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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【評価】『ゴーストリコン ワイルドランズ』の感想やレビュー COOPで蘇ったリアル系シューター

ゲームレビュー

 

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www.youtube.com

 

特殊部隊in南米

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ゴーストリコン』シリーズといえば、一発の銃弾が致命傷となるシビアなバランスを、特殊部隊の仲間を賢く指揮して、乗り越えるシューターだ。

今回の舞台は南米ボリビア。現代の南米では、武装したカルテルたちが麻薬を違法に製造し、米国に密輸している。

更に、カルテルたちは密輸で得た莫大な利益で武装し、政府さえ脅かしている。そこで、カルテル無力化のためき米国から特殊部隊の主人公らが派遣されたわけだ。

 

ボリビアは広大だ。内陸国として四方が山に囲まれ、更にアンデス山脈が国を縦断している。

プレイヤーの分隊は、この世界を自由に移動できる。乗り物には車やバイクの他、ボートやヘリが複数用意されている。

マップ中にはクエストが用意され、それらを自由に受注できる。破壊工作、暗殺、拉致、といった物騒なものが多いが、相応にバリエーションに富んでいる。

 

戦闘は従来の『ゴーストリコン』同様にシビアだ。本来、『GR』シリーズは一発の被弾が命取りとなる、「リアル系」と呼ばれる硬派なシューター。

銃撃戦はリスキーだ。故に、偵察ドローンで敵を偵察し、先に敵を発見した状態で、近接攻撃や狙撃によって確実に一人ずつ排除する。この緊張感こそ『GR』の魅力だ。

 

興味深いのは、これらのオープンフィールドに、様々な自然環境を戦略的に取り入れている点だ。

確かに、『FAR CRY』シリーズや『MGSV』などのフィールドも広大だったが、如何せん「真っ平ら」で、プレイヤーが利用できる環境は櫓や遮蔽物のような人工的な建築物であり、少々単調だった。

本作はボリビアを舞台としているだけに、高地から川、湖まで多様な自然環境を利用して潜入できる。特に、高地は天然の狙撃・偵察スポットとして活用できる他、いかに高所を確保しながら潜入するか考えるのも楽しい。

 

COOPという革命

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一撃が致命傷となる「リアル系」なバランスながら、広範なフィールドを活かし、双眼鏡やガジェットによる偵察を行い、地の利を活かして敵を排除していく、いわばゲリラ戦法で闘うシューターは最近のトレンドだ。

こうした「アウトドア系」のゲームプレイは、既に様々な作品で実現されてきた。2002年に発売された初代『ゴーストリコン』もその一本であり、

更に古くは2000年発売の『Project IGI』、そして高度なAIによる新たなゲームプレイをもたらした2004年発売の『FAR CRY』もその代表格と言えるだろう。

そこから、絶妙にカジュアル層に落とし込んだ作品としては2012年発売の続編『FAR CRY 3』が生まれ、そのコンセプトをさらなる規模で実現した作品として、ご存知『METAL GEAR SOLID V』が存在する。

 

こうした長きに渡る「アウトドア系」の系譜において、本作『ワイルドランズ』もまた新たな伝説を残そうとしている。

『MGSV』が実現した、戦闘用には贅沢すぎる程の活き活きとしたフィールドを引き継ぎ、更に「COOP」という要素を盛り込んだのだ。

本作はプレイヤーと3人のAI分隊員で進行するが、プレイヤーは任意に分隊員を普通のプレイヤーと入れ替える事ができる。野良は無論、友人とマッチングすることも可能だ。

 

この生身の人間との「COOP」は、一見ただ「のせただけ」のように見えて、従来のアウトドア系は無論、COOPゲームとしても意外なまでに興味深いゲームプレイをもたらした。

まず何と言っても、リアル系としての緊張感、COOPゲームとしての和やかさを、絶妙な塩梅で実現している。

戦闘時の緊張感は、明らかにソロプレイ時より高い。ほんの僅かな油断が仲間を危険に晒し、一方で息の合った瞬間の快感を知れば、プレイの一つ一つに熱が入る。

 

COOPゲームとしても文句はない。本来COOPゲームは、仲間と交流する一方で没入感を失ってしまうものだが、本作は精巧なフィールドと戦闘の緊張感が我々を挑戦する。

まるで本当に特殊部隊となり、危険な任務に挑むような感覚は、正しくリアルなサバゲーだ。もしDiscord等で友人と通話しようものなら、思わずノリノリで、「Target Down!」とハリウッド映画のモノマネをしてしまいそうになる。

それでいながら、フィールドに散りばめられたアクティビティとビークルは、対象的に牧歌的で和やかだ。ドライブでのアクシデントを一緒に笑い、稀に見える絶景に心が奪われる。

この「戦闘」と「旅」の絶妙な対比は、同時期に生まれでた『Horizon』や『ゼルダ』のような素晴らしいオープンワールド作品と比較しても、絶対に得られない素晴らしさがある。何といっても、友達と一緒にその感動を味わえるのだから!

 

正直言えば、本作はソロで遊ぶ分にはやや凡庸である。AI隊員の挙動も特に面白いわけでなく、『FC3』を順当に進化させた『MGSV』に、ドカンとCOOP要素をのっけたゲームだと言い切って構わないだろう。

だがそのCOOPこそ、本作に革新をもたらした。ただ敵を倒すだけの単調になりがちなオープンワールドも、生身の人間と遊ぶことで、色々なアイディアや連携を試すようになり、結果的に「優れたサンドボックス」へと進化する。

 

魅力的だが限定的だ

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とは言え、こうした革新にはいくつか犠牲がつきものであり、旧来『ゴーストリコン』の魅力は大幅に削られたと言える。

 

まず、アウトドア系シューターとしての魅力だ。

コンシューマに移行した際の『Advanced Warfighter』の時点で既に見られたが、『Operation Flashpoint』顔負けのリアルな挙動と挑戦しがいのあるゲームプレイは、殆どみられない。

まず、マップが狭い。いや、全フィールドそのものは広いものの、巨大なオープンワールドを局地的に切り分け、そこを戦場としているので、一つ一つの戦闘で使うフィールドは、既に一本道TPSと化した前作『Advanced Warfighter』や『Future Soldier』よりも狭い。 

これは既に『FAR CRY 2』の時点で見られたものの、根本的に『GR』のゲームプレイと矛盾してしまう。

広いマップをどう移動し、どう敵を排除するか、といった戦略性は削られ、狭いマップにすし詰めにされた敵を片っ端からヘッドショットする方が手っ取り早いのだから。

確かに、優れたグラフィクスとリアルな挙動で雰囲気は抜群だが、実際にゲームプレイとしての緊張感は、仮に難易度をマックスにしても感じられない。

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初代

 

総じて、本作は最新技術と予算を駆使し、既存のアウトドア系シューターの魅力を大量に取り入れ、その上でCOOPという革新性を手に入れたものの、抜本的な『ゴーストリコン』の血筋は途絶えたような作品である。

最近の経済業界によくある、伝統や家系なぞ関係ねえ!という姿勢も良いが、もはやシリーズの原型を留めておらず、ファンはある程度の覚悟の上で遊ぶべきだろう。

それにしても、UBIはCOOP作品を作らせたら右に出る者はいないのでないかと思う程、秀逸なCOOPゲームを作ってくれている。

前作『Future Soldier』のCOOPモードも最高で、同社の『Splinter Cell』や、『Assasin's Creed』でも、地味ながら優れたCOOP要素を見せてくれた。

ある意味、ゴーストリコンというよりUBIブランドの最新作としての立ち位置が、一番納得いくかもしれない。