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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『モンスターハンターストーリーズ』の感想やレビュー 理想的なスピンオフ

 

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ゲーム概要

開発はCAPCOM、プロデューサーは辻本良三。

モンスターを狩り素材を集めるハンティングアクション、『モンスターハンター』シリーズのスピンオフ。

アクションから一転ターン制のRPGとなり、ストーリーも重視された異色の新作。同時にアニメも放送されている。

www.youtube.com

 

ワイバーンの背に跨り、世界を冒険せよ

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本作の下馬評は、控えめに言って悲惨だった。

ファンに長く愛されてきた『モンスターハンター』シリーズ。しかし、10本以上シリーズが続けば、マンネリ感があることは否めない。

そんな中、このコミカルなグラフィックスに、RPGという媒体で発表された本作『モンスターハンターストーリーズ』。ファンに不満を抱くなというのが無理な注文ではなかろうか。

 

だが安心して欲しい。カプコンによる、この無謀にも思えた挑戦は、私の期待した水準を遥かに上回っていた。

モンスターと人間が命のやり取りをする「ハンターの世界」の裏側。モンスターと絆を結び、ともに戦う「ライダーの世界」。

プレイヤーは、ハンターでなくライダーとして、モンスターと共に世界を冒険する。

旅の先々では、広大な自然、入り組んだダンジョン、モンスターの巣、拠点となる街などが存在。モンスターと戦ったり、巣に侵入して卵を確保したり、そこから得た報酬でパーティと装備を強化できる。

 

世界は広大かつ重厚だ。広い空間なら、従来の「砂漠」のエリア1~6まで詰め込まれている程で、3DSというハードの制限を感じさせない。

戦闘は古典的なターン制RPG。だが後述する通り、内容は極めてユニークで遊んでいて全く退屈しない。

何より、これまで共に戦うだけだったモンスターたちと冒険する楽しさは、全く新鮮なものだ。

リオレウスの背に跨り、天を翔ける夢を見ないハンターはいるまい。或いは、ラギアクルスとビーチへバカンスにいったり、クック先生といちゃつくも、プレイヤーの自由だ。

 

驚異的なプレイアビリティ

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とは言え、いくらマップが広く、モンスターの背中に乗れるといっても、『MH』をこよなく愛するハードゲーマーが求めるのは、「面白いゲーム」そのものだ。

そして驚くことに、本作『MHS』はRPGとして全く新たなゲーム性を開拓しつつ、その完成度は『MH』に匹敵するものとなっている。

 

基本はターン制RPGだ。主人公とモンスターの、二人(?)三脚で戦闘を進める。

そして多くのRPGと同じく、主人公とモンスターは、それぞれ”絆ポイント”を消費する「特技」と”絆”を消費しない「通常攻撃」が使える。

当然、”絆”を消費する分「特技」は便利だが、面白いのは「通常攻撃」の方だ。普通、通常攻撃といえば、大半のRPGでは序盤を除いて忘れられる選択肢だが・・・

本作では通常攻撃を選択すると、更に「スピード」「パワー」「テクニック」の三択を迫られる。これはジャンケンと同じ要領で、相手が同じ通常攻撃を行った時、相性で勝利していれば、大きなダメージと絆回復を得られる。

もし自分が「スピード」を選べば、相手が「パワー」なら一方的にダメージを、逆に「テクニック」なら自分はピンチになる。

 

これは一件、幼児向けのアーケードのような、安易な「運ゲー」を思わせるが、むしろ本作の戦闘が奥深い大きな点こそここだ。

まず、大半のモンスターには露骨な「傾向」がある。例えば、巨体で敵を圧倒する「ディアブロス」は専ら「パワー」に依存し、素早い動きで翻弄する「ナルガクルガ」は「スピード」ばかり使う。

だからこそ、彼らの動きを見切れば、この「ジャンケン」はイカサマめいた連勝を重ねることが出来る。「ディアブロス」と戦うなら、こちらは「スピード」攻撃を繰り返せばよい。経験と知識によって、自然に勝利するのだ。

興味深いことに、この戦略は従来の『MH』シリーズと全く同じである。「人間」であるプレイヤーは火力・体力共に「モンスター」に劣るが、彼らの攻撃パターンを読み切り、その隙をついてこそ勝利できる。

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モンスターの個性を理解し、伸ばせれば攻略は容易に

 

しかし、それでも本作は従来のRPGと変わる点はない。大半のRPGも強大なボスの行動パターンを分析して、戦略を立てるものだ。

もう一つ、本作の素晴らしい点は、先述した「二人三脚」制である。本作は自分の分身たるライダーの行動は自由に選べるが、もう一方の「モンスター」は、通常攻撃のパターンを勝手に決めてしまう。

モンスターのAIは”明らかに”トロい仕様で、相性の悪い技も平気で出してしまう。

だがモンスターは遥かに人間たるライダーより、ステータス面で優遇されており、彼らの力なしで敵モンスターと戦うことは不可能だ。

だからこそ、プレイヤーは「モンスター」の個性を理解してやり、彼らの長所を伸ばす必要がある。

パワー重視の「ディアブロス」には、スピード重視の「リオレイア」や「ナルガクルガ」を当てればいいし、弱点属性の氷を突けば更に容易になるだろう。

 

このように、本作の戦闘は、ターン制RPGという古典的題材ながら新鮮かつ奥深い内容に仕上がっている。

理由は主に3つある。1つは「融通がきく人間」と「パワフルなモンスター」の両方をうまく使い分ける新鮮さ。

2つは、この戦闘が「モンスターを狩るのでなく、絆を深める」という設定に沿っている没入感。

3つは、上記のシビアな設定がありながら、実際は多少のゴリ押しやプレイヤーの工夫など、多様なゲームプレイを認める絶妙なゲームバランスである。

総じて、本作は純粋なRPGとしてみて、『DQM』や『ポケモン』と比較しても、全く遜色ないクオリティを実現していると言えるだろう。

 

理想的なスピンオフ

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しかし、いくら戦闘が面白くとも、ターン制RPGである。モンスターとの血湧き肉躍るハンティングを楽しむハンターにとっては、まだ退屈さを拭えないだろう。

それでも、本作は「スピンオフ」という利点を最大限活かし、ゲーム性のみならず、世界観や物語を含めた「冒険」そのものも、充実感に満ちている。

 

まず、基本となるカートゥーン調のグラフィクスはかなり成功している。

主人公の仲間となる「オトモン」と言われるモンスターたちは、いずれも卵から孵化させた子供であり、三頭心ほどでかわいらしい。

一方で、シームレスに冒険できるフィールドや街並みの存在、雪山や火山の描写など、細部のクオリティは高い。

元々、PS2を元に開発されただけに、そのまま3DSで展開する上で、ハード的な限界を感じさせていた『MH』。

無理やり既存のギザギザなテクスチャを使いまわすなら、正直、このカートゥーン調で本家も展開すれば良いのではないかと思わせる程だ。

 

だが驚くべきは、世界観の奥深さであろう。

時に対峙し、時に共闘するモンスターたちは、勇ましくも愛らしい。ファンタジーながらリアルな、武器やアイテムたち。しかも、それらを装備する度に、主人公のグラフィクスまで変化してくれる。

どんなRPGの「新作」でも、ここまで重厚かつ上質な世界観は再現できないだろう。

 

スライムっぽい敵MOB、ドイツっぽい街並み・・・。ゲームが面白かろうと、国内外のRPGの世界観は余りに陳腐、RPG本来の楽しみである「冒険」しようと思えない。

しかし『MHS』は違う。冒険の一歩一歩に喜びと感動があり、退屈はない。10年以上『MH』で育まれ、愛され続けた世界を「冒険」する喜びたるや、どんなRPGにも見られなかった。

これは決して、単なるファンディスクとしての魅力に留まらない。いわば『スターウォーズ:バトルフロント』や『バットマン:アーカムナイト』に近いのだ。

つまり、原作の中で熟成された、溢れんばかりの建材を、贅沢に活用して新作を作る。少々ズルい気もするが、既存のRPGには決して真似の出来ない、質・量共に秀でたが完成した。

 

改めて、ゲームに技術的な問題は関係ないのだと思えた。3DSながら、ここまで充実感に満ちた冒険が出来るRPGは久々だったのだから。

 

総論:スピンオフとしての立場を活用した、2016年のベストRPGの一本

紛れもなく、2016年ベストRPGの一本である。

『MH』シリーズのファンであろうとなかろうと、プレイして損のないクオリティと言えるだろう。

 

長年ファンと共に構築した『モンスターハンター』サーガを、最大限活用して質・量共に優れた世界観へ反映しつつも、

ファンも満足するよう、ビビッドまで拘ったクオリティと、モンスターたちとの冒険を実現した。

更に、ゲーム性についても、「モンスターとの共闘」という斬新な設定を、通常攻撃の相性やモンスターの自動攻撃とステータスのトレードオフなどで実現し、

オトモンや装備などビルドの高いカスタマイズ性、それなりに試行錯誤を問う絶妙なゲームバランス、無駄な作業もなく進む優れたテンポなど、ゲームとしての完成度も極めて高い。

 

無論、いくらかの欠点はある。

大きく目についたのが、ソートも貧弱で狭苦しいUIだ。ボックスやアイテムポーチに使い勝手、ショップ同士の互換機能がない点も苦しい。続編では改善に期待したい。

次に気になったのが、微妙な脚本だ。物語の大筋そのものは、モンスターを通じてハンターとライダーのギャップを乗り越える、十分興味深い内容なのだが、

肝心のセリフ周りや、特に主人公に常にくっついてくる「ナビルー」が鬱陶しくて仕方ない。

ナビルーは、全く喋らない主人公の代わりに勝手に話を進め、それでいて物語の必然性(人間関係の構築)が不十分なため、不快感しか残らないのだ。(脚本的に、モンスターと人間の中立的な存在なんだろうけど)

 

だが総じて、本作が2016年における名作RPGとしての評価は揺るがないと言えるだろう。

熱い戦闘、知的な戦略、退屈しない冒険、そこにスピンオフとして膨大な世界観が加わり、本作は紛れもなくRPGとして、『MH』として、新たな可能性を開拓した名作と言える。