ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

youtubeで700万再生された、「ある『LoL』を辞めた理由」

 

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要約:

・dunkeyとは最強に面白いyoutuberで、LoLプレイヤーの中にも多くの信者がいる

・dunkeyの怒りもわかるが、本人も少し言い過ぎ

・一方、彼の過去動画を観ると「ランクを上げるに連れて」『LoL』への不満を募らせていた

・何故なら、暴言は初心者帯のみならず中級者帯でも頻繁にあったから

・プレイヤーの民度は、本国にとっては些細な問題でも、人口が少ない日本では死活問題で、今すぐコミュニティ・Riotが対処すべき

 

『リーグ・オブ・レジェンド』(以下『LoL』)世界的に最も遊ばれているオンライン対戦ゲームである。

しかしながら、ゲーム的な魅力とは別に、『LoL』には大きな負の側面がある。それは「民度」だ。

とにかく、プレイヤー同士が衝突しやすく、フラストレーションが溜まると言われるこのゲーム。本作を「引退」する最も大きな理由となっているだろう。

 

ところで、ある男が、その『LoL』を辞めると宣言しただけの動画が、700万再生されている。

その男の名は「videogamedunkey」。動画の平均再生数200~300万、サブスクライブ数は330万と、世界的に見て著名なyoutuberであり、私も彼のファンである。

そんな彼でも、700万以上再生された動画は数少ない。それはdunkey自身の影響力のみならず、この動画が2年前大きな反響を呼び、『LoL』界隈で物議を醸した上に、Rioterまで波及したのである。

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何故彼は『LoL』を辞めたのか。まずは私が翻訳したこの動画を観て欲しい。

 

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ところでDunkeyって誰?

dunkeyとは当時最も有名だったyoutuber・LoLプレイヤーの一人である。

独特の訛りから繰り出す、クセのあるトークと編集が特徴的で、現状では平均再生数200~300万、サブスクライブ数は330万の規模を誇る。

2年前の『LoL』をプレイするyoutuberの中ではダントツの知名度を誇り、ほぼ全ての動画で200万~300万超えは当たり前だった。

因みに、現状最も著名なstreamerの一人、Nightblue3で平均100万再生前後、BoxBoxで平均50万前後、日本でも頻繁に紹介されるBronze Momentsでも平均50万前後であることを考慮すると、どれほど影響力があったかご理解頂けるだろう。

 

因みに、彼の動画はほぼ有志により字幕化されているので、少し英語が読めれば楽しめる。いくつかオススメの動画を紹介しよう。

 

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Dunkey考案のニューメタ「10分AFK戦略」の動画

 

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ランクでイライラしながら頑張る人に届けたい

 

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dunkey主催のタイマン大会。ゲストの中には著名なyoutuberからプロプレイヤーまで。

 

彼に興味を持ってくれた方には、是非こちらも読んで頂きたい

arcadia11.hatenablog.com

 

Dunkeyの主張は正しいが、無理もある

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「僕は『LoL』を辞める。」

「わざと負けるようなクソ野郎に暴言を吐いたら、一方的にBANされた。」

「相手が先にトロールしてきたのに、何故俺だけBANされる?」

「そもそも、競技シーン前提のゲーム性は、まともなマッチングを祈り、お互いの凡ミスを40分待ち続けるだけのソロQじゃ成立しない。」

「無論、riotはこうした問題に目を向けず、僕の貢献についても考慮しない」

「なら真面目に練習して遊べるゲームを探すよ。じゃあな。」

件の動画を要約すると、恐らくこんな具合であろう。

 

まず言っておくと、私はdunkeyのファンだが、この言説に限っては完全に支持するつもりはない。

100%悪いのは、間違いなく動画に出て来るマルファイトや、それに類するtrollプレイヤーだ。私自身も何度も悔しい思いをさせられてきたし、それこそこういう人間に出会うと、dunkeyの言葉でいう「撃ち殺されろ」という気分にもなる。

だが一方で、彼の暴言には問題があり、それに対する14日間のBANも妥当という他なく、更に彼の「特別な釈放」をRiotが断った点も当然という他ない。

もし本当にこの問題を議論するのなら、彼はまずマルファイト達に直接暴言を吐かず、彼らをレポートし、その上で、Riotと議論するなり、この動画をアップすべきだったのだ。

だから、私はdunkeyの全ての主張を支持するつもりはない。

 

それでも、彼の主張に納得できる部分も多々ある。

特に、明らかにtroll(意図的な利敵行為)とtoxic(暴言)の制裁の大きな隔たりがあるのは自明だ。toxicには会話ログという明確な証拠が残るが、trollは真面目にやっていたのか、意図的にふざけたのか判断する証拠はない。(タム・ケンチで味方ごとタワーダイブするとかは別として)

故に、両者ともゲーム進行を妨げることに違いはないのに、toxicなプレイヤーに偏ってBANされる。またこうした制裁を逆手に取るように、他プレイヤーに不満をぶつけるため、わざとtrollに走るプレイヤーもいる。

いずれにせよ、この問題をRiotは真剣に対処出来ているとは言い難いし、この問題が『LoL』のゲーム体験を大きく毀損しているのも事実だ。

 

『LoL』を辞めた経緯について

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だが日本で恐らく最もdunkeyを知る私が付け加えると、この動画は、最初からriotや『LoL』を改善するために作ったものでなく、完全に決別の証としてアップした動画だと思う。

以前の動画を観れば明らかだ。

彼は初心者だった初期こそ仲間と『LoL』を楽しんでいたが、次第に実力を身に着け、ランクマッチに挑む動画が増えると、途端に雲行きが怪しくなった。

彼の言う、「真面目な練習が報われない」という不満は当初からあったに違いない。彼は持ち前の優れたユーモアで誤魔化していたが、イライラしていることは動画からも伝わっていた。

こうした兆候は、この動画がアップされる半年前から見られた。

 

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彼がまだノーマルでエンジョイしていた頃。因みに当時のdariusのQはほぼ即時発動で使いやすかった。

 

 

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引退寸前の動画。笑える動画にしているが、ソロランク特有の「魔境」について相当不満が溜まっていたようだ。

 

だが彼もまだそれをネタに出来る程は余裕があった。問題はプラチナまでランクを上げた時である。

恐らく、彼は「低レート=魔境」だから、高レートならまともなゲームが成立するだろうと考えたのだろう。動画でも「Now I can play real players」と言いつつランクをあげているし。

ところが、実際には「real players」とは遊べず、相変わらず「real retards」と遊び続ける現実があった。それが完全に彼の心を折ったのだと私は思う。

実際、日本でも未だに「民度が低いのはお前が低レートなせい」と言う人間が割りといるが、それこそ、「低レート」特有の幻想なのだとわかってしまったのだ。(高レートの配信を観ればどちらが正しいかすぐわかるだろう。)

 

こうした経緯を考えると、dunkeyは最初から『LoL』を続ける気はなく、彼は本当に「辞める」ことを前提に、思いの丈を動画にぶつけたのだと思う。

これまで『LoL』を通して何十本の動画を投稿し、そのほとんどが100~200万再生されたdunkeyは、当時のyoutubeにおいて最も著名なlolプレイヤーの一人だった。

そんな彼が、動画の中で徐々にメンタルを壊し、身も蓋もない動画を最後に、『LoL』と、それに連なるファンと再生数とにサッパリ縁を切るのは、当時大きな衝撃だった。

 

そして、その衝撃は「世界中の」『LoL』界隈に浸透した。(実は日本までこのニュースが届いた)

彼の主張は賛否の別れるものだったが、『LoL』をプレイしていて彼と同じ不満を持つものは多く、こうした一方的なriotの裁決にも批判が集まった。

多くのファンが彼の引退を惜しみ、また多くの著名なプレイヤー、UberDanger、Sky Williams、keyori等が彼の議論を引き継いだ。最終的に、Rioterの一人、Lyteが直接言及するまでに至ったのである。

 

What do you think about vgdunkey's ban?

Riot Lyte:

It's really unfortunate. Many Rioters love Dunkey's content, and I've unloaded my share of "Not even close babyyyyy" jokes around the office; however, we really can't show favoritism to someone just because they are a pro or a known content creator.

多くのRioterがdunkeyの動画を愛しており、彼の引退はとても残念だ。オフィスでは彼の「Not even close babyyyyy」ネタすら浸透していたからね。だけど我々はプロや有名人を、自分たちの都合で特別扱いできないんだ。)

 

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最も割を食うのは「中級者」である

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またこの動画の注目には、こうしたdunkey自身のカリスマもさながら、そのあまりに赤裸々な主張と経緯故に、共感を呼んだこともあっただろう。

つまり、先程述べたように、初心者としてノーマルを友達とエンジョイし、そこで実力を身に着け、いざランクマッチに挑むものの、変なマッチングが続き、それでも高レートのため日々不毛なランクを続けた先に待つ、過酷な現実。

多くのプレイヤーが実際に体験したことがあるキャリアではないだろうか。実際のところ、『LoL』の「低い民度」で割を食うのは、中級者ではないかとすら思える。

 

従来、日本の『LoL』で最も問題視されているのは、「初心者が暴言で萎縮する」という点である。

確かに、これは明確な問題だ。このゲームでは初心者がいきなりランクマッチを始めると、ゴールド5相当のMMRで開始するが、ここから10連戦のプレイスメントで大抵7~8回は何も出来ず敗北するだろう。

そうなると、ほぼ間違いなく何かしらの試合で嫌味を言われ、pingを炊かれ、挙句に「uninstall plz」と言われる。同時にgoldで頑張ってランクに挑む中級者も、突然現れた初心者に全てメチャクチャにされ、ゲームに敗北されるのだからたまったものでない。

 

それでも、そんな暴言に耐えてでも遊ぶ程に、このゲームにハマる人間も一部現れる。そうした人間は、「高レート」のまともなマッチング・試合に夢を抱いて、「魔境」と呼ばれる低レートの脱出を図る。

だが実際には、高レートなどというユートピアは存在しないのである。無論、レートが上がる程に試合の質は向上するが、根本的にゲームそのものが揉めやすく、ランダムなマッチングである以上、絶対にこうした民度の差は出てくる。

そして中級者は、こうした現実を完全に受け入れ、『LoL』でなく、『LoLのsoloQ』というゲームを遊んでいることを理解するのだ。

 

無論、これを努力を続けるプレイヤーは一部いるし、才能があれば難なく突破できるだろう。そうした彼らはダイヤ、マスター、チャレンジャーになり、プロシーンに入れるかもしれない。

だがゴールドやプラチナの中級者レートで停滞すると地獄だ。自分に過失がなくとも他人に暴言を吐かれ(特にジャングラー)、一方でどうしようもないトロールやブーステッドヌーブに頭を痛める、板挟み状態である。

 

つまるところ、『LoL』プレイヤーには二度試練が与えられる。

一度は初心者の頃、実力がないことを理由に一方的に責められる時。

二度は中級者の頃、同様に暴言を吐かれ、しかもマッチングミスの初心者やtroll、ブースト野郎の板挟みに合う時だ。

dunkeyは前者の立場を克服したが、後者の立場で躓いた。そして、彼による動画は、大して議論されていなかった後者の立場にあった多くの人間にとっても、共感できたのだと想像できる。

 

dunkeyの現在とRiot "JP"の問題

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結論から言って、dunkeyの判断は正しかった。

当時のdunkeyの動画は殆ど『LoL』で、それを一気に切るのは大きなリスクがあったが、現在では『Overwatch』の動画が人気が博し、更に最新ゲームのレビュー等を投稿するなどして、結果的に当初の数倍の規模を誇っている。

これは単に、dunkey個人のキャリアはともかく、イライラしながらゲームを遊ぶ(そして動画にする)ぐらいなら、さっさと別のゲームを遊んだ方が幸せになれるごく自然の結果なのだろう。

 

一方、『LoL』に関して、こうした問題は二年経過した現在において特に改善されていると思えない。

依然として初心者は怒られ、チャットしただけでBANされたと逆ギレする人もいる。そしてRiotは、初心者がゴールドとマッチングする環境も、暴言やtrollやfeedの画一的な処分も、「強者の気分が味わえるチャンピオン」を作るクソ調整も、何も変わっていない。

表立っては、サービス開始当初のプレイヤー寄りの在り方を「ask Riot」などの記事で見せているが、肝心の都合の悪い意見は流し、当面の予定は極めて不透明な話で濁し、結局ソロQの実現(というか差し戻し)にほぼ1年かける有様である。

 

こうした問題が些細なことと処理されることは、Riotのビジネスに理由がある。

日本サーバーはともかく、少なくとも世界的に圧倒的な人口がある『LoL』は、複雑な問題を解決するより、そこに膨大なコンテンツを垂れ流すことにリソースを割いた方が効率が良い。

実際のところ、こうしたriotのスタンスは合理的であることに違いない。これほど肥大化したゲームだからこそ、他社に実現できないコンテンツの量で大多数のプレイヤーに消費を促し、そうした大衆の中で些細な問題は埋没させ、コンテンツとユーザーの新陳代謝を促す。

 

だが話を戻し、日本サーバーという点を考慮すると、事情が変わってくる。

アカウント数だけで比較した場合、ランクをプレイした人数は北米で約120万、韓国で約270万に対し、日本は8万である。(4月現在)*1

dunkeyがプレイしていたのは北米サーバーだから、日本の人口は彼らのほぼ15分の1程の規模でしかない。そんな中で、果たして現行のRiot的なスタンスで良いかというと疑問が残る。

つまるところ、Riotのスタンスは「来る者は拒まず、去る者は追わず」だ。現にdunkeyは思いの丈をぶつけて去り、彼の主張は『LoL』のマナーについて一石投じ、こうした議論を含めて『LoL』は成長し続けてきた。

だが日本の『LoL』は、せいぜいアロワナ止まりである。コミュニティは小さく、去る者追わずのスタンスを続けて維持できる規模ではない。

 

皮肉な話だが、北米の何分の一にも満たない日本サーバーだからこそ、こうしたマナーや民度についての議論は殆ど進んでいない。*2

それは簡単で、話す人間ががいないからである。北米も日本も、こうした不満を抱く人間はいるが、環境は大きく異なる。北米ならstreamerやyoutuber、proが積極的に活動し、コミュニティにもマニアからカジュアルまで幅広く集まっても、日本はそうと限らない。

日本のプロはどうか?マナーを議論するどころか、むしろBANされる始末だ。ストリーマーですらtoxic芸を身に着け、何より、コミュニティ全体に「日本鯖にそんな問題は存在しない」と言わんばかりの同調圧力がある。挙句、Riot公式が問題発言する始末だ。

こうした閉鎖的な環境が残る日本サーバーにおいて、こうした諸問題を放置するのは危険であり、現状多いと言えないユーザーをみすみす逃すハメになる。特にRiot JPは本社以上に、こうした課題に取り組むべきだろう。

そしてその際、かつてdunkeyが主張した『I'm done with league of legends』と、当時の反響を振り返る価値はあるだろう。一体プレイヤーが何に不満を持ち、そうした不満をどう解消できるのか、そうしたヒントがここにあると思う。

 

(因みにdunkeyの『LoL』動画は今観てもとても面白いので、是非観てくれXD)

 

過去記事

arcadia11.hatenablog.com

*1:opggの統計を参照

*2:Rioterが「チャットマナーを診断します!」って言ったら、晒すだけ晒して無意味な説教垂れ流すぐらいはしたけど

https://boards.jp.leagueoflegends.com/ja/c/player-behavior-sportsmanship/ddqRhYhd-loliieiiiiuslza1