、達成感と快楽を掴むか。こんな基本的だが大切なことを、本作は振り返った。

 

よく、現代ゲームの開発は袋小路にあると言われる。スケールが大きくなりすぎて、いつか破綻するとも言われる。現に、多くの大作ゲームがシステムもエンジンも使いまわした「DLCのような」続編に妥協している。

だが、かの王者には全くの杞憂だった。グラフィックも美しく、演出もクールだが、ゲームとしても面白く、更にワクワクできるフィールドが待っている。それは当然として「実現可能」なのだと、彼らは証明してみせた。

その点において、本作は『Fallout』続編としての成功のみならず、PS3時代における「大作重視の現代ゲーム」シーンから更なる領域へ繋げた、象徴的作品と言える。

 

余談だが、私は本作が最も優れた「進歩」は、メインクエストにあると考える。ここで書くには長くなりすぎるので、また別の記事を執筆する予定だが、その際は読んでいただけると嬉しい。

 

*1:一応サバイバルモードもあるにはあるが、世界観もクエストも変わらない中で不便さだけ押し付けられるように思える