ゲーマー日日新聞

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【評価】『ペルソナ5』の感想やレビュー 伝統と確執(非ネタバレ)

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ゲーム概要

アトラス社よりPS3、PS4向けに発売されたターン制RPG『ペルソナ』の最新作。

『ペルソナ』シリーズは『女神転生』シリーズを現代社会に反映した外伝であり、日本の高校生である主人公は、人間の精神世界に侵入して改心させることができる。

 

ペルソナシリーズの持ち味は反映されている

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ゲームそのものはありきたりなターン制RPG、だが世界観は現代日本で、戦うべき相手はそこに生きる人間たち。

『ペルソナ』シリーズは古典的なJRPGの一つ『女神転生』のゲームプレイを流用しながら、このような独自の路線で新規顧客を獲得した。

 

ゲームプレイはシンプル。基本的に「パレス」と呼ばれるダンジョンに潜り、そこにひしめくペルソナたちを倒しながら、「パレス」の主である人間と対峙する。

「パレス」の発生源となる人間は、大抵どうしようもないオトナたちであり、彼らを改心させるのが当面の主人公らによる目的になる。

戦闘はスキルを使い分ける古典的なJRPGテイストだが、敵の弱点を看破すると追加ターンを得るなど、大きなアドバンテージを得られる。

 

世界観は他『ペルソナ』同様、現代日本を反映しており、マップ間を電車で移動したり、武器をサバゲーショップで買えたりするなど、芸が細かい。

主人公には「パレス」攻略以外の、日常生活においてもステータスが要求され、これらは「パレス」にいない間に鍛えることができる。

例えば、「知性」はカフェで勉強すると上昇し、「勇敢」はファーストフード店の大食いチャレンジに挑戦すると得るといった具合。

またこれらのステータスを上げることで、仲間との絆を深め、個別のストーリーを楽しむことができる。

専ら、プレイヤーは「パレス」攻略時に戦闘を楽しみ、「日常」では仲間との交流やアイテムの調達を時間を費やす。また調達したアイテム、強化された仲間がいれば、パレス攻略は更に楽になるといった具合だ。

 

かつてないレベルでの高いメッセージ性

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 完成度の高い本作だが、一方で戦闘や成長要素、探索など余りに旧来作品と代わり映えせず、ゲームとしての「駆け引き」はあまり充実していると言えない。

それでも本作が「これぞ」と思える点は、優れた物語だ。本作は現代日本を舞台としていながら、そこで発生する事件や、そこで生きる人々もまた、我々の知る日本でありふれた存在が描かれている。

 

本作の序章は、主人公が冤罪で逮捕され、転校を余儀なくされるシーンから始まる。だが転校先に待ち受けていたのは、それ以上の「悪」だ。

転入先の高校で体育を担当する鴨志田は、元オリンピック選手の権威を振り回し、指導と称した悪質な虐待を生徒に加えていた。

中には、後に主人公に仲間となる坂本のように、彼に抵抗する者もいた。だが実際問題、「教師」と「生徒」では大きな力関係があり、警察の通報も全くアテに出来ない。

そこで、彼らは「心の怪盗団」を結成する。鴨志田の持つ心が具現化した世界、「パレス」へ侵入し、オタカラを盗み出して改心させるのだと・・・。

 

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かように、本作に出てくる「ボス」たちはいずれも、現実世界に存在してもおかしくない、というか存在したオトナたちだ。

本作は舞台を現実の日本に設定しておきながら、そこで描く冒険の数々もまた、現実の日本で見られた問題やテーマである。

そうした事件の数々を、本作はあくまで高校生の「怪盗団」目線で追いかける。若さ故の情熱を持って、自分の仲間を守るためにオトナと戦い続ける。

『ペルソナ』シリーズでも特にリアリティ溢れる本作の物語は、極めて魅力的で斬新だ。シンプルなRPGであれど、アニメーションを交えた優れた演出、秀逸な世界観と合わさり、あっという間にプレイヤーを作品へと導いてくれる。

 

中でも素晴らしいのは、オトナたちの心が具現化した「パレス」の造りだ。

これらはいずれも風刺めいていながら、人間なら誰しも持ちうる欲望を見事に掬い上げている。

そして最後、ボスとして君臨するオトナたちのシャドウとの対決。現実世界なら会話もままならない「オトナ」と「怪盗団」が、長い死闘の末にようやく本心を吐露し、自分が何故このような過ちを犯したのか語るシーンは、プレイヤーの心を揺さぶってくる。

 

確執に囚われたゲーム性は劣悪 ①退屈な戦闘

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ここまで、世界観と物語、それらをまとめあげたゲームとしての完成度は凄まじく、既存のRPGでは味わえない冒険がプレイヤーを待ち受けている。

しかしながら、本作には致命的な欠点がある。それは実際のゲームプレイが余りに旧態然としており、無駄も多ければ戦略も浅い点だ。

ここからは、問題を「退屈な戦闘」と「水増しされたボリューム」の2つに分けて論じたいと思う。

 

まず、「退屈な戦闘」について。本作は典型的なコマンド進行型のRPGだ。マップ上には敵が歩き回り、それに接触することで戦闘が始まる。

主人公らは独自の「ペルソナ」を持っていて、彼らに様々なスキルを発動させて戦う。スキルは特に珍しいものはなく、物理と魔法を使い分け、そこに補助や回復のスキルも組み合わせていく。

本作の特徴として、敵・味方に明確な「弱点属性」が存在することが挙げられる。敵の弱点をついた攻撃が出来れば、追加ターンという大きなボーナスを得られるため、積極的に狙っていくこととなる。

 

まず問題はこの点だ。既に相当長い歴史があるコマンドRPGにおいて、本作は余りに捻りがない。

仲間やペルソナを使い分ける鍵は実質、(弱点を突くための)何の属性を持っているか、という点に限られてくることに加え、敵の弱点属性のヒントは皆無で、手当たり次第にスキルを試すしかない。

これがとにかく面倒で、Wikiを見れば一発でわかる情報を、運否天賦で模索するだけが、本作における「戦闘」の要なのだ。

ジョブによるギャップもスキル以外ほとんどなく、装備の蒐集によるビルド構築も、ステータスの上昇幅だけで決める以上何の工夫も出来ない。

 

一方、敵が用いる戦略も浅すぎる。ボスはそれなりにユニークな戦術を使ってくるが、雑魚からボスまで使ってくる状態異常系のスキルが極めて強力で、誰でも使える&どの技も行動停止以上できるとチート級の破壊力。

当たり前のように1ターンで主人公諸共行動不能になって即ゲームエンドになったり、逆に誰も状態異常にならず楽々攻略できることもある。耐性を持つ装備もあるが、スロットが少ない本作ではとても実用的ではない。

 

総じて、ゲームプレイはコマンド式RPGの中で酷く平凡であり、求められるは「運」と「作業」のみ。何より強力無比な状態異常による「運ゲー」が雑魚からボスまで続くことがフラストレーションの根源になる。

いくら『女神転生』のカジュアルな外伝とはいえ、ゲームプレイにおける最も基本的な攻略面がこれでは、とても続けるモチベーションは維持できない。

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”自動生成”メメントスはまじで面倒。しかも攻略は必須。

 

確執に囚われたゲーム性は劣悪 ②水増しされたボリューム

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もう一つ「水増しされたボリューム」について。私自身、本作のクリアには80時間近くかかったが、ネットの感想を読み限り90~100時間かかった方も多いそうだ。

こう聞くと、本作はボリュームあるゲームとして完成されていると考えるかもしれないが、実際のところ、そのプレイ時間の大半は「無駄」だったと考えている。

 

まず同じことを何度も繰り返すSNSシーン&大衆の会話シーン。早送りして全く構わない内容だが、スケジュールを1日こなす毎にロードと共に差し込まれる。

戦闘のテンポも妙に悪い。「ホールドアップ&総攻撃」のように固有モーションがあるならまだしも、敵味方の行動の簡略化は不可能で、繰り返し戦うザコ敵との戦闘が億劫になる。

そしてロードの数。一体どこにそんな処理が必要かと思うほど、小さな場面転換やレベルの移動で数秒だがロードを挟んでくる。せっかく感動のシーンも台無しになってしまう。

 

最も気になったのは「日常シーン」全般。本作はパレス(ダンジョン)攻略時以外は、普通の高校生としてバイトや交遊などの「日常」をスケジュールに割り当てることとなる。

キャラクターとの会話を楽しめる「コープ」は脚本が秀逸な分まだ楽しいが、それには一定の「人間パラメータ」が必要であり、これは読書やバイト等のアクティビティで成長させるのだが、これがとにかく面倒。

行動によって一定数ステータスが上昇するのだが、もちろん多くの登場人物と触れるためには、効率よくステータスを伸ばす必要がある。

 

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それには最適な行動を最適な日に行うのはずが、これはプレイヤーの好みや戦略以前に、全てのステータスを最速で最高値にするための最適な行動を取ればよく、考える余地がない割に細かく指定されてひたすら面倒。

スケジュール管理が失敗すれば、仲間とのストーリーをただ「無視」する羽目になり、あえて不器用に生きるといったメリットや目的も存在しない。

その点で、最高率をもとめる難易度は明らかにパレスより日常の方が高いというのは、何とも皮肉ではないだろうか。

 

総じて、本作は8~90時間以上も付き合う中で、余りにくどい演出や面倒なだけの作業が多く、とてもクリアまで漕ぎ着けようと思えなくなる。

現代では数時間で終わる作品も多いなか、この助長なプレイ時間はプレイヤーをただ疲れさせるだけであり、あまりに「古い価値観」と言わざるをえない。

 

総論

『ペルソナ5』は多くの点を指摘すべきだが、90時間付き合うだけの魅力があり、評価を悩ませる佳作だ。

シリーズを順当に進化させ、更に研ぎ澄まされた秀逸な世界観や物語は、特筆すべき内容に仕上がっている。

特に現代を舞台とし、メッセージ性の強い点は、あらゆるジャンルのゲームでもそう見られない仕上がりだ。

 

一方でゲーム面は余りに平凡すぎ、退屈ながらアンバランスなパフォーマンスに終始している。コマンド式RPGそのものが使い古されている以上、これは確実に改善すべきだった。

また、助長かつ同じ演出でボリュームを水増しするのも、余りにコンサバティブだ。プレイヤーにも時間が限られている以上、プレイ時間こそ短くとも、面白さが凝縮されている方が良いはずだ。