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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

ゲームに最強武器は必要か?

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昨今、ゲームのタイトルで検索をかければ、サジェストの中に当然のように紛れているのが「○○○○ 最強武器」とか「○○○○ 強い」といったワードだ。

当ブログでもしばしばこうした記事は執筆しているので大きな声で言えないが、こうしたワードにうんざりしている人も多いだろう。

某game withだのgame8だの、どストレートなアフィリエイトサイトが、こうしたタイトルと共に引き写しで書いた記事で炎上したこともある。

 

ともあれ、ゲームデザインの視点で考えた場合、果たして「最強武器」は必要なのだろうか?

 

「最強」の語源、メタゲームとは何か

そもそも、「最強」という単語で検索をする人が、ここまで多い理由とは何か。

それは当然、合理的に勝利するためである。より確実に、より容易に、相手プレイヤーを倒したり、厄介なラスボスを攻略するために人は「○○ 最強武器」と検索する。

こうした、「最強」を求めて日々試行錯誤したり情報交換する過程で生まれる、ゲームの外のゲームを、一般的に「メタゲーム」とも言われる。

 

*1

 

重要なことは、現状「最強武器」という言葉は、低俗なバイラルサイトや機械的なプレイヤーのものでなく、本来はプレイヤーがごく普通に探し求める言葉だということだ。

モバイルゲーム、『クラッシュロワイヤル』のゲームデザイナーStefan Engblom氏はこう述べている。*2

「最も重要なのは,メタゲームはゲームを楽しむコミュニティの内部で発生するものであって,デザイナーが作り出すものではないということだ」

続けて彼は、こうした開発者の手から離れたコミュニティの力を引き出すため、「楽しさ」「多様性」「新鮮さ」が必要であると強調する。逆に、これらの欠けたメタゲームは、プレイヤーにとって大いに苦痛になるということだ。

 

つまるところ、「最強武器」はどのゲームにも必要なのだ。

日々作品そのものが変化するビデオゲームにとって、プレイヤーによる試行錯誤による洗練は必要不可欠であり、そうした試行錯誤の末に生まれるのがメタゲームだからだ。

逆に、メタゲームを作るまい、完璧なバランスの作品をプレイヤーに提供しようとすれば、プレイヤーの介入する余地はなくなり、同時に進歩もなくなるだろう。

では、理想的な「最強武器」の在り方と、逆に失敗した例を見ていこう。

 

マルチプレー

マルチプレーにおける「最強武器」については、先程述べた『クラロワ』のデザイナーの意見と同様である。

そもそもメタゲームのないマルチプレーなど存在せず、そうした上での理想と失敗を考えよう。

 

理想:『カウンターストライク』

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今でこそe-Sportsの代表タイトルとして知られる『カウンターストライク』。

だが、初期のカウンターストライクは、本来『Half-Life』というシングルプレーFPSのMODとして産まれた作品ながら、粗削りもいいところのバランスだった。

しかし、当時のBBSには、作品に魅了されたファンにより、多数の意見や発想が投稿され、MOD制作陣によりみるみるうちに完成されていった。

これぞ、先述した「コミュニティ」の力を最大限引き出せた作品の好例である。

 

失敗:『コールオブデューティ:モダン・ウォーフェア2』

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『COD:MW2』は、据え置き機にも拡張し、大ヒットした『COD4』の続編であり、多大な人気とセールスを誇った作品である。

しかしながら、その実情は芳しくなかった。歪すぎるバランス故に、FPSにも関わらず、ナイフ・爆発物・キルストリークが猛威を振るい、シリーズの中でも特にマルチプレーの人気は低い。

この失敗には2つ理由がある。1つは、コミュニティの意見に耳を傾けず、一部バグのような仕様(M1887やケアパケナイフ)を修正した他は、殆ど見直さなかった点だ。

2つは、自分たちが推し出す新たな仕様(新武器や新キルストリーク)ばかり偏重的に強化し続けたエゴイズムにある。

要するに、コミュニティの力を借りるどころか、むしろ自分たちの都合を優先した結果だ。その後、『BO』『MW3』で修正されたが、姿勢は改めなかったため、その度に何らかの問題が上げられ、結局ファンにも飽きられていった。

 

シングルプレー

ここから、少しユニークな話をしよう。

先程からマルチプレーにおいて、メタゲームは必然的に発生し、そうしたなかで「最強武器」が生まれるのは当然だが、プレイヤー同士の対決のないシングルプレーのゲームでメタゲームは産まれるのか?

実は、産まれるのである。シングルプレーの作品でも検索をかければ「最強武器」のワードがサジェストに入っている。

 

シングルプレーで「最強武器」を使う事自体、抵抗のある人は多いと思う。それを使えば、誰でも簡単にクリアが出来て、それは軟弱だとかヌルすぎると考えるだろう。

例えば、初代『ポケモン』のダグトリオ、『DQ8』のふしぎなタンバリン、『ロマサガ3』の妖精・・・どんな作品でも、コイツさえいればオールオッケーなお手軽キャラはいたはずだ。

しかしながら、先程述べたように、プレイヤーがゲームをクリアしようと試行錯誤すれば、それは必然的に最強の武器を探す発想になり、何ら無理のないことではないか。

 

好例:ダークソウル

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初代ダークソウルは、ソウルシリーズの中でも特に難しいと考えている。

周り道が少なく、序盤から強敵が続き、アイテムも簡単に入手できない。しかしこんなゲームにも、わかりやすい突破口がある。

それは地下墓地で入手できる「墓王の剣」。入手できれば強化する限り最後までそれ一本でクリアできてしまう強さだ。

その入手場所が何とも巧妙。場所さえわかれば10分で入手できるが、その場所が「地下墓地」という難所。

難所とは言え、実は墓王の剣自体は敵一人倒さず入手できる。しかし、まともに攻略すれば骨の折れる地下墓地に、自ら突っ込む初心者はそうそういない。つまり精神的なトリックがあるのだ。

正面からクリアが難しくなるアノール・ロンド辺りで心が折れ、わらにもすがる思いで地下墓地を探索していると、たまたま強そうな剣が入手できたプレイヤーも多いだろう。

 

好例:Magicka

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小粒なインディーズながら『Magicka』は発売当初密かな話題となった名作だ。

COOP対応の見下ろし型アクションゲームで、最大の魅力は「8つのエレメントを組み合わせて自由に魔法を作って戦う」ゲームシステム。

とは言え、ご存知の通り「組み合わせて戦える」一見自由度のあるシステムは、大抵一つの「最強」パターンが見つけられてしまうと、そればかり使ってしまう。

実は『Magicka』もそうした最強武器が存在し、それが「teleport」である。ほぼノーリキャストで瞬間移動できるteleportのお陰で、大半の敵の攻撃を凌ぎながら、一方的に攻撃が出来る。

が、そのレシピが判明するのは丁度4分の3をクリアした辺り。このタイミングが絶妙で、4分の3までは好きな魔法で試行錯誤し、残る4分の1は最強魔法でガチンコ勝負という塩梅になっている。

 

失敗:モンスターハンター3

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『モンスターハンター』に最強武器・最強防具は大抵存在する。この『MH3』ではアルバトリオンというモンスターの素材で作る武器防具はトップクラスの性能だった。

「最強」の存在はいい。だが問題は、それがCOOP前提で、かつ周回するゲームでも同様に通用するわけでないことだ。

マルチプレーなら、対戦相手に勝利するという目標が、シングルプレーなら、クリアする目標があるだろう。だが、『モンハン』には目標があまりない。

それは、『モンハン』が自由なゲームだからだ。ただ狩るだけじゃなく、肉を焼いてるだけでもいい。そう語ったのは本作のプロデューサーだが、それを過剰なメタゲームが台無しにする。*3

無論、『モンハン』でもある程度の最強武器は必要だろう。だがそれが、ラスボスを複数倒せば作れる武器というのは安易すぎる。誰もが連想できる武器が最強ではメタゲームが成立しないし、協力プレーする本作で、誰もが同じ武器を使うというのは余りに退屈だ。

こうした問題は『MH3』に限らず、『MHP2』のアカムシリーズ等、同様に見られる。『モンハン』やMMOのように、複数人で長期的に遊ぶゲームの場合、対戦ゲームやシングルプレー以上に、慎重にメタゲームを構築する必要がある。