ゲーマー日日新聞

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【批評】『Rising Storm 2: Vietnam』の感想やレビュー

 

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そもそも『Rising Storm』って何?

『Rising Storm 2: Vietnam』(以下『RS2』)はTripwire Interactiveのパブリッシングによる、『Rising Storm』の続編である。

ゲームモードはマルチプレーオンリーであり、プレイヤーはどこかのサーバーに飛び込み、何らかのモードで撃ち合いに挑むこととなる。

モードは複数あり、『BF』シリーズにおけるコンクエストのように、複数の拠点を同時に奪い合うSupremacyモードと、攻撃/防御陣営に分かれて2拠点を奪い合うTerritoryモードが存在する。

 

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さて、この『RS2』は成立から少しややこしいゲームだ。

まず、シリーズの初代と言える作品は『Red Orchestra: Ostfront 41-45』だろう。

『UT 2003』のMODとして開発され、同社の主催するアワードにも選ばれた本作は、その名の通り第二次世界大戦の東部戦線を舞台とした、めちゃくちゃ硬派なリアル系FPSだった。

まず、1チームのうち使える火器、狙撃銃とか軽機関銃ですら数人しか使えず、殆どは旧式のボルトアクションライフルを使うハメになり、しかもふとしたことで死ぬ程兵士は脆いのだ。

とは言え、ゲームバランス自体は(マップ次第だが)悪くなかった。リアル系FPS特有の「死にやすさ」は、一発ごとに装填が必要な「銃のポンコツさ」釣り合っていたし、何より、そのリアルさと、第2次世界大戦の空気感が絶妙にマッチしていたのだ。

分隊長がスモークグレネードを投げ、兵士が突撃し、機関銃で一網打尽にされる。こうした流れには、ある種FPSと言うより、戦争シミュレータとして、時代を超える魅力があったのだ。

 

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続編が登場したのは、2011年。『Red Orchestra 2:Heroes of Stalingrad』だ。

エンジンにUE3を使用し、ビジュアル的に大きく向上し、製品版であることを前提にブラッシュアップを図ってきた。

ただ個人的に、アンロック要素やズーム要素、鯖によってカジュアルモード(キルカム等がある)の導入と、あまり楽しめた印象はない。

 

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その『RO2』のスタンドアローン・アドオンとして開発されたのが『Rising Storm』だ。

舞台を東部戦線から太平洋へ移動し、主役も米軍と日本軍となった。

本作は筆者も好きだ。太平洋戦争を舞台としたFPSは少ないし、その中でも『RS』は装備や世界観のディティールもこだわっていて、また『RO2』よりも初代に近いゲームプレイも取り戻している。

 

待望のベトナム系FPS

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シリーズ4本目となる『Rising Storm 2: Vietnam』が発表された時、ファンは大いに湧いただろう。その舞台が、かの「ベトナム」となれば尚更だ。

ベトナムを舞台とした映画は多いが、FPSは少ない。かの『Battlefield』ですら火傷したのがベトナム。ベトナムはゲーム業界に於いてなお、彼らを苦しめているのだ。

 

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「こいつは・・ たまんねぇぜ!!!」あのアツい日本語PV程、『BFV』のプレイヤーはノリノリではなかったようだ。

 

何故ベトナム戦争を舞台としたFPSが少ないのかは容易に想像できる。まず、面白くないのだろう。

第二次世界大戦のような総力戦でもなく、現代戦のようなハイテク戦でもなく、ベトナム戦争は史実にある通り、至って中途半端で、かつ視界不良のジャングルと、終わりのない地道な歴史が続く戦争だ。

現代でも退役兵をPTSDで苦しめる程の戦争で、あえて主人公になりたいゲーマーは少ない。映画と異なり、ゲームは徹底して娯楽性が尊重される。

故に、個人的には待望していたベトナムモノのFPS。既に『Vietcong』、『7554』、果ては『Shellshock 2』(何故かベトナムでゾンビと戦うFPS)ですら遊ぶ程に飢えた状態で、かのTripwire出版の新作の舞台がベトナムと聞いて飛んで喜んだ程だ。

 

実際、「ベトナム系FPS」を高い次元で実現した作品だと思う。

マップはジャングルから市街戦まで用意され、ビークルには戦車の代わりにヘリが登場した。ヘリはコックピットまで綿密に再現される徹底ぶりである。

ベトナムならではのゲームプレイも光る。基本的に米軍はヘリや航空支援などの火力で有利だが、ベトナム軍サイドは自在に利用できるトンネルやブービートラップなど、ゲリラ戦で有利に立てるのだ。

また、歴史考証の点でも素晴らしく、銃器は極めてリアルだ。ベトナム側の突撃銃が、あえて「AK47」でなく「56式自動歩槍」(中国がソ連よりライセンス生産したAK)という点もニヤけてくる。*1

 

前作と比較しても理不尽な場面が多い

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こうした世界観、ゲームシステム、歴史考証と言った面で充実した『RS2』だが、実際に遊ぶ上ではいくつか違和感のある点がある。

 

まず、3作に渡って作られた『Red Orchestra』シリーズは、全て第二次世界大戦を舞台とした作品である。

先述した通り、本シリーズは「リアル系FPS」でありながら、まだ銃器が発達していない時代を舞台とすることで、「死にやすいが、殺しにくい」状況を作ることで、釣り合いを取っていた。

殆どの兵士は、旧式のボルトアクションライフル(一発毎に装填が必要)で、サブマシンガンや半自動小銃は、30人程のチームでも4~5人しか使えなかったのだ。

だが、本作『RS2』はベトナム戦争が舞台。人数制限のないライフルマンですら、M16や56式といったアサルトライフルが使えてしまう。

早い話、火力のインフレが激しすぎる。ライフルの射程とマシンガンの制圧力を併せ持つ銃を全員が持ってしまうと、多少遮蔽物から出ただけで即死するし、集団行動のメリットも薄れる。その結果、市街地でも平地でも極めて「キャンプ」(待ちに徹すること)が有利になっている。

 

この問題は、シリーズ伝統のterritoryモードにて顕著だ。完全に攻撃と防衛で分かれて戦うモードだが、白兵戦において余りに防衛側が有利だ。

こうしたゲームバランスを整えるため、攻撃側(主に米軍)には、空爆やヘリの航空支援、また距離は短くルートが広いマップなどで修正しているが、この点こそ問題だ。

いくら航空支援があっても、使えるのはコマンダーやパイロットだけで、大多数の兵士の貢献とは関係ない。*2また、マップが狭くなったことで、徐々に攻める感覚は希薄になり、ゴリ押して何とかする感覚が増えた。

そもそも、こうしたゲームプレイは「ベトナム戦争」と今一つ合わない。真正面から米軍と北ベトナム軍がぶつかる局面は史実でも少なく、*3『RO』シリーズの「史実の戦争を体験する」感覚も薄い。

 

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こうなれる奴は実際は一部で

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大半の奴はこんなもんである

 

一方、新たに追加されたSupremacyモードはそれなりに楽しい。

このモードは、謂わば『BF』の「コンクエスト」のようなもので、広大なマップに複数存在する拠点を同時に攻めるモードだ。

ここでは、ベトナム戦争らしい散発的なゲリラ戦が楽しめるし、ジャングルや市街地といった環境の変化に応じて戦略を変えるメリットもある。

(しかし残念なことに、ゲーム終了後のmap vote*4では、かなりの頻度でterritoryモードが回ってくる。)

それでも、根本的に「火力のインフレ」という点で大味なバランスになっているのは否めないし、『RO』の特徴であったチームで一致団結して戦う必要は、余り感じなくなってしまう。

 

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ここで、他のリアル系FPSと比較して考えよう。

例えば、MOD出身で、歩兵戦重視の『RO』に近い特徴を持つ『Insurgency』の場合。

この作品も大概「火力インフレ」の問題が残るのだが、少人数同士で、オブジェクトをめぐる位置取りが重要なため、そもそも撃ち合いにそこまで重きを置いていない。

また、独自にCOOPモードを発展させ、マルチプレーとは別の遊び方を見出しているのも強い。

 

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また、同じく現代戦を舞台とした『Squad』の場合。

こちらもシビアなゲームバランスだが、戦術の『Insurgency』とは逆に極めてマップが広く、タイトル通り分隊単位での行動が極めて重要となる。

また、兵科による差異も大きく、仮にダウンしても衛生兵による蘇生が可能なため、「分隊行動」と「衛生兵の蘇生」により、チームプレイによる連携と長い撃ち合いを楽しむことが出来る。

 

総じて、『Rising Storm 2:Vietnam』は素晴らしい発想と、優れたシリーズの最新作の上にありながら、その延長線上で作ったために、十分な調整がされなかったと思う。

シリーズにおけるゲームプレイと深く結びついた世界大戦から、ベトナム戦争へ移行するにあたり、単にバランス調整や兵器追加だけでなく、抜本的なゲームプレイの見直しが必要ではなかったか。

貴重なベトナム戦争を舞台としたFPSで、かつ素晴らしい時代考証と、リアリスティックな兵器武器の数々は素晴らしい。

またベトナム戦争らしい散発的な戦いを楽しめるSupremacyも新鮮であり、願わくばこの新モードを基軸に、不作だった「ベトナム戦争FPS」における名作を作り出して欲しい。

 

*1:当時、AK47ですら”高価な最新兵器”だったのだ。

*2:これは『BF』等ビークルのあるFPSにありがちだが、それにしても極端に比重が偏っている。

*3:北ベトナム軍はイア・ドラン渓谷の戦いにおいて敗北を喫し、航空支援に長けた米軍との正面衝突では勝てないと悟ったためと一般的に考えられている。

*4:このゲームでは、試合終了後に次のマップとゲームモードをプレイヤーの投票により決定する