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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

ネタバレの脅威と戦う

ゲーム業界について

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要約:

・ネタバレ回避が困難な理由は、どの情報をネタバレと考えるか個人差があるため。

・一方で、ネタバレは作品の核心的な情報であり、自分が探し求める作品へ繋がる鍵にもなる。

・ただし、クリエイター側が率先してネタバレを行うケースも増えており、これはファンの信頼を裏切る問題だ。

・何がネタバレになるか人それぞれなので、自分の関心に応じて情報の”質”でなく”量”を調整すべき。また、公式のPVやサイトでさえ信頼すべきでない。

 

『COD』の銃ですらネタバレ

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マンガ、映画、小説、そして我らがビデオゲーム。どのメディアにおいても、常に我々が怯え続けるのが「ネタバレ」である。

「立証不可能の殺人事件!」というフレーズに釣られて購入したゲーム。テキストに読み耽り、登場人物への感情移入も増し、最期に何が待ち受けるのかとワクワクした瞬間、「犯人はヤス」と不意に告げられたプレイヤーの心境はいかほどか。

ネタバレは伏兵である。誰も予想していない場所から唐突に現れ、プレイヤーが大切に育てた軌跡を踏み荒らしていく。

 

それでも、この情報社会、好きな作品を探すなら、まずネットなり雑誌で情報収集が不可欠である。必要な情報とそうでないものを取捨選択する能力を「リテラシー」と呼ぶが、オタクにとってネタバレを回避する能力こそリテラシーだ。

だが、ネタバレを回避するのは容易ではない。なぜなら、「ネタバレ」の定義が人によって異なるためである。

 

例えば、FPSに目がない、私のとある友人Aは、同時にサバゲー好きでもある。彼は無数のエアガンを収集しているが、そんな彼にとって最大の関心は、「最新FPSに何の銃が収録されるか?」という点だ。

まだ人気FPS『COD』が現代を舞台としていた頃、彼は『COD』のマルチプレーで何の銃が収録されるかいつも楽しみにしていた。そんな私は、最新トレイラーで見た”AK-47”の復活ついて尋ねると、彼はむっとした様子でこう抗議した。

曰く、「自分はマルチプレーで徐々に見知らぬ銃をアンロックする楽しみにしていたのに、ネタバレしないで欲しい」のだという。まさか『COD』の武器の情報すらネタバレになるとは、私は考えもしなかった。

 

しかし、これは確かに納得のいく話だ。最新作の『STAR WARS』にハン・ソロが再登場する情報は、多くのファンにとってネタバレであろう。彼にとって『COD』の銃は、『STAR WARS』の歴戦の登場人物に等しいのだ。

ここで一つ明らかなことがある。ネタバレを回避することの最大の難しさは、何を、どこまでをもって、ネタバレと定義するかが不明瞭な点だ。

ラスボスの正体だけがネタバレではない。新作『GTA』のオープンワールドは全部自力で踏破したいという人もいれば、新作『CIVILIZATION』の新文明が気になって仕方ないという人もいるのだ。

 

「ネタバレ」の代わりに得るもの

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そこまでネタバレを嫌がるなら、もう何も調べず、発売日まで全裸で待機でもしていろと思う方も多いだろう。

無論、私はネタバレを完全に悪だとは考えていない。何故なら、情報はネタバレになると同時に、作品への関心にもなるからだ。

そもそも、何の情報もなしに作品を購入したり、興味を持つことはできない。期待の新作が並ぶ中、自分にあったジャンルや雰囲気、ゲームプレイを元に、新たな作品を「開拓」していく。

 

その意味で、我々は「ネタバレ」という将来の作品鑑賞を前払いで楽しみ、代わりに自分が知らない新たな名作を探す「関心」を得ていると考えるべきだろう。

件の友人も、『COD』への熱意が薄れている中、ネタバレ覚悟で観たトレイラーに自分の大好きな銃を発見して、また熱意が戻ったというし、少しスリリングなネタバレはその分、作品の醍醐味をダイレクトに伝えることが出来る。

ネタバレなしで新たな名作を開拓することは不可能だ。ネタバレと関心はトレードオフであり、意欲が萎えない程度にネタバレを覚悟で情報を引き出すリテラシーが大切だ。

私自身、このブログのでは極力ネタバレに気をつけているが、先述した通りどんな情報でもネタバレになりうる以上、完全に避けることは難しい。だからこそ、ネタバレした分だけ、作品に関心を持ってもらえるような記事を目指している。

 

企業側によるセルフネタバレ

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最後に、ネタバレ問題について、製作側サイドで検討したい。

昨今、プレイヤーの関心を引くための様々なトレイラー・PVが製作されているが、その中にあまりに多くの「ネタバレ」を注ぎ、プレイヤーがゲームを実際に遊んだ時の発見がなくなってしまう、企業による「セルフネタバレ」が散見されている。

 

ここ最近で、個人的に一番強烈なセルフネタバレの記憶は、『アーマード・コアV』だ。

フロム社の本シリーズは確かにPVでネタバレすることが多かったものの、この『ACV』のトレイラーは、ストーリーモードの映像や台詞を最初から最後まで詰め込んでおり、もはや「忙しい人のための『ACV』」といっても過言ではない内容になっている。

私はこの、策略や狂気の入り混じったPVを観て、作品の発売をとても楽しみにしていた。だが実際に遊べば、内容はこのPVをひたすら引き伸ばしただけで、ラスボスの真の姿まで、実はPV内に映っているのだから驚いた。(因みに、PVの公開は発売前である)

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残念ながら、昨今プロモーションで追加要素のネタバレを安売りし、貧相なボリュームを誤魔化そうとする企業が後を絶たない。話題性と引き換えにネタバレをばら撒き、実際に遊ぶ頃にはスカスカの抜け殻となれば、ファンの失望を避けられない。

また、UBI社の『FARCRY 4』は、迫撃砲や小型ヘリのような『3』にない新要素をトレイラー内で大量に紹介していたが、実際に遊んでみるとそれが新要素の全てだったから驚いた。

 

一方、評価すべきはアトラス社の『ペルソナ5』だ。

重厚なRPG『女神転生』を原作とする本作のため、同社はWeb上でネタバレを抑止するメッセージを発し、既にアップロードされた動画などには積極的に削除を働きかけることで、ファンは比較的、安心して情報を探ることが出来た。

また、Bethesda社の『Fallout 4』のプロモーションはとても好意的だった。発売の半年前ほどで一挙にプレイ動画まで公開し、情報を小出しにしてファンの期待を加熱させることはなかったからだ。

 

大小様々な開発陣が入り混じる現代ゲームシーンにおいて、プロモーションが過熱することは当然かもしれない。

それでも、多くの開発者にとっても、プレイヤーに直接ゲームを手にとって、自分たちの作った過程の中で発見して欲しいと願うはずだ。パブリッシャー側も、もう少しこの点を考慮すべきではないか。

*2

 

総論

ネタバレは作品を愛する上で避けられないものだ。だが、同時にネタバレを供することで、見知らぬ作品の様々な面を知り、本当に自分が探していた作品に出会うこともある。

一方、ネタバレは自分の感性と操作を介さない以上、相応に作品の体験を損なう可能性もある。この点において、ネタバレのリスクと作品の発見は常にトレードオフの関係であり、バランスを考えて情報を検索するリテラシーが求められる。

以上から、自分の興味のある作品は極力多くの情報をシャットアウトし、逆にまだ手が出せないジャンルなら、積極的にネタバレを解禁するなど、「自分がどれだけ作品に関心があるか」考えて切り替えることで、安全に情報を収集できるだろう。

 

最後に、企業側はプロモーションの中でネタバレを気にせず、何でも紹介してしまうことは、プレイヤーの発見を奪うと同時に、作品の底の浅さを隠すことになりかねない。

逆に、本当に優れた作品なら多少ネタバレをしても、それ以上の驚きとスリルのある体験でプレイヤーを楽しませることが出来るはずだ。堂々としたプロモーションで、同時にプレイヤーの体験を尊重する、そんな体制が求められるのではないか。

 

 

*1:ARMORED CORE V プロモーション映像 第5弾 【本告編】 - YouTube

*2:レトロゲームしま専科「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」http://rtgame.web.fc2.com/review/ta/dq2.html