ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

ゲーマーが選ぶ2016年映画のベスト5

 

ネタバレはありません

「ゲーマーが選ぶ」といいつつ、ゲーム的な話はないです。

 

レヴェナント 蘇えりし者

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西部開拓時代のアメリカで、商隊のパスファインダー(先導者)の主人公が、クマに襲われ一人で脱出するという映画。

ディカプリオ悲願の「オスカー主演」をもぎ取った、イニャリトゥ渾身の傑作。

ところで、「娯楽映画」とそうでない作品の違いって何だろう。人間が長々会話してる作品がエデュケーショナルな映画で、アクションシーンが多かったら娯楽映画になるのか。

本作は凄くこの「間」を上手く描いている。哲学的なテーマも、急進的なメッセージもなく、復讐に燃える(理由は本作を観るべし)主人公が、ものごっつい寒いアメリカの雪山を、淡々と歩き続ける。

クマや寒さも怖いが、一番すごかったのがインディアンたちの描写。そらアメリカ人も片っ端からこいつら殺すわってぐらい怖い。

不法侵入してるアメリカ人に正当防衛してるだけなんだけど、地の利を活かしたゲリラ戦法、銃弾よかえげつない火矢の一斉掃射、槍の白兵戦。こういう恐怖が、白人を殺意に駆り立てる。そういう意味で戦争映画でもある。

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遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS

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正直、色々な人から引かれそうなチョイスだけど、私個人では大真面目に今年の邦画・アニメ映画ナンバー1映画だと思っている。

まず、話題となったアニメ映画で挙げられるのが『君の名は』『この世界の片隅に』。いずれも記事にしたので読んで貰いたいが、要約すると、どう足掻いても微妙な点と、すべてを覆すような魅力が、それぞれ物足りない映画だった。

で、これら話題作を除いても、邦画では『怒り』『64』『永い言い訳』『シン・ゴジラ』辺りが十分面白かった。ただまぁ、3年したら何で感動したか忘れそうな映画だった。

で、『遊戯王』。何がすごいというと、まず数あるバトル漫画の中で「カードゲーム」というフォーマットを取り入れた原作の新規性と、それを何年もの開発期間で研ぎ澄ませたアニメーションが組み合わさった、唯一無二のエンタメ姓にある。

脚本も磨き上げられ、奥深い哲学的な命題こそないものの、代わりに、デュエルシーンとドラマシーンに一切無駄がなく、ミュージカルのように軽快かつスムーズに物語が進む。

テンポの良い構成と美麗な作画というなら、確かに『君の名は』もすごかったけど、こっちはそれをデュエルという独自のシーケンスで活かせる。

『青眼の白龍』が羽ばたく雄大さ、罠カードで迎撃する遊戯の切り返し・・・。正に「ボードゲーム題材のバトルアニメ」としての、到達点を確立した作品として、今年最も印象に残った邦画だった。

 

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

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エピソード1~6からなるスターウォーズのうち、3~4の間を描いた外伝。でもやることはいつもの戦争。

単純にワクワクできる映画という点では、今年ベストの傑作。去年の『マッドマックス』並にワクワクしたし、個人的にすげえ微妙だと思った『エピソード7』が、やっぱゴミだったと確信できるレベル。

まず色々豪華すぎる。すごい凝ったセットの惑星も10分もせず移動しちゃうし、オリジナルとプリクエルから色々な兵器が総出で出動してるし、登場人物もわんさか出てきてわんさか死ぬ。

スター・ウォーズ・ユニバースを徹底的に利用して、最高の砂場を作り出したって感じの作品。

対する『エピソード7』は、続編のことを考えてか、人物もロケーションも一々ケチるし、安っぽい伏線も貼るしで、ディズニー資本のくせにやたら貧乏くさい映画だった。

『ローグワン』はその点やり放題。このコンセプト、世界中の色々な映画をモンタージュして(パクって)、映画好きが、最高に笑える映画を作ってやろうっていう『エピソード4』そのものだよね。

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スポットライト 世紀のスクープ

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司教による子供への性的虐待「ゲーガン事件」と、その事件の真実を追求しようとする「ボストン・グローブ紙」を描いた、実話に基づく映画。

私はこのブログに「ゲーマー日日新聞」なんて名付けるぐらいには、ジャーナリズムの重要性を意識している。第四の権力、ウォッチドッグ。私自身の人生とも切り離せない。

アメリカにおいて、宗教は日本以上にタブーな話題だ。まして、その宗教の腐敗を批判する記事を書くことが、どれほどリスキーか。真実追求と企業利益、その相克で記者たちは苦しむ。

彼らは最終的に「真実追求」の道を選ぶ。そこに至る彼らの葛藤と熱意を、本作は余すことなく描く。実際の所、こんな映画を作る事自体、とある団体から「マスコミ賛美」の誹りを受けかねないリスクを背負っているというのに。

真実を暴き、目を背ける市民に訴える。ビデオゲームに、ゲーマーにその勇気があるか。報道の自由度72位の我が国から観た、ボストン・グローブ紙と、彼らの戦いを描いた本作の光は、余りに遠く感じられた。

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2016年ベスト映画

ハドソン川の奇跡

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突如発生したアクシデント。マンハッタン上空で乗員155名を載せたエアバスが墜落の危機に瀕する。

サレンバーカー機長はその一瞬で「ハドソン川への着水」を選択し、乗員は全員救出。この事件は「ハドソン川の奇跡」として報道された。

本作はその後。国家運輸安全委員会による事故調や、マスコミによる報道、USエア社の処理、そしてサレンバーカー機長本人の心の底を描く。

「ハドソン川への着水」は本当に正しかったか。万が一失敗して、155人が死亡したら?委員会の追求は厳しく、サレンバーカーは声を荒げて反論する。

本作は徹底的に「中立的」な立場を貫く。委員会、機長、彼らは立場を違えど、乗客の安全のために「戦い続ける」。彼らは乗客の生命という、極めて重い責任を以て、戦っているのだから。

事故が起きた当日の「奇跡」と、事故の原因を調査する「戦闘」を、本作は交互に描く。どのシーンでも、それぞれのオトナたちが、それぞれの仕事を本気でこなす。

徹底的に、本作は「オトナたちがカッコいい」ことを描く。真面目に、現代の日本映画が絶対作れない作品だと思った。

ガキみたいに叫ばせる、ジジイみたいに説教させる、朝のニュースみたいに黙って演技させる。それじゃ絶対にこの映画の領域に到達しない。

本作の登場人物は常に「外」を見ている。人を守り、人に奉仕する。オトナたちの責任。どうやってこんなにカッコよくオトナたちを描いているのだろうか。

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大作映画ばっかりだけど、やっぱハリウッドは強いということで。

アメリカ以外でも『ダゲレオタイプの女』『手紙は覚えている』など素晴らしい作品も多く(『サウルの息子』はいずれ記事にしたいね)、今年も恵まれた年だったなと。

あんま洋画がー邦画がーと言いたくないけど、やっぱり洋画は「真面目に作った作品」が多い。ちゃんと観客に何かを伝え、表現しようとしている。そこに妥協がない。

邦画にも面白い作品はあるけど、殆どがどこか戯けてるというか、悪い言い方すると舐めてると、私個人は思ってしまう。

日本だと、やりたいことを真面目にやってる作品はあるけど、それで観客の前に差し出し、しかも映画史のコンテクストまで見据えて、真面目に作ってる、そういう慧眼がある作品が少ない。それは作り手サイドだけじゃなく、鑑賞者サイドの問題でもあると思うけどね。