ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

【書評】梅崎伸幸『月給プロゲーマー、1億円稼いでみた。』 

 

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J1N1です。

普段ゲームのレビューを投稿している当紙ですが、私自身はゲームに関する映画や書籍もよくチェックしています。

とは言え、批評自体はまだ慣れておらず、あまり投稿していません。そんな中でも目をつけたのが、プロeスポーツチームDetonatioN Gaming CEOである梅崎氏による『月給プロゲーマー、1億円稼いでみた。』です。

では、彼の『月給プロゲーマー、1億円稼いだみた。』という本、実際本として面白いのか、どのような点に注目すべきかについて述べていきます。

 

あらすじ

175ページのうち、「月給プロゲーマー、誕生。」「”ゲームで食う”ということ。」「eスポーツの未来予想図」等の3つのパートから、それぞれ10セクション程に分けられたエピソードが語られています。

最初のパートでは、梅崎氏がDetonatioN Gaming(以下DNG)を立ち上げるまでの個人的な背景と、立ち上げてからの経緯が説明されています。

次のパートでは、DNGの経営戦略論と、プロプレイヤーに対する待遇について述べられています。

最後のパートでは、eSports業界全体で今後どう進展すべきか梅崎氏の考えが述べられています。

 

純粋に本としての評価

ではまず、純粋に一冊の本として、それなりに読書好きの観点から本著を評価します。

結論から言って、梅崎氏やDNGのファンのみならず、e-Sportsに興味を持つ方なら読んで損はない、それだけ面白い作品だと思いました。

 

まず、とても読みやすかったです。さすがは営業マンとして会社に勤め、その後で1から会社を立ち上げた、梅崎氏の交渉力とでも言うべきでしょうか。

eSportsについて殆ど知らない人に向けた説明がしっかりと書かれていながら、一方で既にこの業界に浸かった人間にも、発見するものがたくさん書かれています。

重要なことは、この本が単なるサクセスストーリーではないことです。確かにDNGは業界シェアトップの企業でありチームですが、根本的に業界がまだ黎明期に過ぎないはずです。

現に、本に書かれていることはどれも厳しい話ばかり。チーム立ち上げのスポンサー探し、社会経験の少ない選手たちのマネージメント、実力のあるチームや選手でさえ刹那的なものであること。

特に、「好きなタイトルでなく、食えるタイトルを」というセクションは多くのゲーマーには中々に衝撃的でしょう。儲からないゲームでいくら強くなってもプロゲーマーになれない。そりゃそうだ。

 

e-Spotsを一般社会に理解してもらうには、一般社会の視線が必要

で、こうした厳しい現実を認知した上で、なおかつ理想の展望論を論理的に組み立てられる人間は、恐らくそういない。それこそ、ゲームだけやってきた人間でなく、しっかし本物のビジネスの世界で働いてきた人間でない限り。

確かに、DNGの主戦場である『LoL』にも優秀な人材がいくらでもいます。素晴らしい選手、コーチ、アナリストさえも。彼らが渾然一体となって業界を盛り上げている。

しかし、彼らの実力はあくまで『LoL』という限られた世界で発揮されます。公認キャスターeyes氏の的を射た解説を以てしても、一般人のゲーマーに納得させるのは極めて困難であることは、彼がTV番組に出演した際に私は感じました。

 

だからこそ、厳しい現実と、そこから夢物語を切り開くには、社会人的なカンと実力が必要不可欠。梅崎氏はこうした及第点を理解して、本著を大変わかりやすく仕上げました。

それも、ゲーム内容、ビジネス、メンタル面での苦悩をも含めた内容です。いずれの内容についても、あくまで一般社会における認識との差を理解した上で、興味を持てるように書かれていました。

例えば、2年以上に渡る厳しい営業活動の末、ふとしたキッカケでTV番組に取り上げて貰い、そこからグッとオファーが増えたというエピソード。「捨てる神あれば拾うマツコあり」と、苦々しくも現実的な話であり、我々も共感できます。

 

これは特に重要なことだと思います。eSportsに限らず、ゲームに関する様々な著作が出回る中で、内容はあくまで既存の業界人に向けたものが多い。

あくまで前書きには「ゲーム業界を噛み砕いて説明!」と言っても、根本的にターゲットが業界人にあるわけで、良質な本であっても一般社会にまで浸透しないはずです。

一方、世間的にも評価された、ゲーム業界を描いた著作と言えば、梅原大吾氏の『勝ち続ける意志力』でしょう。

奇しくも、彼もまたプロゲーマーから介護士という社会人としての厳しい経験を経て、多様性ある価値観からこの素晴らしい著作を仕上げました。

 

はい、この本は結局のところ、梅崎氏なりの「営業」なのだと思います。

といっても、梅崎氏個人やDetonatioNの実績だけでなく、プロゲーミングチームという、夢物語のような業界を本を介して世間に理解してもらう「営業」なわけです。

実際、梅崎氏やDetonatioNはそこまでの「本」を出せる実績があるかと言われると疑問でもあります。

だからこそこの本は、eSports業界が「現在進行系」の業界であることを梅崎氏がよく理解した上で、その進行を後押しする「営業」として出版された本のように感じました。

 

あとがき

私はゲームが好きでこうしたブログを書いてるけど、正直ゲームの世界で働こうと思ったことはなく、あくまで自分の今いる世界で生きて行くつもりです。

そういう点で、ゲームと無関係な社会から飛び出し、両方の世界での経験と知識を元に書かれたこの本はとても理解しやすかったし、感情移入もできました。

よくDFMの選手は愛想がないと言われるけど、実際に選手に求められるのは愛想より一般常識。「財布と靴ぐらいは買い換えろ」という梅崎さんの話はとても頷けた。(配信中のことでとやかく謂れはないと思うがねぇ)

 

あと、あまり触れたくないけど、この本のレビューですら、本と一切無関係な誹謗中傷が見られるので一つ。

頻繁にDFMと梅崎氏への、根拠のない誹謗中傷が散見されるけど、あれは全部デタラメです。

やれチートだの暴言だの、何一つ証拠が残ってないのも逆にすごい(笑) どのゲームやってたクソガキか知らんけど、さすがの民度って感じだ。

梅崎氏は一切触れてないし、無論それが正解なんだろうけど、いずれにせよSNSだ2chだに居座るコイツらが一番業界の足引っぱってるのは事実だよ。

 

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