ゲーマー日日新聞

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【評価】『仁王』の感想やレビュー 合理化されたダークARPG

 

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和風ダークファンタジーを生き残れ

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本作はアクションRPG。刀、二刀、槍、斧、鎖鎌の5種類の武器を中心に、魔法のような陰陽道、忍術、更に火縄銃のような飛び道具、特殊なアイテムを使い分けて攻略する。

舞台は戦国時代末期の中世日本であり、主人公のウィリアム(実在の人物である)は、同じ英国の男を追い、徳川家康の臣下に加わることで、その陰謀を突き止める。

基本はミッションクリア式。最初にマップが表示され、そこから遊びたいステージを選ぶ。ステージの最後には大抵ボスがいて、それを倒すといくつかの報酬とともに新たなステージに臨む。

 

和風ダークファンタジーな世界観、自動でなく手動でポイントを割り振るビルドシステム、頭や胴まで部位毎にセットできる防具、やたら高い難易度・・・。

言わずもがな、本作はフロム・ソフトウェアの『ソウルシリーズ』を思わずにいられない。

とは言え、本作を開発した、コーエーテクモ内のTeam NINJA側にも言い分はある。構想から12年あってようやく発売に漕ぎ着けたと強調しており、また彼らにも『NINJA GAIDEN』という硬派なアクションを開発した技術力がある。

真意の程は定かではないが、ゲームプレイは余りに酷似しており、しかも類似した作品も少ないとあれば、規模の大小はあれど大いに影響を受けたことは明らかである。

 

その上で、あえて私は本作に敬意を評したい。他作の優れた点を模倣し、自分の作品に取り入れる行為は、傍から見れば「パクリ」といった誹りを受けることもあるが、それ自体当たり前のことである。

”どんな”作品であっても、何かしらのパクリだ。重要なことは、パクった点をどう落とし込むかであり、パクったかどうかの事実ではない。

いわんや、『ソウルシリーズ』の癖の強いゲームプレイと世界観は、極めて高い完成度により、辛うじて保たれていた。この作品を「パクる」事自体、リスクがある行為であり、現に表立った模範作が生まれなかった証左である。

 

結論から言って、『仁王』は見事、『ソウルシリーズ』の絶妙なバランスはそのままに、むしろ既存のゲームプレイを合理化し、更に『ソウルシリーズ』の欠点を新たな方法で解決し、高度な次元へ昇華させた。

では個別に確認しよう。

 

オルタナティブを提示する

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本作は開発陣が制作していた『NINJA GAIDEN』シリーズはもとより、『ダークソウル』による強烈なインスパイアが数多く見受けられる。そこで、より具体的に本作の魅力を説明する上で、あえて『ソウル』と比較してみようと思う。

 

『仁王』の優れた新要素として挙げられるのが、「スキルシステム」だ。

本作は、レベルアップや特定の行動、特定のアイテムにより、スキルポイントを入手する。そのポイントを割り振ることで、新たなアクションや忍術、ステータス向上といった報酬を得る。

スキルの中には、バックスタブの追加や、携行弾数の増加のような現実的なスキルもある中、真剣白刃取りや槍のアッパーなど、一癖も二癖もあるスキルまで揃っている。

このシステムが何より優れている点は、とにかく「わかりやすい」ことだ。スキルはツリー状になっていて、将来どのようなスキルが入手できるかわかるため、計画を立てて成長させることが可能だ。

この点は忍術や陰陽道でより顕著であり、自分が必要なスキルまでのポイントまでわかるため、刀や弓を武器にする武士スタイルでも、サブ武器として気軽に忍術を採用できる。

一方、『ソウルシリーズ』には、「どこで何が手に入るかわからない」冒険感があるものの、プレイヤーは入手できるスキルは当然、それに必要なレベルさえわからないので、初見プレイで計画的なビルドは殆ど作れなかった。

 

もう一つ『仁王』の優れた点は、「構えシステム」だ。

本作では武器種こそ5種類と、『ソウルシリーズ』に比べれば少ないものの、「構えシステム」によって、実質1つの武器に3種類ほどの武器のアクションが楽しめる。

「構えシステム」とは、同じ武器でも、手数の多い「下段」、平均的な「中断」、一撃毎に重い「上段」と、それぞれの構えを自在に変更できるシステムであり、『ソウルシリーズ』における「片手持ち・両手持ち」システムに近い。

このシステムのメリットは、同じ武器でも多様なアクションを楽しめる点だ。構えによって別物と言える程アクションが異なるので、ステージやボスによって構えを変えれば、あっさり攻略できることも少なくない。

『ソウルシリーズ』の場合、こうした柔軟な変更は難しい。まず武器毎に要求ステータスが異なり、更に武器毎に大量のアイテムで強化するので、いざ「軽い武器が欲しい」「重い武器が必要だ」と思っても、一から用意する手間があった。

 

この2つの魅力、「スキルシステム」と「構えシステム」は、ただわかりやすく、新しい要素というだけでなく、それぞれRPG要素とアクション要素にオルタナティブ、つまり「代案」をプレイヤーに提示する。

例えば、レベルによるステータスの割り振りは緊張感と個性が生まれて楽しいのだが、それが全てとなれば、責任が重くなる余り、初心者は消極的に体力やスタミナに割り振り、結果的に緊張感も個性も失われるだろう。

一方、『仁王』では「ステータス」とは別に「スキル」という、2種類の項目を割り振らせることで、「ステータス」を手堅く固め、逆に「スキル」ではっちゃけた構成にする等、常に余裕を持たせ、更に多様性を持たせている。

「構えシステム」も同じだ。ボスが倒せずに詰んでも、同じ武器をひたすら練習するしかないとなれば、プレイヤーも疲れるし、色々な武器が用意されているのに放置されてしまう。

だが、同じ武器に愛着があっても、「構えシステム」によって使い分ければ、飽きも来ないし、攻略も突破できる。

これらのシステムは、『ソウルシリーズ』における重要な「やり直しがあまり効かない」硬派なゲームデザインを維持しつつ、しかしオルタナティブを提示することで、プレイヤーに多様な選択肢をもたらしている。

 

ミクロで見ると貧弱

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とは言え、『仁王』にも様々な課題点は散見される。

 

まず、世界観や物語を『仁王』に期待すべきでない。『ソウルシリーズ』は当然として、平均的なRPGと比較しても、貧弱という他ない。

史実を交えた物語と、百鬼夜行の世界観は、ほとんど接点がない。何故史実の日本が舞台なのに、妖怪が蔓延っているのか、リアルとファンタジーが融合しきれていない。

仮にこれが、戦国時代が何百年と続き、日本が荒廃した暗黒の土地になったとか、ファンタジーな方向に持っていけば掘り下げようもあると思うのだが。

また、フラフラと歩き回るイギリスからの宿敵や、謎の物質アムリタに関しても、これといった掘り下げもなく、魅力に欠ける。逆に、著名な武将たちによる大河ドラマもなく、彼らはただ現れては僅かな台詞と共に消えていくだけだ。

世界観についても同様だ。確かに江戸城や厳島神社のような、日本の美しい名所を舞台とするのは良いが、大抵は地味な室内か真っ暗な夜道で、関西なのか九州なのかさえわからない。

 

対して、『ソウルシリーズ』の場合、ありふれた方式さえ使っていないだけで、様々なアイテムのテキストから物語を読み解くTRPG的な楽しみ方や、過去と現在で論理的に読み解ける脚本、人間の業や神々の堕落といった抽象的なテーマなど、およそ現代のRPGと比較しても、極めて充実した物語部分がゲームに落とし込まれており、これがプレイヤーを惹きつけていたのは事実だ。

世界観においても、残酷な処刑場や、荘厳な古城など、様々なロケーションがあり、序盤はリアルな旧市街から、終盤はファンタジーな異界へ進行するなど、リアルとファンタジーの描き分けも十分だった。

 

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どこまでも平坦で、徐々に作業気味なゲームプレイになる

 

またレベルデザインについても、『仁王』はかなり寂しいものがある。

まず、敵の種類の数はかなり少ない。基本は、亡者、武士、鬼の三種類で、ここからステージ毎に1種類、特殊な妖怪が追加される程度。

如何せん、同じ種類の敵ばかり出現するため、対処方法を把握してしまう分、何故か後半になるほど楽になるという傾向にある。*1

マップについても面白みが少ない。世界観の貧弱さは先述の通りだが、単に攻略する上でも、マップはとにかく平坦で、立体的な地形に欠け、まるで2D横スクロールを遊んでいる気分になる。

マップ毎のギミックや個性も少ない。忍者屋敷のような一部のマップはともかく、大抵は一本の細道か、大量湧きのイベントがある程度なので、ぶっちゃけマラソンすれば事足りる。

一方、ゲームバランスもかなり適当で、一部の陰陽道や忍術が強すぎる(むしろ陰陽道縛りが苦痛すぎる)のも考えもの。使えばどんなボスも瞬殺できるが、そうでなければ鬼耐久で泥仕合になってしまう。

 

総じて、『仁王』はシステマチックなマクロな面では、優れた点を大量に有している。先述したスキルシステムや構えシステムもさながら、キビキビとしたアクション、ハクスラ要素なども評価したい。

一方で、レベルデザインやアートのようなミクロな面では、凡作の域を出ない。あらゆる場面で個性が薄く、ありふれた要素に満ちており、ゲームプレイを掘り下げきれていない。

ボリュームは『ソウルシリーズ』と比較しても長い方だが、正直後半になると苦痛でしかなかった。冗長になりがちな終盤を削って、もっと中盤を充実させてもよかったのではないか。

序盤は『ソウル』より興奮するが、終盤は『ソウル』より飽きる。というのが、実直な意見だ。

 

確かに『ダークソウル』という偉大なパイオニアと比較されることは免れないが、それでも『仁王』には優れた点が多々存在している。そもそも、『NINJA GAIDEN』シリーズの影響も強く、ニンジャガの外伝だと言われても納得できる作品である。

いずれにせよ、ダークファンタジーのファンも、初心者も、チーニンファンも試す価値のある、優れた作品の一つと言えるだろう。

 

 

*1:逆に、ボス戦の楽しさはアクションRPGの中でも随一だ。ボスの種類はとても多いし、理不尽な敵が少ない一方で、動きには多様性があり、よく研究されていることが伺える。